答                                 元の問題へ


問1の答     2 mol


 問題本文を要約すると次のようになる。

●1  化合物 A(C16H18O4) 10.0g  → (H2付加, 標準状態 1.64 L) → 化合物 B

●2  化合物 B → (加水分解) → 化合物 C と D

●3  化合物 C → (濃硫酸で脱水反応) → 1-ブテン

●4  化合物 C → (硫酸酸性二クロム酸カリウムで酸化) → 化合物 E

●5  化合物 E → (さらに酸化) → カルボン酸

●6  化合物 D → (加熱, 分子内脱水) → 芳香族酸無水物

●7  化合物 D → (1分子メタノールと反応) → 分子量 180 の化合物

●8  化合物 A → (加水分解) → 化合物 Dおよび化合物 E と F

●9  化合物 E と F は互いに構造異性体

●10 化合物 F は幾何異性体は存在しない。


 ●1において, 化合物 A(C16H18O4) のモル質量 m(A) mol は

                 m(A) = 16×12.0 + 18×1.00 + 4×16.0 = 274 g/mol

 A の物質量 n(A) mol は, m(A) を使用すると,

                 n(A) = 10.0/m(A) = 10.0/274 = 0.0365 mol

 付加する水素は標準状態で 1.64 L 付加するので, その水素の物質量 n(H2) は,

                 n(H2) = 1.64/22.4 = 0.0732 mol

 ここで, A と水素 H2 との付加反応でのモル比は

                 n(A) : n(H2) = 0.0365 : 0.0732 ≒ 1.00 : 2.00

 したがって, 化合物 1 mol に対して水素 2 mol が付加して化合物 B が生じたことになる。

                   C16H18O4 + 2H2 → C16H22O4 (化合物 B)


問2の答      オルト-キシレン


 問1の解説を参照すると,

 ●2において, 「化合物 B(C16H22O4) → (加水分解) → 化合物 C と D 」であることから, 1つのB分子内の炭素数16個がどのように分割されたかを考えると,

 ●3において, 「化合物 C → (濃硫酸で脱水反応) → 1-ブテン」であることから, C分子内の炭素数は4個, したがって, D分子内の炭素数は, もしC分子が2個生じたとすると,

                          16 - 4×2 = 8 個

 ●6において, 「化合物 D → (加熱, 分子内脱水) → 芳香族酸無水物」であることから, D は芳香族化合物のジカルボン酸であると推定される。

                 R(COOH)2 → (分子内脱水) → R(-CO-O-CO-)

 そして, ●7において, 「化合物 D → (1分子メタノールと反応) → 分子量 180 の化合物」を考慮して, D を

                         オルト-C6H4(COOH)2

 とすると, 次のように 1分子のメタノールとの脱水でエステル化反応が生じる。

            o-C6H4(COOH)2 + CH3OH → C6H4(COOCH3)(COOH) + H2O

 生成された C6H4(COOCH3)(COOH) の分子量は

                    9×12.0 + 8×1.00 + 4×16.0 = 180

 そこで, 芳香族化合物をオルト-キシレン C6H4(CH3)2 とすると, その酸化反応でジカルボン酸の化合物 D(フタル酸)が生じる。

              o-C6H4(CH3)2 → (酸化) → o-C6H4(COOH)2 (化合物 D, フタル酸)

 また, ナフタレン C10H8 を酸化しても化合物 D(フタル酸)が生じる。

    C6H4(-CH=CH-CH=CH-) (ナフタレン) → (酸化) → C6H4(-CO-O-CO-) (酸無水物, 無水フタル酸)

              → (加水分解) → o-C6H4(COOH)2 (化合物 D, フタル酸)


問3の答
      (image537)


 まず, 問1の●3, 4, 5 の解説を参照すると,

 ●3の「化合物 C → (濃硫酸で脱水反応) → 1-ブテン」であることから, C は第一アルコールと考えられ,

          CH3CH2CH2CH2OH (C, 1-ブタノ-ル) → (脱水) → CH3CH2CH=CH2 (1-ブテン)

 ●4の「化合物 C → (硫酸酸性二クロム酸カリウムで酸化) → 化合物 E」であることから,

     CH3CH2CH2CH2OH → (酸化) → CH3CH2CH2CHO (E, ブチルアルデヒドまたは1-ブタナール)

 ●5の「化合物 E → (さらに酸化) → カルボン酸」であることから,

          CH3CH2CH2CHO → (酸化) → CH3CH2CH2COOH (酪酸またはブタン酸)

 次に, 問1の解説●1と答および問2の解説と答を参照すると,

 1 mol の A(C16H18O4) は, 2 mol の水素が付加することから, A分子内に二重結合が2つ存在する。

 また, 問1の解説●2の参照で, B(C16H22O4) の加水分解から, 1 mol のD (フタル酸, o-C6H4(COOH)2) と 2 mol の C(1-ブタノ-ル, C4H9OH) が生じた。よって, A分子には2個のエステル結合 -COO- が存在する。

 そこで, いま, A分子式 C16H18O4 を示性式で示すと, 次のように考えられる。

                 CH2=CH-CH2-CH2-OOC-C6H4-COO-CH=CH-CH2-CH3 …(i)
 または

                 CH3-CH=CH-CH2-OOC-C6H4-COO-CH=CH-CH2-CH3 …(ii)

 (i)において

 ●8の「化合物 A → (加水分解) → 化合物 D および化合物 E(CH3CH2CH2CHO, 分子式 C4H8O) と F」であることを考慮すると,

       CH2=CH-CH2-CH2-OOC-C6H4-COO-CH=CH-CH2-CH3(A) → (加水分解, 2H2O)

           → CH2=CH-CH2-CH2OH(F) + HOOC-C6H4-COOH(D) + CHO-CH2-CH2-CH3(E)

 ここで, この反応式で生成される E と F は, ●9の「化合物 E と F は互いに構造異性体…同一の分子式 C4H8O」および●10の「化合物 F は幾何異性体は存在しない」の条件を満足する。

 (ii)においては,

       CH2=CH-CH2-CH2-OOC-C6H4-COO-CH=CH-CH2-CH3(A) → (加水分解, 2H2O)

           → CH3-CH=CH-CH2-OH + HOOC-C6H4-COOH(D) + CHO-CH2-CH2-CH3(E)

 ここで, 生成される F の分子式には, シスとトランスの幾何異性体が存在する。このことは, ●10の「化合物 F は幾何異性体は存在しない」の条件に適合しない。したがって, (ii)のAは不適切である。

 以上から, 化合物 A, C, E, F を示性式で示すと

 A : CH2=CH-CH2-CH2-OOC-C6H4-COO-CH=CH-CH2-CH3

 C : CH3CH2CH2CH2OH

 E : CH3CH2CH2CHO

 F : CH2=CH-CH2-CH2OH


問4の答

 アルコールFの分子間ではファンデルワールス力による結合以外にヒドロキシル基での水素結合が存在するため分子の間の結合が強まり沸点が高くなる。一方, アルデヒドEには水素結合が生じないので沸点は低くい。