9章C 類題1-2(150925)              TOP-C


[問題] 次の文章を読み, 問1~6に答えなさい。


 
化学反応式が一見して単純であっても, 複数の反応によって反応物が生成物へ変化する場合がある。例えば, 気体の水素分子 H2 と気体のヨウ素分子 I2 から気体のヨウ化水素分子 HI が生成する次の反応を考えよう。

                         H2 + I2 → 2HI …(1)

 ここで, 反応速度定数は k1 である。この反応は 600 K 以上の高温において進行し, 9 kJ・mol-1 の発熱反応である。反応(1)では逆反応は考慮しなくてよい。また, HI の生成速度 vH I は次式で表わされるように, H2 のモル濃度 [H2] と I2 のモル濃度 [I2] の積に比例することが実験事実として知られている。

                        vH I = k1[H2][I2] …(2)

 (2)式が成り立つことから, 一見すると H2 と I2 が衝突し, 反応(1)が進行するように見える。しかし, 次の二つの反応の組合せによって HI が生成する説が有力である。

                 I2 ⇄ 2I …(3)         H2 + 2I → 2HI …(4)

 ここで, 反応(4)の反応速度定数は k2 である。ヨウ素原子 I は気体として存在し, 反応(3)では平衡が成立している。反応(4)では逆反応を考慮しなくてよい。また, H2 はほとんど解離しないものとする。反応(3)の正反応は, 150 kJ・mol-1( a )反応であり, 平衡定数は,

                           K = [I]2/[I2] …(5)

 である。ここで, [I] は I のモル濃度である。
 反応(3)で生成した I は, H2 と衝突し, エネルギーの高い中間状態を経由して, 反応(4)に従って HI が生成する。反応(4)による HI の生成速度 vH I

                       vH I = k2[H2][I]2 …(6)

 で表わされる。反応(3)の正反応, 逆反応の速度が反応(4)に比べて圧倒的に速く, 常に平衡が成立しているとする。このとき, HI の生成速度 vH I は, [H2] と [I2] の積に比例し, 実験事実と合致する。この例から分かるように, 単純な化学反応式で記述される化学反応でも, 実際に起きている過程は複雑な場合がある。


問1 空欄( a )に当てはまる語句は吸熱か発熱かのいずれかで答えなさい。その理由を 30~50字程度で記しなさい。

                   


問2 反応(3)において, 圧力一定で温度を上昇させたとき, 平衡はどちらに移動するかを答えなさい。その理由を40~80字程度で記しなさい。

                   


問3 下線部①は何と呼ばれる状態かを答えなさい。

                   


問4 反応(4)の反応熱は何 kJ・mol-1 ですか。有効数字3桁で答えなさい。

                   


問5 下線部②において, 反応(4)の反応速度が [H2] と [I2] の積に比例することを示しなさい。また, k1, k2, K の間に成り立つ関係式を記しなさい。

                   


問6 反応(3)の正反応・逆反応の速度よりも, 反応(4)の反応速度の方が圧倒的に速いとしよう。このとき, HI の生成速度は [H2] と [I2] に対してどのような依存性をもちますか。例えば, [H2][I2] に比例する, のように答えなさい。