9章C 類題2-1(151029)              TOP-C


[問題] 次の文章を読み, 問1~7に答えなさい。必要があれば次の原子量の値を用いなさい。 H=1.0, C=12.0, O=16.0, S=32.1, K=39.1, Cr=52.0, Mn=54.9, Fe=55.8


 
クロム化合物は, ギリシャ語の色 (クロマ) が語源であるように酸化数や構造によって様々な色を呈する。二クロム酸カリウムを用いて溶液を塩基性にすると溶液は黄色になり, この溶液を希硫酸を用いて酸性にすると赤橙色になる。酸化数が +6 のクロム化合物は, 有機化合物に対する酸化剤としてよく用いられる。

 マンガン化合物は, 幅広い酸化数を取り得る。酸化マンガン(IV) は, 過酸化水素を酸素に分解する優れた触媒である。過マンガン酸カリウムは, 強力な酸化作用を有し, その水溶液は特徴的な赤紫色を呈することから, 酸化還元滴定によく用いられる。

 これらを踏まえて, 以下の実験1~3 をおこなった。

実験1 : ある濃度の二クロム酸カリウムの希硫酸溶液 2.0 mL と 2-プロパノール 2.0 mL を試験管に入れた。図1のように試験管に誘導管をつけて, この溶液を 65~70℃に加熱したところ, 溶液の色が緑色に変化した。反応終了時に, 氷水で冷やされた試験管には反応生成物である無色透明の液体が 0.30 g 溜まった。
                 (image569)

実験2 : ある温度で 3.0% (質量パーセント) の過酸化水素水 1.0 mL に粉末の酸化マンガン(IV) 10 mg を加えると, 過酸化水素は完全に分解し, 過酸化水素 1.0 mol あたり 98 kJ の反応熱が観測された。

実験3 : 硫化鉄(II) と書かれた試薬ビンに入っている試薬中の硫化鉄(II) の純度を求めるために以下の実験をおこなった。過マンガン酸カリウム 1.6 g を希硫酸 20 mL に溶かし, 水を用いて 25 mL に希釈した。ビンの中の試薬 1.0 g を希硫酸 100 mL に加えると, 気体が発生し, 試薬はすべて溶解した。この溶液を十分に煮沸した後, 調整した過マンガン酸カリウム溶液で滴定したところ, 5.4 mL 滴下したところで終点に達した。


問1 下線部①の化学反応式を記しなさい。

                                


問2 下線部②の化合物の構造式を記しなさい。

                                


問3 実験1で用いた二クロム酸カリウム溶液の濃度は何 mol・L-1 ですか。有効数字2桁で答えなさい。下線部②の化合物が生成する反応の化学反応式および答えに至る過程も記すこと。ただし, 氷水で冷やされた試験管には下線部②の化合物のみが溜まったとする。

                                


問4 実験2の反応を酸化マンガン(IV) 20 mg を用いておこなう場合, 過酸化水素 1.0 mol あたり何 kJ の反応熱が観測されますか。有効数字2桁で答えなさい。

                                


問5 下線部③の気体の化学式を示しなさい。また, その気体の特徴として正しいものを下記の選択肢(1)~(6)の中からすべて選びなさい。

 (1) 水溶液は弱酸性を示す。 (2) 水溶液は弱アルカリ性を示す。 (3) 下方置換で捕集できる。 (4) 上方置換で捕集できる。 (5) 黄緑色の気体である。 (6) 褐色の気体である。

                                


問6 下線部④に関して, 溶液を煮沸せずに滴定すると, 硫化鉄(II)の純度の実験値が 100%(質量パーセント)を超えてしまった。この理由を40~60字程度で説明しなさい。

                                


問7 実験3の結果から, 試験中の硫化鉄(II)の純度(質量パーセント)を有効数字2桁で求めなさい。下線部⑤の反応の化学反応式および答えに至る過程も記すこと。ただし, 試薬に含まれる不純物は, 過マンガン酸カリウムとは反応しないものとする。