6章C 類題1-1(110817)                 TOP-C


[問題] 次の文章を読み, 以下の問1〜6に答えなさい。

 次表は各元素の原子 1個あたりのイオン化エネルギーIと電子親和力Eの値を示している。ただし, 表中の値は原子 1個あたりである。

      元素 H イオン化エネルギー(I) 21.8×10-19J 電子親和力(E) 1.2×10-19J
      元素 C イオン化エネルギー(I) 23.4×10-19J 電子親和力(E) 2.1×10-19J
      元素 O イオン化エネルギー(I) 29.7×10-19J 電子親和力(E) 5.4×10-19J
      元素 F イオン化エネルギー(I) 33.4×10-19J 電子親和力(E) 5.6×10-19J

 米国の化学者マリケンは分子の極性を考える際に, まず極端な構造として二原子分子XZのイオン構造を考えた。つまり X+Z- またはX-Z+ である。
 XZという分子が全体では中性を保ちながら X+Z- というイオンの対をなす構造になるためには, X原子から電子を奪い, Z原子に電子を与えればよい。その結果放出されるエネルギーは, EZ - IX + Δで与えられる。ここでEZはZ原子の電子親和力, IXはX原子のイオン化エネルギー, Δはクーロン力による安定化エネルギーである。
 一方, XZという分子がX-Z+というイオン構造になった場合に放出されるエネルギーは EX - IZ + Δで与えられる。ここで, EXはX原子の電子親和力, IZはZ原子のイオン化エネルギーである。どちらのイオン構造がより安定であるかは, これらの差 DXZ ,

  DXZ = ( a )

を考えればよい。
 DXZが正の場合は, X+Z-がより安定に, DXZが負の場合は, X-Z+がより安定になる。上式を変形してわかるように, ( b )の値がより大きい原子が分子中で負の電荷を帯びると考えられる。マリケンは( b )の1/2を原子の電気陰性度とした。
 構成する原子の電気陰性度の違いから, 分子が極性をもつことがある。極性の大きさは, 電気双極子モーメントの大きさによって記述される。例えば二原子分子であれば, 2つの原子間距離を L, それぞれの原子の電荷を +δ, -δとすると, 電気双極子モーメントの大きさは Lδである。電気双極子モーメントの大きさが 0(ゼロ)の分子を無極性分子という。
 (注) ここで定義した電気陰性度は一般にマリケンの電気陰性度と呼ばれるもので, エネルギー単位を持つ。電気陰性度には他にポーリングの電気陰性度と呼ばれるものがあり, 両者は近似的には比例関係にある。

問1. ( a )を与えられた記号を用いて表しなさい。

                             

問2. ( b )を E, I を用いて表しなさい。

                             

問3. 酸素原子について( b )を有効数字3桁で求めなさい。

                             

問4. 次の二原子分子を極性の大きな順番に左から並べ, 理由とともに記しなさい。ただし, 原子間距離は同じと仮定しなさい。(注) 与えられた分子は必ずしも安定であるとは限らない。

   @ CH  A OH  B HF   

                             

問5. HF分子の電気双極子モーメントの大きさは 6.1×10-30 C・m である。HFの原子間距離を 9.2×10-11m とすると, 分子の中ではどちらの原子からどちらの原子に電子を何個分移動したと見なすことができますか。ただし, 電子の持つ電荷の絶対値は 1.6×10-19 C とする。有効数字2桁で答えなさい。答に至る過程も示すこと。

                             

問6. 二酸化炭素分子は無極性であるが, 二酸化窒素分子は極性を有する。それぞれについて理由を説明しなさい。