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問1の答 a : Ag2O b : 塩酸 c : 硝酸
金Auと銀Agを含む固体Aに濃硝酸を加えると, 固体A中の銀が濃硝酸と次のように反応して, 褐色気体の二酸化窒素NO2を発生しながら硝酸銀AgNO3として溶解する :
Ag + 2HNO3 → AgNO3 + NO2 + H2O
固体中の金Auは反応せず, そのまま固体として残る。溶液中の硝酸銀AgNO3は, アンモニア水を加えると, 次のように反応して褐色の酸化銀Ag2Oの沈殿を生じる :
AgNO3 + NH3 + H2O → AgOH + NH4NO3
2AgOH → Ag2O↓ + H2O
この沈殿物の酸化銀Ag2Oをろ過し, 還元することよって銀を回収することができる。ここで, 注意をしなければならないのは, Ag2Oは, 次問2の解説のように, 過剰のアンモニア水と反応して, 錯イオンのジアンミン銀(I)イオン [Ag(NH3)2]+ となり溶解することである。
一方, 硝酸と塩酸の混酸である王水は, HNO3 + 3HCl (一硝三塩)において, 次のように反応する :
HNO3 + 3HCl ⇄ Cl2 + NOCl + 2H2O
ここで, 生成される塩素Cl2と塩化ニトロシルNOClは, 特に強力な酸化力を持つ。したがって, 未反応の金Auを含む固体に王水を加えると, 金Auは下式のように反応して塩化金(III)酸を生成して溶解する
:
2Au + 3Cl2 + 2NOCl + 2HNO3 → 2HAuCl4 + 4NO2
問2の答 [Ag(NH3)2]+
問1の解説を参照すると, 沈殿物は酸化銀(I) Ag2O であることが分かる。この沈殿物にアンモニア水を加えると, 次の反応のようにジアンミン銀(I)の錯イオンを生成して溶解する :
NH3 + H2O ⇄ NH4+ + OH-
Ag2O + 2NH4+ + 2NH3 → 2[Ag(NH3)2]+ + H2O
問3の答 D = K2[H+]水層/([H+]水層 + K1)
図Iを参照すると, 水層での HQ ⇄ Q- + H+ において, 平衡定数(電離定数) K1 は
K1 = [Q-]水層[H+]水層/[HQ]水層
上式 K1を変形すると,
K1/[H+]水層 = [Q-]水層/[HQ]水層 …(1)
分配の平衡定数K2は, HQ(水層) ⇄ HQ(有機層) において,
K2 = [HQ]有機層/[HQ]水層 …(2)
問3中の分配比 D を変形すると
D= ([HQ]有機層/[HQ]水層)/(1 + [Q-]水層/[HQ]水層) …(3)
(3)に(1)と(2)を代入すると,
D= K2/(1 + K1/[H+]水層) = K2[H+]水層/([H+]水層 + K1)
問4の答
(image521)
8-キノリノール(HQ)のイオンQ-は, 答の図に示すように, 3つのイオン中のNとO-(いずれも非共有電子対を持つ)を用いて1つの金属イオンIn3+と配位結合をして, 全体として無電荷の配位数6のキレート錯体を形成する。
問5の答
0.3Vの電圧(電解電位)で調整された陽極では, 直流電源の正極が, 固溶体の粗銅中の銅 Cu, アルミニウム Al, および鉄 Fe から,
電子を抜き取る。その結果として, Cu, Al, Fe は イオンとして溶解し, 銀 Ag は陽極泥として沈殿する。
硫酸銅(II)水溶液中で, 粗銅(アルミニウム, 銀, 鉄を含む)の陽極および純銅の陰極での電解精錬が行われると,
0.3Vの電圧(電解電位)で調整された陰極では, 電子が, 直流電源の負極から供給され, 溶液中の銅イオン Cu2+ と共に,
Cu2+ + 2e- → Cu
の反応が生じ, 純銅の陰極に銅 Cu が付着して, 陰極の重さが増加する。
0.3Vの電圧(電解電位)で調整された陽極では, 電子が, 直流電源の正極によって, 粗銅(組成式:CuAlxAgyFezとする)中の銅 Cu, アルミニウム Al, および鉄 Fe から抜き取られ,
CuAlxAgyFez → Cu2+ + xAl3+ + yAg + zFe2+ + (2 + 3x + 2z)e-
の反応が生じ, Cu, Al, および Fe は イオンとして溶解し, 銀 Ag は陽極泥として沈殿する。
ここで, 電子数は陰極と陽極との間で等しいことを考慮すると, 陰極では次式が成立する :
{1 + (3/2)x + z}Cu2+ + {1 + (3/2)x + z)2e- → {1 + (3/2)x + z}Cu
問6の答 4.5 [g]
陰極での質量増加は, 陽極からの銅イオンと硫酸銅(II)からの銅イオンが関与している。 2.0Lの硫酸銅(II)水溶液からの銅イオンによる銅の陰極での質量増加
w1 [g] は, 「水溶液中の硫酸銅(II)の濃度は 0.020 mol・L-1減少した」ことから
w1 = (63.5×0.02)×2.0 = 2.54 [g]
よって, 陽極からの銅イオンによる陰極での銅の質量増加 w2 [g] は
w2 = 110.0 - w1 = 110.0 - 2.54 = 107.46 [g]
ここで, w2 の値は陽極(粗銅)中の銅の質量減少に等しい。
そこで, 陽極の減少量 112.0 g のうち銅以外の重量 w3 [g] は
w3 = 112.0 - w2 = 112.0 - 107.46 = 4.54 [g]