答                                  元の問題へ


問1の答     C9H10O2


 (1)の実験から, 塩化カルシウム管の重量 45mg 増加およびソーダ石灰管の重量 198mg 増加は, 水および二酸化炭素がそれぞれ生成されたことを意味する。よって, 生成された水中の水素(化合物A中の水素と同じ)と生成された二酸化炭素中の炭素(化合物A中の炭素と同じ)の質量は,

  水素の質量 = 45×(2H/H2O) = 45×(2/18) = 5mg

  二酸化炭素の質量 = 198×(C/CO2) = 198×(12/44) = 54mg

化合物A中の酸素の質量は

  酸素の質量 = 75 - (5 + 54) = 16mg

以上の原子のモル比は,

  C:H:O = (54/12):(5/1):(16/16) = 4.5:5:1 = 9:10:2

よって, 化合物Aの組成式は,

  C9H10O2

  式量 : 12×9 + 1×10 + 16×2 = 150

 問題本文中において, 化合物Aは分子量 150 以下のエステルであるので, 上の式量を考慮すると, 分子式は,

  分子式 = (組成式)×1

よって, 化合物Aの分子式は, 組成式と同じで

  C9H10O2


問2の答
       (image413)


   [示性式] D : C6H5CH(OH)CH3  E : CH3C6H4OH  F : CH3C6H4COOH


●実験操作(2)より, Aの加水分解(問3参照)で,

 A → Na塩(水層) + アルコールD(ベンゼン環有, エーテル層)

ここで, Dはベンゼン環を有し[実験操作(4)], ヨードホルム反応[実験操作(5)…有機化合物中にCH3CH(OH)-, または, CH3CO-基が存在]を示すので, その示性式は,

 D : C6H5CH(OH)CH3 

よって, Aの示性式は,

 A : C6H5CH(OCHO)CH3 …分子式:C9H10O2 (問1答参照)

まとめると, Aの加水分解の反応式は,

 C6H5CH(OCHO)CH3 + NaOH → HCOONa + C6H5CH(OH)CH3

●実験操作(3)より, 実験操作(2)での「Na塩(水層)」にCO2を十分に通気した。この弱酸による中和反応は, フェノールのNa塩と共に行われる。抽出で, エーテル層にE[ベンゼン環有: 実験操作(4), 炭素原子数7:実験操作(6)]が得られた。このEはエステルBの加水分解と弱酸の中和反応で得られたものである(問題3参照)。よって, Eの示性式は,

 E : CH3C6H4OH (炭素原子数 7:弱酸)

よって, 実験操作(2)での「Na塩(水層)」に対して, CO2を用いた弱酸の中和反応は,次のように考えられる。

 2CH3C6H4ONa + CO2 + H2O → 2CH3C6H4OH(エーテル層) + Na2CO3

上の反応式から, エステルB(実験操作(4)ベンゼン環有)は

 B + 2NaOH (加水分解と中和反応) → CH3C6H4ONa(水層) + CH3COONa(水層) + H2O

よって, Bの示性式は,

  B :  CH3C6H4OCOCH3 …分子量:12×9 + 1×10 + 16×2 = 150

まとめると, Bの加水分解と中和反応の反応式は,

 CH3C6H4OCOCH3 + 2NaOH → CH3C6H4ONa + CH3COONa + H2O

実験操作(6)により, E(炭素原子数 7)は, 次のように変化する。

 CH3C6H4OH(E) →(水素還元)→ CH3-C6H10-OH →(酸化)→ CH3-C6H9=O (ケトン:不斉炭素無し))

●実験操作(4)より, 実験操作(3)での「Na塩(水層)…C加水分解のNa塩, HCOONa, CH3COONaなど存在」に酸性になるまで塩酸を加えた。この強酸による中和反応は, -COONa と HCl の反応で行われた。抽出で, エーテル層にF[ベンゼン環有: 実験操作(4), 炭素原子数8:実験操作(7)]が得られた。したがって,

 C加水分解のNa塩 + HCl → カルボン酸F(エーテル層) + NaCl(水層)

よって, F(炭素原子数8)の示性式を次のようにすると,

 F : CH3C6H4COOH

したがって, 実験操作(3)でのNa塩(水層)に対して塩酸との中和反応式は,

 CH3C6H4COONa + HCl → CH3C6H4COOH(エーテル層) + NaCl

実験操作(7)において, F(過マンガン酸カリウムで十分酸化) → 生成物(脱水) → C8H4O3から,

 CH3C6H4COOH (酸化) → HOOCC6H4COOH (脱水) → C6H4(CO)2=O(無水フタル酸)

実験操作(2)より, Cの加水分解(問3参照)で,

 C(加水分解) → カルボン酸のNa塩(水層) + アルコール(エーテル層)

よって, Cの加水分解の反応は次のように書かれる。

 C + NaOH → CH3C6H4COONa(水層) + CH3OH(エーテル層)

したがって, Cの示性式は,

 C : CH3C6H4COOCH3 …分子量:12×9 + 1×10 + 16×2 = 150


問3の答(問2答解説参照) 

    (image414)


  [示性式] A : C6H5CH(OCHO)CH3  B : CH3C6H4OCOCH3  C : CH3C6H4COOCH3