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問1の答

 潮解


 水酸化ナトリウムや塩化亜鉛などの固体は, 大気中にさらされていると, 大気中の水蒸気を捕捉し, その水に溶ける。この現象は潮解と呼ばれている。

 この現象を分子レベルで考えると, 次のように解釈される。
 大気中の水分子が固体またはその溶液に衝突するとき, 結合する水分子の数が溶液から飛び出る水分子の数よりも多いときに潮解が生じる。
 一方, 相律による水蒸気圧の観点からは, 固体の飽和水溶液の水蒸気圧が, それと接触する大気中の水蒸気の分圧よりも小さいときに潮解が生じることになる。


問2の答

 [反応式] Na2CO3 + Ba(OH)2 → BaCO3↓ + 2NaOH

 [操作の必要性] 
NaOHは潮解性とCO2吸収で正味の質量は大気中では正確に測られないので, 1部が炭酸塩に変化したものを, 水溶液中で元のNaOHにし, 同時にCO32-をBaCO3として沈殿させて除去することができる。


 「白色小球状の水酸化ナトリウムは, 湿った空気中に置いておくとその表面が濡れて空気中で速やかに二酸化炭素を吸収する。」ことから, 次のように炭酸ナトリウムが形成される。

  2NaOH + CO
2 + H2O → Na2CO3 + 2H2O

 さらに水酸化バリウム8水和物飽和水溶液を加えると, 不溶性の炭酸バリウムが形成され沈殿する。

 Na
2CO3 + Ba(OH)2 → BaCO3↓ + 2NaOH

 一定のモル濃度の水酸化ナトリウム水溶液をつくる場合, 溶かす溶質の水酸化ナトリウムは, 上述のように潮解性と二酸化炭素吸収があるために, その水酸化ナトリウムの正味の質量は大気中では正確に測られない。

 したがって, 一定のモル濃度の水酸化ナトリウム水溶液を調製する場合は, 下線部②のように, 強塩基の水酸化バリウム8水和物飽和水溶液を使用すると, 水酸化ナトリウムの1部が炭酸塩に変化したものを, 水溶液中で元の水酸化ナトリウムにし, 同時に炭酸イオンを炭酸バリウムとして沈殿させて水溶液中からほぼ完全に除去することができる。
 水酸化バリウム8水和物飽和水溶液中の水酸化物イオンは予め確認できるから, 下線部②で調製して得られるろ液を, 安定で調製し易いアミド硫酸などの酸の標準液で滴定すると, モル濃度の定まった標準水酸化ナトリウム水溶液をつくることができる。


問3の答

 0.978 [moL/L]


 アミド硫酸と水酸化ナトリウムとの反応式は

  NH
2SO2OH + NaOH → NH2SO2ONa + H2O

 アミド硫酸1.444gの物質量 M
AM [moL] は, 分子量 NH2SO2OH = 14×1 + 1×3 + 32.1×1 + 16×3 = 97.1 を使用して,

  MAM = 1.444/97.1 = 0.01487 [moL]

 上述の反応式から 1 moL のアミド硫酸と 1 moL の水酸化ナトリウムとが反応するので, 水溶液15.20mL中の水酸化ナトリウムの物質量 M
Na [moL] は

  M
Na = MAM = 0.01487 [moL]

 よって, 水酸化ナトリウム水溶液のモル濃度 [moL/L] は

  水酸化ナトリウム水溶液のモル濃度 = 0.01487×(1000/15.2) = 0.978 [moL/L]


問4の答

 pH = 4.74


 「未知濃度 MAC [moL/L] の酢酸水溶液100mLを, 濃度0.978 [moL/L] の水酸化ナトリウム水溶液 20mLを加えて中和点に達した」こと, および, 中和反応において水素イオンと水酸化物イオンが同物質量で中和反応することから, 次式が成立する。

  MAC×(100/1000) = 0.978×(20/1000)

 よって, 酢酸水溶液のモル濃度 M
AC [moL/L] は

  M
AC = {0.978×(20/1000)}×(1000/100) = 0.978×0.2 = 0.1956 [moL/L]

 いま, 水酸化ナトリウム水溶液10mLを滴下した時点では, 平衡状態

  CH3COOHeq ⇄ CH3COO-eq + H
+eq

 において, 平衡状態で水溶液中のCH
3COOHeq と CH3COO-eq + 物質量は,

  CH
3COOHeq の物質量 = 0.1956×(100/1000) - 0.978×(10/1000) = 0.00978 [moL]

  CH3COO-eq の物質量 = 0.00978 [moL]

 したがって, 各モル濃度は

  [CH3COOHeq] = 0.00978/(110/1000) [moL/L]

  [CH
3COO-eq] = 0.00978/(110/1000) [moL/L]

 ここで, {H+] のモル濃度を x とすると

 酢酸の電離定数は,

  [CH3COO-eq][H+eq]/[CH3COOHeq] = 1.8×10-5moL・L-1

 であるので

  0.00978x/0.00978 = 1.8×10-5

  x = 1.8×10-5 [moL/L]

 pH = -logx から

  pH = -log(1.8×10-5) = -log(18×10-6) ≒ -log(2×3
2×10-6) = 6 -log2 - 2log3

    = 6 - 0.3 - 2×0.48 = 4.74


問5の答

 2.4 ≦ pH ≦ 4.4


 「HA, A-の濃度比が0.1以上10以下の範囲にあるときに色調の変化が肉眼でわかると仮定する」ことから,

  0.1 ≦ [A
-]/[HA] ≦ 10 …(1)

 一方, HA ⇄ H+ + A- において, 電離定数式は

  [H+][A-]/[HA] = 4.0×10-4 [moL・L-1]

 よって

  [A-]/[HA] = (4.0×10-4)/[H+]

 (1)に代入すると

  0.1 ≦ (4.0×10-4)/[H+] ≦ 10

 よって

  0.025×104 ≦ 1/[H+] ≦ 2.5×104

   25×10 ≦ 1/[H+] ≦ 25×103

 pH = log{1/[H+]} であるので

  log(25×10) ≦ pH ≦ log(25×103)

  (1 + 2log5) ≦ pH ≦ 3 + 2log5

  1 + 2×07 ≦ pH ≦ 3 + 2×07

  2.4 ≦ pH ≦ 4.4


問6の答

 pH指示薬Xは不適当である。

 [理由] Xの色調は, 2.4~4.4のpH範囲で変化するが, NaOH水溶液10mL滴下ですでに水溶液でpHは4.74に達し, 中和点では7以上であるためXの色調は変化しない。


 弱酸の酢酸と強塩基の水酸化ナトリウムとの中和反応で生成される塩の水酸化ナトリウムは, 水溶液中で塩基性(アルカリ性)を示す中性塩(正塩)である。したがって, この反応での中和点では, その水溶液はアルカリ性で, pHは7以上である。
 この問題において, 中和点前のNaOH水溶液10mL滴下ですでに水溶液のpHは4.74に達している。pH指示薬Xの色調の変化は2.4~4.4であるので, 問題にしている反応において, 中和点ではpHが7以上であるため色調変化はない。これより, pH指示薬Xは不適当である。