9章 C類題2-2(150113)             TOP-C


[問題] 次の文章を読み, 問1〜7に答えなさい。


 アルカリ金属は(  a  )が大きく, 常温で激しく水と反応する。一方, 銅や銀は(  a  )が小さいため, 水と反応しないが, (  b  )の大きい硝酸を用いると@一酸化窒素を発生し溶ける。また, アルカリ金属 M はハロゲン X2 と反応し, ハロゲン化物 MX を生成する。

 MX の水に対する溶解度はアルカリ金属イオン M+ とハロゲン化物イオン X- のイオン半径の大きさと関係がある。MX の水への溶解は次の熱化学方程式(1)で表わされる。

                    MX(固) + aq = M+aq + X-aq + Q … (1)

 MX の溶解熱 Q が大きいほど, MX の溶解度は高い。ここで, MX の溶解の過程を MX のイオン化と水和に分けて, 次のように考える。

 固体の MX(固) が気相のイオン M+(気) と X-(気) へイオン化するときの熱化学方程式(2)で表わされる。

                    MX(固) = M+(気) + X-(気) + Qイオン化注) … (2)

 M+(気) と X-(気) の間には静電気的な引力が働き, イオン化熱 Qイオン化注) は負で, Qイオン化の大きさはイオン間の距離に反比例する。そこで, Qイオン化と M+ のイオン半径 rM, X- のイオン半径 rX との間に, 近似的に式(3)が成り立つ。

                        Qイオン化 = -α/(rM + rX) … (3)

 ただし, αは正の定数である。

 つづいて, M+(気), X-(気) の水和はそれぞれ熱化学方程式(4)と(5)で表わされる。

                        M+(気) + aq = M+aq + QM … (4)

                      X-(気) + aq = X-aq + QX … (5)

 QM および QX は正で, イオン半径が小さいほど大きい。水和熱 Q水和 は QM と QX の和で表わされる。そこで, Q水和 と M+ のイオン半径 rM, X- のイオン半径 rM の間に, 近似的に式(6)が成り立つとする。

                     Q水和 = QM + QX = β(1/rM + 1/rX) … (6)

 ただし, βは正の定数である。

 MX の溶解熱 Q におよぼす Qイオン化と Q水和の効果を考えると, Qイオン化の絶対値が(  c  )ほど, またQ水和(  d  )ほど, MX の溶解度は高くなる。

 ここで, 陽イオンが同じで陰イオンの異なる2種類のアルカリ金属のハロゲン化物, 塩 A, B について考える。A の陰イオン半径は陽イオン半径と等しく (rX = rM), B の陰イオン半径は陽イオン半径の半分である (rX = 0.5rM)。

 B の Qイオン化から A の Qイオン化を差し引くと(  e  )となり, 一方, B の Q水和から A の Q水和を差し引くと(  f  )となる。したがって, 陰イオン半径が変わると, Qイオン化と Q水和の変化の度合いが異なり, MX の溶解熱が変化する。このため, 陰イオン半径の異なる MX について水に対する溶解度の違いを推測することができる。

 注) Qイオン化には固体の MX(固) が気体の MX(気) へ変化する昇華熱が含まれる。


問1 空欄( a ), ( b ) それぞれにあてはまる適切な用語を選択肢 (1)〜(6) の中から選びその番号を記しなさい。

 (1) 酸性  (2) 塩基性  (3) イオン化傾向  (4) 酸化力  (5) 電気陰性度  (6) 原子半径

                                


問2 下線部@に関して, 銅と希硝酸との化学反応式を記しなさい。

                                


問3 空欄( c ), ( d ) それぞれにあてはまる適切な語を選択肢 (1) および (2) から選びその番号を記しなさい。

 (1) 大きい  (2) 小さい

                                


問4 空欄( e ), ( f ) のそれぞれにあてはまる式をα, β, rM を用いて記しなさい。

                                


問5 NaF のイオン化熱 QNaF, Na+ イオンおよび F- イオンの水和熱 QNa, QF, イオン半径 rNa, rF を以下に示す。NaF について式(3)および(6)の定数α, βを有効数字2桁で求めなさい。

   QNaF [kJ・mol-1] -923  QNa [kJ・mol-1] 406  QF [kJ・mol-1] 524  rNa [nm] 0.12  rF [nm] 0.12

                                


問6 問5で求めたα, βを用い, 塩A と塩B のどちらの溶解度が高いかを答えなさい。また, その理由をQイオン化とQ水和の絶対値の変化量を比較し50字程度で述べなさい。

                                


問7 ハロゲン化物イオンのイオン半径を以下に示す。リチウムイオンのイオン半径は 0.09 nm である。ハロゲン化リチウムについて, 溶解度が最も高いと考えられる塩と溶解度が最も低いと考えられる塩の化学式をそれぞれ記しなさい。

     F- のイオン半径 [nm] 0.12  Cl- のイオン半径 [nm] 0.17  Br- のイオン半径 [nm] 0.18

     I- のイオン半径 [nm] 0.21