7章B 類題2-1(121120)               TOP-B


[問題] 次の文を読んで, 問1~問4に答えなさい。ただし, 温度は 25℃であり, 気体が水に溶解する際の水溶液の体積変化, 水の蒸発, および水面の石けん分子の吸着は無視する。Lはリットルを表わし, [X] は mol/L を単位とした分子またはイオン X の濃度を表わす。
 また, 水のイオン積は [H+][OH-] = 1.0×10-14 [mol/L]2 とする。計算の過程で y/x ≦ 0.01 であるとき, x + y = x と近似すること。

 ヤシ油などを原料とする天然石けんの主成分はラウリン酸ナトリウム(分子量 222)で, 炭素数 11 のアルキル基(C11H23-)を( ア )部分, カルボキシル基(-COOH)を( イ )部分とする飽和脂肪酸のナトリウム塩である。このアルキル基を R と書いて, ラウリン酸ナトリウムを RCOONa と表す。
 ラウリン酸ナトリウムを水に溶かすと, すべて電離したのち, ラウリン酸イオンが水と反応して,

  RCOO- + H2O ⇄ RCOOH + OH-  …(1)

 という平衡状態になり pH が大きくなる。飽和脂肪酸は総炭素数が 12以上のとき水に溶けにくくなる性質があり, 実際, ラウリン酸イオン RCOO- は水溶液中で RCCOH の微結晶となって析出して浮遊し, 水溶液が濁って見える一因となる。この溶解平衡は, 次の式(2)で表される。

  RCOOH ⇄ RCOO- + H+,   Ksp = 2.0×10-10 [mol/L]2  …(2)

 ここで, Ksp は溶解度積である。
 ラウリン酸ナトリウムの濃度を高くすると, 微結晶とは別の分子集合体である( ウ )が生じる。( ウ)は, ( ア )部分を内側に向けたコロイド粒子で, 水と接する部分が( イ )部分となるため, 水中で分散して安定に存在できる。
 いま, 大気と十分な時間で接触させたラウリン酸ナトリウム水溶液について考えてみよう。
 まず, 水を十分な時間で大気と接触させた。水の pH は, 大気中から水に溶けた二酸化炭素に影響される。水に溶けた二酸化炭素は, 式(3)のように炭酸を生じる。

  CO2 + H2O ⇄ H2CO3  …(3)

 この反応に化学平衡の法則をあてはめると, 水の濃度は一定とみなせるので, 式(4)のように書ける。

  [H2CO3]/[CO2] = 1.8×10-3  …(4)

 生じた炭酸が電離する 2段階の電離平衡は, 次の式(5)および式(6)で表される。

  H2CO3 ⇄ HCO3- + H+,  [HCO3-][H+]/[H2CO3] = 2.5×10-4 mol/L  …(5)

 および

  HCO3- ⇄ CO32- + H+,  [CO32-][H+]/[HCO3-] = 4.7×10-11 mol/L  …(6)

 十分な時間で大気と接触させた水の pH は 5.5 であった。酸性条件では炭酸の 2段目の電離は無視できるので, このときの濃度 [CO2] は( a ) mol/L である。
 次に, ラウリン酸ナトリウム 4.66g を水に溶解して 1.00L とし, この水溶液を十分な時間で大気に触れさせると pH = 8.0 になった。このとき, 式(2)の溶解平衡が成り立ち, ( ウ )は生じていなかった。この水溶液のラウリン酸イオンの濃度 [RCOO-] は( b )mol/L である。
 また, 水溶液が塩基性になると, 式(6)で示した炭酸の 2段目の電離は無視できない。水溶液中での陽イオンと陰イオンの電荷量が等しいことから, 次の式(7)が成り立つ。

  [H+] + [Na+] = (   A   )  …(7)

 以上のことから, 水溶液中の濃度 [CO2], [HCO3-], および [CO32-] は, それぞれ( c )mol/L, ( d )mol/L, および ( e )mol/L と求められる。


問1 ( ア )~( ウ ) に適切な語句を記入しなさい。

                           

問2 ( a )および( b ) に適切な数値を有効数字 2桁で記入しなさい。

                           

問3 ( A ) に入る適切な式を記しなさい。

                           

問4 ( c )~( e ) に適切な数値を有効数字 2桁で記入しなさい。