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問1の答    0.90 g


図1を参照して, 化合物は有機溶媒層と緩衝溶液(水)層に a:(1 - a)の比で分配される。そこで, 化合物Eは, 質量をXE g とすると, 下のように分配される。

n=1では
,

●図2を参照して

○1-I(有機溶媒層) … aXE, ○1-i(緩衝液層) … (1 - a)XE


n=2では,

●n=1の1I(有機溶媒層) : aXEを参照して,

○2-II(有機溶媒層) …a2XE, ○2-i(緩衝液層) …a(1 - a)XE

●n=1の1i(緩衝液層) : (1 - a)XEを参照して,

○2-I(有機溶媒層) …(1 - a)aXE, ○2-ii(緩衝液層) …(1 - a)2XE


n=3では,

●n=2の2II(有機溶媒層) : a2XEを参照して,

○3-III(有機溶媒層) …a3XE, ○3-i(緩衝液層) …a2(1 - a)XE

●n=2の2ii(緩衝液層) :(1 - a)2XEを参照して,

○3-I(有機溶媒層) …a(1 - a)2XE, ○3-iii(緩衝液層) …(1 - a)3XE

●n=2の2i(緩衝液層) :a(1 - a)XE と 2I(有機溶媒層) :(1 - a)aXEの混合溶液の分配では,

○3-II(有機溶媒層) …a{a(1 - a) + (1 - a)a}XE = 2a2(1 - a)XE

○3-ii(緩衝液層) …(1 - a){a(1 - a) + (1 - a)a}XE = 2a(1 - a)2XE


図2にそって整理すると

n=1     1-I:  aXE, 
      1-i: (1 - a)XE


n=2    2-II:  a2XE
      2-i: a(1 - a)XE

      2-I: (1 - a)aXE
     2-ii: (1 - a)2XE


n=3    3-III:  a3XE
      3-i: a2(1 - a)XE

     3-II: 2a2(1 - a)XE
     3-ii: 2a(1 - a)2XE

      3-I: a(1 - a)2XE
     3-iii:  (1 - a)3XE


よって, 「中央の分液ロート内(3-II と 3-ii を合わせたもの)に含まれる化合物E の量は 0.18g であった」ことから, 次式が成立する。

      2a2(1 - a)XE + 2a(1 - a)2XE = 0.18

      2a(1 - a)(a + 1 - a)XE = 0.18

      2a(1 - a)XE = 0.18

      a(1 - a)XE = 0.09

また, [実験a]において, XE = 1(g)であるので,

      a(1 - a) = 0.09

      a2 - a + 0.09 = 0


      a = (1/2){1 + (1 - 0.36)1/2} = (1/2)(1 + 0.8) = 0.9

      a = (1/2){1 + (1 - 0.36)1/2} = (1/2)(1 - 0.8) = 0.1

図4a〜4c を参照して,

      a = 0.9

よって, 操作段階数 n=1 において, 上層の化合物 E は,

      aXE = 0.9×1 = 0.90 (g)…答


問2の答     酸性の緩衝液を用いた。

  [理由]図4aで, 構造がよく似ているために分離できないカルボン酸 E, F が, pH=7の緩衝溶液で水素イオンとカルボン酸イオンで解離して溶解してる。そこに, 酸性の緩衝溶液を即ち水素イオンを加えると, 平衡移動で油性のカルボン酸が増加する。結果として, 図4bのように, 油性のカルボン酸 E, F が有機溶媒に移動し, 分液ロート@の9-IX(有機溶媒層)に, 化合物E, Fの量が増えることになる。


問1答の解説の参照から, 一般的にするために, XE=1として, 操作段階数 n=9での分液ロート@〜Hの化合物の分配量は次のようになる。

   @9-IX:  a9
    9-i:   a8(1 - a)        全量:a8

   A9-VIII: 8a8(1 - a)
    9-ii:  8a7(1 - a)2       全量:8a7(1 - a)

