8章C 類題2-1(130924)              TOP-C


[問題] 下の文章を読み, 各問いに答えなさい。必要あれば次の値を用いなさい。Cuの原子量 : 63.5

 レアメタルや貴金属等はさまざまな製品に幅広く用いられており, それらの希少性・重要性から多くのリサイクル技術が開発されている。通常, 製品には複数の金属が混在しており, 目的とする金属を回収するには, 溶解, 沈殿, 溶媒抽出, 電解精錬など複数の化学操作が用いられる。

 まず, 溶解と沈殿の例として, 金と銀を含む固体(固体A)から金と銀の回収を考える。最初に固体Aに濃硝酸を加えてろ過する。このろ液に少量のアンモニア水を加えると, 褐色を呈する( a )の沈殿を生じ, 一方の金属を回収することができる。また, このろ液操作で残った固体を取り出して, 2種類の酸( b )( c )を加えて再びろ過すると, もう一方の金属が溶解したろ液を得ることができる。

 金属の純度をさらに高めるために, 溶媒抽出法が用いられる。溶媒抽出法では, 混ざり合わない2つの液体, 例えば水と極性の小さい有機溶媒を振り混ぜて目的成分を一方の液相に抽出する。特に金属の抽出操作では, キレート剤を用いる。キレート剤とは1つの分子中に金属イオンへ配位できる原子を2つ以上持つ試薬である。

 例として, キレート剤である 8-キノリノール(HQと表記)によるインジウムイオン(In
3+)の抽出を考える。HQは, 水層と有機層に分配し, あるpH条件では図1のように水層において一価の酸として働き, Q-とH+に電離する。
                (image520)

 また, 分配の平衡定数K
2は有機層および水層におけるHQ濃度 [HQ]有機層および[HQ]水層を用いて

                     K
2 = [HQ]有機層/[HQ]水層

 と表わすことができる。以上の条件のもと, 有機層へ溶解させたHQは水層へ移動して,
In3+と錯体を形成して全体として無電荷となり, 有機層へ抽出される。このとき, In3+に配位する原子の数は 6 である。

 純度の向上には電解精錬も用いられる。ここでは銅の電解精錬を考える。純度が低い粗銅で構成される陽極(アルミニウム, 銀, 鉄を含む)と, 純銅で構成される陰極とを体積 2.0 L の硫酸銅(II)水溶液に入れて, 0.30Vで電気分解を行う。その結果,
陽極の質量は 112.0 g 減少して, 陰極の質量は 110.0 g 増加した

 また, 水溶液中の硫酸銅(II)の濃度は 0.020 mol・L
-1減少した。このとき, 陽極の下に陽極泥と呼ばれる沈殿が生じた

問1 ( a )にあてはまる化学式と( b ), ( c )にあてはまる物質名を記しなさい。

                   


問2 ( a )の沈殿に過剰のアンモニア水を加えるとイオンとして溶解する。このイオンの化学式を記しなさい。

                   


問3 In
3+が存在しないとき, HQの有機層への分配の程度を表わす分配比

          D= [HQ]
有機層/([HQ]水層 + [Q-]水層)

 を, 水層における水素イオン濃度 [H
+]水層, および K1, K2 を用いて表しなさい。

                   


問4 下線部①に関して, 生成する錯体の構造を記しなさい。なお, In3+と配位結合する原子については, その原子とIn
3+を点線で結び配位結合していることを明示すること。立体構造を表記する必要はない。

                   


問5 下線部③に関して, 陽極泥を構成する金属元素を沈殿した理由とともに記しなさい。

                   


問6 下線部②に関して, 陽極の減少量 112.0 g のうち銅以外の重量を有効数字2桁で求めなさい。ただし, 水溶液の体積変化は無視できるものとする。