9章 C類題3-1(150310)             TOP-C


[問題] 次の文章を読み, 問1~7に答えなさい。必要があれば次の原子量を使用すること。 H = 1.0, C = 12.0, N = 14.0, O = 16.0, Ag = 107.9

(文1)
 天然に存在するグルコースのほとんどは, D型である。下図3-1に示すとおり, 炭素①についたヒドロキシ基(以下, ①OH基と呼ぶ)が六員環をはさんで炭素⑥の反対側にある D-グルコースはα-D-グルコースと呼ばれる。

 α-D-グルコースを水に溶かすと, α-D-グルコースとは異なる環状分子や鎖状分子を含む平衡混合物として存在する。
     (image591)

(文2) 上図3-2に示すとおり, ポリマー分子P1は, 5個のα-D-グルコース(A~E)間で①OH基と④OH基どうしが脱水縮合して生じるα-グルコシド結合か, または, ①OH基と⑥OH基どうしが脱水縮合して生じるα-グルコシド結合により五糖の単量体を構成し, その単量体がn個重合した構造をもつ。


問1 下線部①の環状分子に該当する糖を表わしている構造式を上図3-3の(1)~(6)からすべて選び, 番号で記しなさい。

                                


問2 α-D-グルコース水溶液をアンモニア性硝酸銀水溶液と反応させると, 銀が析出するが, 一般的な脂肪族アルデヒドをアンモニア性硝酸銀水溶液と反応させる場合と比べて銀の析出速度が遅い。その理由を30字程度で記しなさい。

                                


問3 上記問2の反応後, α-D-グルコースはどのような化合物に変換されますか。構造式を記しなさい。ただし, 反応溶液はアルカリ性であることを考慮しなさい。

                                


問4 α-D-グルコース水溶液中の六員環構造をもつ分子どうしが脱水縮合した下図3-4の二糖(1)~(6)のうち, 還元作用を示さないものをすべて選び, 番号で記しなさい。

                                

        (image592)


問5 酵素Qは, α-D-グルコースどうしの①OH基と⑥OH基間で生じたα-グルコシド結合のみを加水分解する。酵素Qを用いてポリマー分子P1 (重合度n) 内に存在する①OH基と⑥OH基間で生じたα-グルコシド結合をすべて加水分解した場合の化学反応式を記しなさい。

 ただし, ポリマー分子P1の分子式は (C30H50O25)n と表記し, 重合部分の両末端は化学反応式に反映させなくてよいものとする。

                                


問6 α-D-グルコースを十分量のアンモニア性硝酸銀水溶液と反応させると, 1mol のα-D-グルコースあたり2mol の銀が析出する。

 8.1g のポリマー分子P1を酵素Qと反応させて, P1分子内に存在する①OH基と⑥OH基間で生じたα-グルコシド結合をすべて加水分解した後, 酵素Qを除いてから十分量のアンモニア性硝酸銀水溶液と反応させた。その結果, 析出する銀の重量を有効数字2桁で記しなさい。

 ただし, 重合部分の末端の反応は考慮しなくてもよいものとし, また, ポリマーP1の分子量として 810n を用いなさい。

                                


問7 α-D-グルコースで五糖を構成する際の異性体の数について考える。下記の3条件をすべて満たす異性体の数は全部でいくつあるかを記しなさい。なお, ポリマー分子P1を構成する単量体も3条件を満たしており, 異性体の数に含まれる。また, 光学異性体は考えないとする。

条件1 : 上図3-5に示す三糖(A-B-C)の部分構造をもつ。

条件2 : 残り2個のα-D-グルコースは, A, B のいずれに対しても脱水縮合していない。

条件3 : 縮合の様式はすべて, ①OH基と④OH基間で生じるα-グリコシド結合か, または, ①OH基と⑥OH基間で生じるα-グリコシド結合のいずれかである。