   B9-VII:  8a7(1 - a)2
    9-iii:  8a6(1 - a)3       全量:8a6(1 - a)2

   C9-VI:  8a6(1 - a)3
    9-iv:  8a5(1 - a)4       全量:8a5(1 - a)3

   D9-V:   8a5(1 - a)4
    9-v:   8a4(1 - a)5      全量:8a4(1 - a)4

   E9-IV:   8a4(1 - a)5
    9-vi:   8a3(1 - a)6      全量:8a3(1 - a)5

   F9-III:  8a3(1 - a)6
    9-vii:  8a2(1 - a)7          全量:8a2(1 - a)6

   G9-II:   8a2(1 - a)7
    9-viii:  8a(1 - a)8       全量:8a(1 - a)7

   H9-I:   a(1 - a)8
    9-ix:   (1 - a)9        全量:(1 - a)8

 図4aにおいて, 化合物E, Fは, 分離されずに, 分液ロート@〜Gでは重量はほとんどゼロである。 Hでは1.0gに近い値を示している。
 このことを上述の全量の式に当てはめると, a はほぼゼロに近い値であることがわかる。 Hの9-ix(緩衝液層)の式(1 - a)9にa≒0を代入すると約 1.0gになる。 そこで, E, F は緩衝液層(水層:pH=7)に存在することになる。
 一方, 図4bにおいて, 緩衝液のpH値を変えると, 化合物E, Fは, 分離されずに, 分液ロート@〜Cでは約0.45〜0.10の値を示しD〜Hではほぼゼロになる。
 このことを上述の全量の式に当てはめると, a はほぼ 1.0g に近い値(約0.90g)を示すことになる。 @の9-IX(有機溶媒層)の式a9にa≒0.90gを代入すると最大の値になる。このことは, 緩衝液のpH値変化で, 化合物E, Fは有機溶媒層に移動し分配a値を大きくする。
 いま化合物E, Fがカルボン酸であるとすると, pH=7の緩衝溶液で水素イオンとカルボン酸イオンで解離して溶解していたものが, 水素イオンを加えると即ち酸性にすると, 平衡移動により水素イオンとカルボン酸イオンが結合して油性のカルボン酸になって有機溶媒に移動したことになる。結果として, 分液ロート@の9-IX(有機溶媒層)に, 化合物E, Fの量が増える。
 化合物Gの分配重量は, @, G, Hでほぼゼロで, Dで最大およそ0.30gを示し, 実験bの緩衝溶液のpH値変化にはあまり影響されない。


問3の答

  E …問題文図3の下, F…図3の上左端 G…図3の上右端

      


 問2答の解説から, 化合物 E, F はカルボン酸である。また, 実験cにおいて, 3つの化合物の混合物を少量の酸とともに熱した後に中和すると, 図4cのように, 化合物 F はH に変化して分液ロート@の有機溶媒層に分配される。
 このことは, F は脱水反応で水性のカルボキシル基を失い油性となることを意味する。したがって, 脱水反応を示す F の構造は, カルボキシル基とヒドロキシル基(水酸基)が空間的に近いものに相当する。カルボキシル基を保持している化合物 E は分液ロートHの水性の緩衝液層に分配される。


問4の答

 (image333)

問3答の解説を参照して, F は脱水反応で水性のカルボキシル基を失い油性の H となる。したがって, 脱水反応を示す F の構造は, カルボキシル基とヒドロキシル基(水酸基)が空間的に近いものに相当する。


問5の答    問題文図5d


問2答の解説を参照して, 操作段階数n回では, 各分液ロート(初, 中, 後の部分)の化合物の分配の全量は次式のようになる。

   @ n-(有機溶媒N)とn-(緩衝液1):  全量:an-1

   A n-(有機溶媒N-1)とn-(緩衝液2):  全量:(n - 1)an-2(1 - a)

   B n-(有機溶媒N-2)とn-(緩衝液3):  全量:(n - 1)an-3(1 - a)2
                    
                    
                    
  (m-1) n-(有機溶媒N-m+1)とn-(緩衝液m-1): 全量:(n - 1)an-m(1 - a)m-2

  (m) n-(有機溶媒N-m)とn-(緩衝液m): 全量:(n - 1)an-m-1(1 - a)m-1

  (m+1) n-(有機溶媒N-m-1)とn-(緩衝液m+1): 全量:(n - 1)an-m-2(1 - a)m
                    
                     
                    
  (n-2) n-(有機溶媒三)とn-(緩衝液n-2):    全量:(n - 1)a2(1 - a)n-3

  (n-1) n-(有機溶媒二)とn-(緩衝液n-1):    全量:(n - 1)a(1 - a)n-2

  (n) n-(有機溶媒一)とn-(緩衝液n):    全量:(1 - a)n-1


 化合物 E, H, G の分配量分布の形は, 上の式を参照すると, 図5aの形をほぼ保持するが, a<1であるため, 操作段階数が大きくなればなるほど小さくなる。一方, ほとんどの化合物を含まない分液ロート溶媒が, 化合物を含む分液ロート溶媒の間に生じる。このことは, 各化合物が分離されたことを意味する。

例として, 油性のH の場合, 図5a(図4c)と上式を参照して, 分配量 a とすると,

操作段階数 n= 9では,
分液ロート@溶媒中のH の全量は(a)8 ≒ 0.60, よって a ≒0.94。
分液ロートAでは8×(a)7×(1 - a) = 8×(0.60/0.94)×0.06 ≒ 0.31;

操作段階数 n= 49では,
分液ロート@溶媒中のH の全量は(a)48 = (0.60)6 ≒0.047,
分液ロートAでは48×(a)47×(1 - a) = 48×(0.047/0.94)×0.06 = 48×0.05×0.06≒0.144,
分液ロートBでは48×(a)46×(1 - a)2 = 48×(0.05/0.94)×(0.06)2 = 48×(0.0532)×0.0036≒0.0092,
分液ロートCでは48×(a)45×(1- a)3 = 48×(0.0532/0.94)×(0.0036×0.06) ≒ 0.00059
分液ロート37番目では48×(0.94)12×(1- 0.94)36 ≒ 0

これより, 化合物 H の分配量分布は, 操作段階数の大きい方(n=49)が小さくなることが分かる。また, 分液ロートAで極大値を示す。

以上を考慮すると, 図5dが最も適合する。