答 元の問題へ
問1の答
CuSO4 + 2HCHO + 4NaOH → Cu + 2HCOONa + H2 + Na2SO4
●無電解めっきは酸化還元反応で行われる。
●上の無電解めっき液での酸化還元の主反応は,
還元 : Cu2+ + 2e- → Cu (銅析出:薄膜)
酸化 : 2HCHO + 2H2O → 2HCOOH + H2 + 2H+ + 2e- (水素発生)
よって, 使用する無電解めっき液の成分に注目して,
CuSO4 → Cu2+ + SO42-
Cu2+ + 2e- → Cu
2HCHO + 2H2O → 2HCOOH + H2 + 2H+ + 2e-
2HCOOH + 2NaOH → 2HCOONa + 2H2O
2H+ + 2NaOH → 2Na+ + 2H2O
2Na+ + SO42- → Na2SO4
●上の各反応を 1つの式にまとめると,
CuSO4 + 2HCHO + 4NaOH → Cu + 2HCOONa + H2 + Na2SO4
問2の答 Cu2+を還元する。
●無電解めっきは, 次のように, 酸化還元反応で行われる。
還元 : Cu2+ + 2e- → Cu (銅析出:薄膜)
酸化 : 2HCHO + 2H2O → 2HCOOH + H2 + 2H+ + 2e- (水素発生)
上の反応の二番目の式から, ホルムアルデヒド HCHOは, アルデヒド基 -CHO の存在で, 電子を生じ, 相手の銅イオンにその電子を与え,
いわゆる, 銅イオンを還元して銅を析出する。
アルデヒド自身は酸化されてギ酸になる。すなわち, ホルムアルデヒド HCHOは還元剤として作用している。
問3の答
弱酸の塩でめっき液のpH値を一定にするための緩衝剤として作用する。
●炭酸ナトリウム Na2CO3 は次のように電離する。
Na2CO3 → 2Na+ + CO32-
一方, めっき液の反応過程で, めっき液の成分のひとつ, 水酸化ナトリウム NaOH が, ホルムアルデヒド HCHO の酸化で生じるギ酸と中和反応するために,
めっき液のpH値が変化する。
しかし, めっき液中に炭酸イオン CO32- が存在すると, 次のように加水分解の平衡状態が生じる。
H2O + CO32- ⇄ HCO3- + OH-
上の平衡状態の結果として, 水酸化ナトリウム NaOH がホルムアルデヒド HCHO の酸化で生じるギ酸と中和反応して水酸化物イオン OH- が消費されても, 直ちに補給され, pH値はほとんど変化しない。
●銅の無電解めっき液の成分の1つの酒石酸ナトリウムカリウム(ロシェル塩) KNaC4H4O6は, 炭酸ナトリウム Na2CO3 の作用と同じように, めっき液のpH変化を抑える作用もあるが, その他に, 生成される銅薄膜の物理的・化学的性質をよくする作用がある。
問4の答
2CuSO4 + HCHO + 5NaOH + → Cu2O + HCOONa + 2Na2SO4 + 3H2O
問1の解答で, Cu2+ + 2e- → Cu に代わって副反応 2Cu2+ + 2e- + H2O → Cu2O + 2H+ が生じると, 反応のプロセスは次のようになる(この反応では気体が発生しない)。
2CuSO4 → 2Cu2+ + 2SO42-
2Cu2+ + 2e- + H2O → Cu2O + 2H+
HCHO + H2O → HCOOH + 2H+ + 2e-
HCOOH + NaOH → HCOONa + H2O
4H+ + 4NaOH → 4Na+ + 4H2O
4Na+ + 2SO42- → 2Na2SO4
1つの式にまとめると,
2CuSO4 + HCHO + 5NaOH + → Cu2O + HCOONa + 2Na2SO4 + 3H2O
問5の答 1.0×10-2 [mm]
(I)まず, 一辺が 10 [cm] のプラスチック立方体の上下面にめっきする。
●厚さ d [cm] の銅の薄膜を付着すると, その体積 V1は,
V1 = (102×d)×2 = 200d [cm3]
●銅の面心立方格子の体積 v [cm3] は,
v = (0.36×10-7)3 = 0.046656×10-21 = 4.6656×10-23 [cm3]
この面心立方格子の単位格子中の銅原子数は, 図1より,
(1/8)×8 + (1/2)×6 = 4個
●体積 V1 中の銅原子数 n1 は,
n1 = 4×V1/v = 4×(200d)/(4.6656×10-23) = (800d/4.6656)×1023 個
●銅の1mol (銅原子数:6.0××1023 個) の質量 [g] の数値は原子量 63.5 に等しいから, 体積 V1 中の銅原子数 n1 の質量 m1 [g] は,
m1 = 63.5×{(800d/4.6656)×1023}/(6.0××1023) ≒ 1815d [g]
(II)次に, 2つの左右側面にめっきする。
●上下の辺が10 [cm], 前後の辺が (10 + 2d) [cm] の2つの左右側面に厚さ d [cm] の銅の薄膜を付着すると, その体積
V2は,
V2 = {10(10 + 2d)d}×2 = 20(10 + 2d)d = 40(5 + d)d [cm3]
●体積 V2 中の銅原子数 n2 は,
n2 = 4×V2/v = 160(5 + d)d/(4.6656×10-23) = 34.2936(5 + d)d×1023 個
●体積 V2 中の銅原子数 n2 の質量 m2 [g] は,
m2 = 63.5×{34.2936(5 + d)d×1023}/(6.0××1023) = 362.94(5 + d)d [g]
(III)最後に, 2つの前後側面にめっきする。
●1辺が (10 + 2d) [cm] の2つの前後側面に厚さ d [cm] の銅の薄膜を付着すると, その体積 V3は,
V3 = (10 + 2d)2d×2 = 8(5 + d)2d [cm3]
●体積 V3 中の銅原子数 n3 は,
n3 = 4×V3/v = 4×8(5 + d)2d/(4.6656×10-23) = 6.859(5 + d)2d×1023 個
●体積 V3 中の銅原子数 n3 の質量 m3 [g] は,
m3 = 63.5×{6.859(5 + d)2d×1023}/(6.0××1023) ≒72.59(5 + d)2d [g]
よって, (I), (II), (III) から, d は非常に小さいとすると, 次式が成立する。
m1 + m2 + m3 = 1815d + 362.94(5 + d)d + 72.59(5 + d)2d
≒ d(1815 + 1815+ 1815) = 5.5
よって,
d = 0.0010 [cm] = 0.010 [mm] = 1.0×10-2 [mm]