2章C 類題2-2(100528)                TOP-C


[問題] 次の文章を読んで, 問1〜7に答えなさい。

 ケイ酸塩鉱物中では, 正四面体のSiO4が酸素を共有して様々な構造をとる。例えば, SiO4が図1(image312)のように鎖状に無限につながった場合, 骨格部分の最小単位は@SiOmn-で表される。一方, すべての酸素が隣り合ったSiO4に共有され, 立方的につながるとSiO2の組成をもつ(あ)になる。
 ケイ酸塩またはSiO2の一部のケイ素がアルミニウムに置き換わったものはアルミノケイ酸塩とよばれる。 ゼオライト(日本語名:沸石)は立体的なネットワーク構造をもったアルミノケイ酸塩であり, ネットワークの空孔に陽イオンと多量の結晶水を含んでいる。その一般式はAMaAlbSicOd・eH2Oで示される。ここで M はNa, K, Ca などの陽イオンになり易い金属元素であり, a, b, c, d, e はそれぞれ組成を示す整数である。ゼオライトは結晶水が除かれてもネットワーク構造が保たれているため, 興味深い性質を示す。
 例えば, A型ゼオライトと呼ばれるものの結晶は, 図2に示すようなネットワーク構造が, 図3のようにつながってできあがっている。このゼオライトは Na12Al12Si12O48・27H2O の組成をもち, 次のように合成される。
 B水酸化ナトリウム水溶液で, ケイ酸ナトリウム Na2SiO3・9H2O とアルミン酸ナトリウム NaAlO2 を混合するとゲル状の沈殿が生成し, 懸濁する。この懸濁液を加熱すると, ゼオライトの結晶が生じる
 A型ゼオライトは様々な用途をもち, 広範に利用されている。例えば, Cゼオライト中のナトリウムイオンは容易に他の陽イオンに交換するDこの性質を利用して, 洗濯用粉石けんにはA型ゼオライトが加えられている。また, 加熱により結晶水を除いたゼオライトは, 空気の乾燥剤や有機溶媒の脱水剤として利用できる。
 さらに, 乾燥したA型ゼオライトは一定の大きさの入り口がある空孔をもつため, 直鎖状の脂肪族炭化水素は結晶中に取り込まれるが, 芳香族化合物や側鎖をもつ脂肪族炭化水素は取り込まれない。この性質を利用すると, 分子の形と大きさによって物質を分離することができる。このことは, 分子ふるいとも呼ばれる。
 

問1. 下線部@の中のイオンの m および n を記しなさい。

                             
問2. (あ)に該当する鉱物名を記しなさい。

                             

問3. 下線部Aで M がアルカリ金属のとき, ゼオライトの組成式中の a は b, c, d, e を用いて, また, d は a, b, c, e を用いてそれぞれどのように表せますか。 例のようにして記しなさい。例:a = d + e

                             

問4. アルミノケイ酸塩の組成については一般に b≦c の関係が成立する。これは b >c の組成では不安定になるためであるが, その理由を40字程度で記しなさい。

                             

問5. 下線部BにおけるA型ゼオライトの合成の反応式を記しなさい。途中に生成するゲル状物質は考慮しなくてもよい。

                             

問6. 下線部Cで, 1.0 g のA型ゼオライトは最大何mg のカルシウムイオンと交換できますか。有効数字2桁で答えなさい。ただし, 原子量は, Na=23.0, Al=27.0, Si=28.1, O=16.0, H=1.00 とする。

                             

問7. 下線部Dの粉石けん中のゼオライトの果たす役割について, 30字程度で記しなさい。