7章B 類題1-1(121110)               TOP-B


[問題] 次の文を読んで, 問1〜問6に答えなさい。

 ガリウムは元素記号Gaで表され, ( ア )族のアルミニウム(元素記号Al)と同族の元素であり, ( イ )が周期表を発表した際, エカアルミニウムとして予言した元素である。ガリウムはアルミニウムと同様の反応性を示す。たとえば, @空気中で加熱すると酸化物となる。また, A酸にもアルカリにも溶ける
 単体のガリウムは, 固体の結晶構造が特異であり, 固体の方が液体よりも密度が小さく, 融点が低く沸点が比較的高いという特徴をもつ。これらの特徴を, 同程度の融点をもつ元素であるセシウム, および同族のアルミニウムと比較する。

 まず, 固体と液体の密度に関して考えてみよう。セシウムは元素記号Csで表せれ, アルカリ金属の一種で, 下図1(○は原子中心近辺領域を表わす)のような結晶構造をとる。この構造は( ウ )と呼ばれる。実線で示された単位格子の中には, ( エ )個分のセシウム原子が含まれている。セシウム原子を球とみなし, 最も近いセシウム原子どうしが接しているとすると, その充填率は 68%である。液体では, 原子が乱れた配置をとるため, すきまの多い構造となり, 密度は固体よりも小さい。

 また, アルミニウムは下図2(○は原子中心近辺領域を表わす)のような結晶構造をとる。その充填率は 74%である。セシウムと同様に, 液体の密度は固体よりも小さい。

 一方, ガリウムの固体は, 下図3(○は原子中心近辺領域を表わす)のような結晶構造をもつ。この結晶構造では, 距離の近いガリウム原子2個ずつが, 比較的強く結合してガリウム原子対を形成している。図では, 対を形成している原子どうしを線で結んで示している。ガリウム原子対は隣接する対とは比較的弱い結合で結びついている。
 この結晶構造では, ガリウム原子対の中心が, 直方体の単位格子の頂点と各面の中心に位置しているとみなすことができる。この単位格子中には, ( オ )個分のガリウム原子が含まれており, 充填率は( A )%である。このように充填率が小さいことから, ガリウムは液体よりも固体の密度が小さいことが理解できる。
 次に, 融点と沸点について考えてみよう。セシウムの融点は 28℃, 沸点は 670℃である。セシウム原子間の金属結合は比較的弱いので, B融点が単体の金属の中では低く, 沸点も金属としては低い。また, アルミニウムの融点は660℃で, 沸点は約2500℃である。セシウムに比べて金属結合が強いため, 融点と沸点はともに高い。一方, ガリウムは, C融点が 30℃と低いのに対して, 沸点は約2400℃と高く, 液体として存在する温度範囲が最も広い単体の金属として知られている。
              (image483)
問1 ( ア )〜( オ ) に適切な語句あるいは数字を記入しなさい。

                           

問2 下線部@の化学反応式を記しなさい。

                           

問3 下線部Aに関連して, ガリウムが希硫酸に溶ける化学反応式と, 水酸化ナトリウム水溶液に溶ける化学反応式を, それぞれ記しなさい。

                           

問4 ( A )に適切な数値を答えなさい。ただし, ガリウム原子は球とみなす。ガリウム原子対においては, 原子どうしが接しており, 原子の中心間距離は 0.250 nm である。単位格子の体積は 0.157 nm3 とする。円周率は 3.14 とし, 有効数字2桁で答えなさい。

                           

問5 下線部Bに関連して, 単体の金属の中で, 融点が最も低い元素は何ですか。その元素名を答えなさい。

                           

問6 下線部Cに関連して, ガリウムの融点が極めて低い理由を, 融解時のガリウム原子間の結合状態の変化に着目して考察し, 50字以内で説明しなさい。