5章C 類題2-1(100824) TOP-C
[問題] 次の文章を読んで, 問1〜5に答えなさい。原子量は, Li = 6.9 C = 12.0 O = 16.0 Al = 27.0 Co = 58.9 とする。ファラデ−定数 F は, F
= 9.65×104 [C/mol] である。
一度放電したら, 充電して再び用いるのが困難な電池を一次電池という。リチウムの単体が一次電池の負極として広く用いられるのは, 高い電圧を取り出すのに有利なためである。アルカリ金属である@リチウム単体は水と激しく反応するため, 電解質には有機溶媒やポリマーが用いられる。
一方, 繰り返し充電と放電が可能な電池を二次電池といい, 中でもリチウムイオン二次電池は携帯機器の電池として急速に普及した。リチウムの単体からなる電極は充電と放電の繰り返しに適していないため,
負極にはA黒鉛を電極の表面に接着したものが用いられる。また, 正極には電極表面にコバルト酸リチウム LiCoO2 を接着したものが用いられる。
充電のときには, 図1のように電解質中で正極側をプラス, 負極側をマイナスとする電圧を加える。負極ではB黒鉛が電解質中のリチウムイオンと反応し, 炭素とリチウムからなる化合物が形成される(反応1)。この反応と同時にC正極のLiCoO2は, 電解質へリチウムイオンが引き抜かれてLi1-xCoO2(0<x≦1)(*注)へ変化する(反応2)。
一方, 放電のときは, 負極では炭素とリチウムの化合物がリチウムイオンを放出して黒鉛へ戻る反応(反応3)が起こるのと同時に, 正極ではLi1-xCoO2が電解質からリチウムイオンを受け取ってLiCoO2へと戻る反応(反応4)が起こり, 外部回路に電流が発生する。
(*注) 化合物の中には, 各元素の構成比を整数で表現することが困難なものがあり, その場合は小数を用いて化学式を表現することがある。
例えば本文中の化合物 Li1-xCoO2(0<x≦1)は, 充電反応に伴ってLiCoO2の中のLi がところどころ失われている。失われたLi の量が充電前に存在したLi のうちの割合 x に相当するとき, 化合物全体で平均した組成は
Li:Co:O = (1 - x) :1:2 となっている。
(image317)
問1. 下線@の反応式を書きなさい。
答
問2. 下線Aの黒鉛は炭素の単体であり, ダイヤモンドなどの同素体が存在する。炭素以外の元素の単体のうち, 互いに同素体となる物質が存在するものの組み合わせを1つ挙げ,
以下の例にならって物質名で答えなさい。なお, 化学式は使わないこと。 (例) 黒鉛とダイヤモンド
答
問3. 充電後のリチウムイオン電池の負極の表面には, 下線Bの反応によって化合物Xが生成した。化合物Xは炭素とリチウムだけで構成されており, 以下の2つの特徴をもつ。化合物Xに含まれる炭素とリチウムの原子数の比を求めなさい。
特徴(1) 黒鉛は, 炭素が正六角形の網目状に結合した平面(これを炭素平面とよぶ)をつくり, その平面がいくつも積み重なっている。一方, 化合物Xは図2の(1)のように,
黒鉛の各炭素平面の間にリチウムが相入された構造になっている。
特徴(2) 図2の(2)に示すとおり, リチウムからその真下にある炭素平面へ垂線を引くと, 垂線は炭素のつくる正六角形の中心で炭素平面と交わっている。この垂線と交わる正六角形が互いに隣り合うことなく最密となるように,
リチウムが配置されている。
(image318)
炭素平面の六角形の全ての頂点に炭素原子があるものとする。図2の(1)において, 点線はリチウムから真下にある炭素平面への垂線を表している。図2の(2)において,
点は真上のリチウムから炭素平面へ引いた垂線との交点を表している。
答
問4. 0.60g の化合物Xをリチウムイオン電池の負極に用いて 20mA の電流値で放電するとき, 放電が可能な最大の時間(秒)を有効数字2桁で計算しなさい。ただし,
負極においては図1の反応3以外の反応は起こらないものとする。なお, 途中の計算過程も記すこと。
答
問5. LiCoO2 のうちの一部をAl と入れ替えてつくった化合物 LiCo1-yAlyO2(0<y<1)を正極に用いて充電を行うと, 下線Cと同様の反応によって Li1-xCo1-yAlyO2 が生じる。LiCoO2 と LiCo1-yAlyO2 それぞれ 1.96g を正極に用いて充電を行い, 両方の正極の x が等しくなるように充電を停止したところ, LiCo1-yAlyO2 を用いた正極に充電された電荷量は 9.65×102 C であった。また充電後のLi1-xCoO2 と Li1-xCo1-yAlyO2 の重量の差は 4.2×10-3g であった。x と y の値を有効数字2桁で求めなさい。なお, 途中の計算過程も記すこと。
答