6章B 類題4-2(120129)               TOP-B


[問題] 次の文を読んで, 問1〜問6に答えなさい。

 解答に際し, 次の数値ならびに条件を用いなさい。原子量はH=1.00, C=12.0, O=16.0 とする。浸透圧は溶液のモル濃度と絶対温度と比例し, 比例定数は 8.31×103 Pa・L/(K・mol) とする。また, 希薄溶液の凝固点降下度は, 溶質の質量モル濃度に比例し, 水のモル凝固点降下は 1.86 K・kg/mol とする。添加したアミラーゼの量ならびにアミラーゼ処理による水分子の増減は凝固点降下に影響をおよぼさないものとする。答の有効数字は3桁とする。

 アミロースの加水分解について, 以下の実験材料を用いて実験1と実験2を行った。

[実験材料]
 アミロース : α−グルコースがα1,4-グリコシド結合によって結合した直鎖多糖
 α−アミラーゼ : 糖鎖内部の任意のα1,4-グリコシド結合を加水分解してマルトースを生成する酵素
 β−アミラーゼ : 糖鎖の非還元末端のα1,4-グリコシド結合を加水分解してマルトースを生成する酵素
 セロハン膜 : 分子量 1000 以下の物質を透過するもの
 フェーリング液

[実験1]
 操作1 アミロース x [g] を水 100 mL に加え, おだやかに熱した後, 冷却した。
 操作2 調製したアミロース溶液をセロハン膜に包み, 27℃における浸透圧を測定した。
 操作3 このアミロース溶液をα-アミラーゼ溶液 50.0 ml と混合した。
 操作4 この混合液を 37℃で放置して, 溶液中のアミロースをすべてマルトースへと変換した。
 操作5 反応後の溶液を 95℃で 5分間熱処理した。
 操作6 冷却後, 溶液の凝固点降下を測定した。

[実験1結果]
 今回の実験条件でのアミロース溶液の密度は 1.028 g/cm3, 浸透圧は 1500 Pa であった。操作6 の凝固点降下度は 0.310 K であった。

[実験2]
 操作1 実験1の操作1と同じアミロース溶液を調製した。
 操作2 調製したアミロース溶液にβ−アミラーゼ溶液 50.0 ml を加えた。
 操作3 混合後の溶液を 37℃で 1 時間放置した。
 操作4 反応後の溶液を 95℃で 5分間熱処理した。
 操作5 冷却後の溶液をセロハン膜に包み, 750 ml の水が入ったビーカー中に浸し, セロハン膜の外液を長時間かくはんした。
 操作6 外液を 20.0 ml 取り, 十分な量のフェーリング液と混ぜた後に加熱したところ, 赤色沈殿が生成した。
 操作7 赤色沈殿の重量を測定し, その物質量を算出した。

[実験2の結果]
 生成した赤色沈殿の物質量は 1.60×10-4 mol であった。


問1 実験1 の操作1 で溶解したアミロースの質量 [g] を求めなさい。

                           

問2 使用したアミロースの平均分子量を求めなさい。

                           

問3 使用したアミロースの 1分子中のα−グルコースの分子数(平均重合度)を求めなさい。

                           

問4 実験1 の操作3 を行う際, アミラーゼ溶液ではなく飽和濃度の硫酸アンモニウム水溶液を誤って用いてしまった。すると, アミロース溶液が白濁し, 沈殿が生じた。次の (i), (ii) に答えなさい。

 (i) この沈殿現象を何といいますか。

                           

 (ii) このときの硫酸アンモニウムの作用を 35文字以内で記しなさい。

                           

問5 実験2 で生じた赤色沈殿は何ですか。化学式で答えなさい。

                           

問6 実験2 でのβ−アミラーゼによる消化によって, 1分子のアミロースに重合しているグルコースの分子数は何%減少していたかを求めなさい。ただし, 1 mol のグルコースをフェーリング液と反応させたとき, 赤色沈殿は 1mol 生じたとする。