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問1の答
nH2O(液)+mCH4(気)⇄(H2O)n・mCH4(固)+Q(発熱)の平衡で系の発熱を抑え系の物質量を減らす方向にすると右移動する。
● ルシャトリエの原理によれば, 系の濃度, 温度, 圧力などを変えるとその変化を妨げる方向に系の平衡が移動し新平衡状態を形成する。
● 水中における水分子は水素結合によって周りの水分子と会合しクラスターと呼ばれる分子の集団を形成する。冷却すると, 水素結合が切断されにくくなってクラスターのサイズが大きくなりやがて氷の結晶へと成長する。
● 水中にメタンのような疏水性分子が存在すると, 水分子は疏水性分子を取り囲むようにしてメタンハイドレートのクラスターを形成する。このとき,
全体としてエネルギーが低下する。
● 水中のメタンハイドレートのクラスター形成を平衡状態の可逆反応式で書くと次の①式のようになる。ただし, n,mは正の整数, (H2O)n・mCH4はメタンハイドレートを表す。
nH2O(液) + mCH4(気) ⇄ (H2O)n・mCH4(固) ……①
①式は, メタン分子と水分子からメタンハイドレートが形成されると全体としてエネルギーが低下する。したがって, 左辺から右辺へ移動すると発熱することになる。
以上より, 系を低温にすると, 系は発熱方向に平衡移動することから, ①式において, 平衡は左辺から右辺へ移動しメタンハイドレートが増加する。また,
系を高圧にすると, 系は物質量を減少する方向に平衡移動することから, ①式において, 平衡は左辺から右辺へ移動し固体状のメタンハイドレートが増加する。
問2の答
(H2O)23・4CH4(固) + 8O2(気) = 4CO2(気) + 31H2O(液) + (Q1 - 4Q2 + 4Q3 + 8Q4) [kJ]
メタンハイドレート(固体)の完全燃焼で発生する反応熱をQとすると, その熱化学方程式は次式になる。
(H2O)23・4CH4(固) + 8O2(気) = 4CO2(気) + 31H2O(液) + Q[kJ]
よって, 本文問2の(1)式を下の式に代入すると,
Q = {(H2O)23・4CH4(固) + 8O2(気)} - {4CO2(気) + 31H2O(液)}
= [{4CH4(気) + 23H2O(液) + Q1} + 8O2(気)] - {4CO2(気) + 31H2O(液)}
= 4CH4(気) + Q1 + 8O2(気) - 4CO2(気) - 8H2O(液)
本文問2の(2)式を上の式に代入すると,
Q = 4[{C(黒鉛) + 2H2(気)} - Q2] + Q1 + 8O2(気) - 4CO2(気) - 8H2O(液)
= 4C(黒鉛) + 8H2(気) + 8O2(気) - 4CO2(気) - 8H2O(液) + Q1 - 4Q2
本文問2の(3), (4)式を上の式に代入すると,
Q = 4{C(黒鉛) + O2(気)} + 8{H2(気) + (1/2)O2(気)} - 4CO2(気) - 8H2O(液) + Q1 - 4Q2
= 4{CO2(気) + Q3} + 8{H2O(液) + Q4} - 4CO2(気) - 8H2O(液) + Q1 - 4Q2
= 4Q3 + 8Q4 + Q1 - 4Q2 = Q1 - 4Q2 + 4Q3 + 8Q4
よって, メタンハイドレート(固体)の完全燃焼の熱化学方程式は次式になる。
(H2O)23・4CH4(固) + 8O2(気) = 4CO2(気) + 31H2O(液) + (Q1 - 4Q2 + 4Q3 + 8Q4) [kJ]
問3の答 0.059 [mol]
(1) 気体の状態方程式を使用して, 温度0℃, 圧力 5.1×104 Pa, 容積 1.0×103 cm3 = 10-3 m3の密閉容器中の酸素の物質量 MOは,
MO = PV/(RT) = (5.1×104)( 10-3)/{(8.3)(273)} = 0.02251 [mol]
(2) 容器中のメタンハイドレート(H2O)23・4CH4(固体)の物質量 MHは, 1.0 cm3入っているので, 密度 0.91g/cm3と分子量 18×23 + 16×4 = 478を用いて,
MH = (1.0×0.91)/478 = 0.001904 [mol]
(3) メタンハイドレート(H2O)23・4CH4の完全燃焼の反応式は
(H2O)23・4CH4 + 8O2 → 4CO2 + 31H2O
上の反応式において, (2)で計算した容器中のメタンハイドレートの物質量MH = 0.001904 [mol] に対する酸素の物質量は
0.001904×8 = 0.015232 [mol]
上の酸素の値は, (1)で計算した値より小さいことから, メタンハイドレートの完全燃焼では, 酸素が0.02251- 0.015232 = 0.007278
[mol] 余ることになる。一方, 生成される水の物質量 MW [mol] は上の完全燃焼の反応式から,
MW = 0.001904×31 = 0.059024 ≒ 0.059 [mol]
問4の答 3.9×105 [Pa]
完全燃焼後の容器内に存在する各物質の物質量は, 反応式 (H2O)23・4CH4 + 8O2 → 4CO2 + 31H2O を参照して,
● 残っている酸素の物質量 MO は, 問3から
MO = 0.007278 [mol]
よって, その圧力 PO は,
PO = MORT/V = (0.007278)(8.3)(273+27)/10-3 = 18.12222×103 ≒ 1.8×104 [Pa]
● 水の物質量 MW は, 問3から
MW = 0.059024 [mol]
この場合, 温度27℃, 体積 10-3 m3で全ての水が水蒸気になったとしたら, その圧力 PW は
PW1 = MWRT/VW = (0.059024)(8.3)(273+27)/10-3 = 146.97×103 = 14.697×104 [Pa]
ここで, 水の飽和蒸気圧は, 27℃で 3.5×103 Pa である。したがって, 3.5×103 [Pa] < 14.697×104 [Pa] から, 容器内の水蒸気の圧力は PW2 = 3.5×103 [Pa] になる。
● 二酸化炭素の物質量 MC は,
MC = {(H2O)23・4CH4の物質量}×4 = 0.001904×4 = 0.007616 [mol]
よって, その圧力 PC は,
PC = MCRT/V = (0.007616)(8.3)(273+27)/10-3 = 18.964×103 ≒ 1.9×104 [Pa]
● よって, 全圧 PA は,
PA = PO + PW2 + PC = 1.8×104 + 3.5×103 + 1.9×104 = 38.7×104 = 3.9×105 [Pa]