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問1の答 8.10 [g]
「添加したアミラーゼの量ならびにアミラーゼ処理による水分子の増減は凝固点降下に影響をおよぼさないものとする」ことから, 「希薄溶液の凝固点降下度
ΔT は, 溶質のマルトースの質量モル濃度 MW [mol/kg] に比例し, 水のモル凝固点降下は 1.86 K・kg/mol とする」の条件による式を作ると, 次のようになる :
ΔT = 1.86MW
よって, 操作6 の凝固点降下度は 0.310 K であることから,
0.310 = 1.86MW
よって,
MW = 0.310/1.86 = 0.16667 [mol/kg]
ここで, 使用したマルトースの希薄溶液の溶媒の水質量は, 実験1の操作1でアミロース x [g] を水 100 mL に加え, おだやかに加熱後,
冷却し, さらに, 操作3でアミロース溶液をα-アミラーゼ溶液 50.0 ml と混合したことから,
100 + 50 = 150 [g]
としてよい(最初の解説文の1行~3行での条件, また, 水の密度は 1g/cm3)。
よって, この使用したマルトースの希薄溶液の中に, 溶質のマルトースが a [mol] あるとすると, 溶質のマルトースの質量モル濃度 MW [mol/kg] は, 次のように表される :
MW = a×(1000/150) = 0.16667
よって,
a = 0.025 [mol]
この物質量 a = 0.025 [mol] のマルトースが生じるためのアミロースの質量 x [g] は次のようにして求められる。
アミロースはα-グルコースがα1,4-グリコシド結合によって結合した直鎖多糖であるので, アミロースの 1分子中のマルトースの分子数を n
とすると, アミロースの分子を次のように表してもよい。
アミロースの分子 = (マルトース基)n = [(α-グルコース基)2]n
よって,
アミロースの分子式 = [-(C6H10O5)2-]n
アミロース溶液にα-アミラーゼ溶液を加え完全に加水分解すると, 次のようにアミロース 1 [mol] から n [mol] のマルトースが生じる :
アミロース → (加水分解) → n(マルトース)
したがって, 物質量 a = 0.025 [mol] のマルトースが生じるためのアミロースの物質量は
アミロースの物質量 = 0.025/n [mol]
よって, そのアミロースの質量 x [g] は
アミロースの質量 x = (アミロースの分子量)×(0.025/n) = [-(C6H10O5)2-]n×(0.025/n)
= [-(C6H10O5)2-]×0.025 = 324×0.025 = 8.10 [g]
問2の答 1.28×105
浸透圧Πは溶液のモル濃度Mと絶対温度Tとに比例し, 比例定数は 8.31×103 Pa・L/(K・mol) であるので,
Π= 1500 [Pa]
T = 273 + 27 = 300 [K]
Π= (8.31×103)MT = (8.31×103)M×300 = 1500 …(1)
そこで, 溶液のモル濃度 M は, 次のようにして求めることができる。
問1の解説を参照すると, アミロース溶液において, 実験1の操作1でアミロース x = 8.10 [g] を水 100 mL に加えたことから,
その体積 v は, [実験1結果]の密度 1.028 g/cm3 を使用して,
v = (8.10 + 100)/1.028 = 105.16 cm3(またはml)
そこで, アミロースの平均分子量を MW とすると, アミロース溶液のモル濃度 M は,
M = (8.10/MW)/(105.16×10-3) = (0.077025/MW)×103 [mol/L] …(2)
(2)を(1)に代入すると,
(8.31×103)M×300 = 1500
(8.31×103){(0.077025/MW)×103}×300 = 1500
8.31×0.077025×300×106 = 1500MW
よって,
MW = (8.31×0.077025×300×106)/1500 = 0.12801×106 = 1.28×105
問3の答 79.0
アミロースはα-グルコースがα1,4-グリコシド結合によって結合した直鎖多糖であるので, アミロースの 1分子中のマルトースの分子数を n
とすると, アミロースの分子を次のように表してもよい。
アミロースの分子 = (マルトース)n = (α-グルコース)2n
アミロース溶液にα-アミラーゼ溶液を加え完全に加水分解すると, 次のようにアミロース 1 [mol] から n [mol] のマルトースが生じる :
アミロース → (加水分解) → n(マルトース)
ここで, マルトースは, 二糖類で, アミロース分子の直鎖中では, [-(C6H10O5)2-] で表わされるので, アミロースの分子式は
アミロースの分子式 = [-(C6H10O5)2-]n
問2の答の平均分子量 MW = 1.28×105 を用いると, 次式が成立する :
1.28×105 = [-(C6H10O5)2-]n = (12×6 + 1×10 + 16×5)×2n = 324n
よって, 二糖類のマルトースの分子数 n は,
n = (1.28×105)/324 = 39.51
単糖類のα-グルコースの分子数(平均重合度)は,
2n = 2×39.51 = 79.02 = 79.0
問4
(i) の答 塩析
(ii) の答
親水性アミロースは水和水が塩電離の多量イオンで剝離され凝集沈殿する。
問5の答 Cu2O
フェーリング溶液は, A液として結晶硫酸銅(II) CuSO4の水溶液であり, B液として酒石酸カリウムナトリウム KNaC4H4O6 と水酸化ナトリウム NaOH 緩衝水溶液である。使用するときは, まずA液とB液を混合する。そうすると, 一定量の青色の錯イオンのテトラアクア銅(II)イオン
[Cu(H2O)4]2+ が生じる。この混合水溶液に, アルデヒドなどの還元性物質を加えると, 次のように酸化銅(I) Cu2O の赤色沈殿が生じる。したがって, フェーリング溶液は還元性物質の確認に使われる場合がある。
R-CHO + 2[Cu(H2O)4]2+ → R-COOH + Cu2O + 4H+ + 6H2O
問6の答 28.9 %
β-アミラーゼは糖鎖の非還元末端のα1,4-グリコシド結合を加水分解してマルトースを生成する酵素であるので, アミロースは, β-アミラーゼによって,
アミロース分子の両末端の非還元α1,4-グリコシド結合を加水分解して, だんだんマルトースを分離していく。
[実験2]の操作3で, その溶液には加水分解で生じた一定量のマルトースが存在するが, アミロースは完全にマルトースにはなっていないで残っている。そこで,
最初のアミロース分子を [-(C6H10O5)2-]39.5, マルトースが脱離したアミロース分子を [-(C6H10O5)2-]39.5-x とすると, x [mol] のマルトースが下式のように生成される。
[-(C6H10O5)2-]39.5 + xH2O → [-(C6H10O5)2-]39.5-x + x[H-(C6H10O5)2-OH] …(1)
ここで, マルトースの分子 [H-(C6H10O5)2-OH] には, 還元性の官能基 が 1個存在していると考えてよいので, フェーリング溶液中の銅錯イオンと次のように反応して赤色沈殿 Cu2O を生じている(問5解説参照)。
[H-(C6H10O5)2-OH] + 2[Cu(H2O)4]2+ →[H-(C6H10O5)2-OOH] + Cu2O + 4H+ + 6H2O …(2)
上の(1)式と(2)式から, 1mol のアミロースと xmol の水とが反応して, xmol のマルトースが生じる。さらにフェーリング溶液を加えると,
xmol の酸化銅(I)が沈殿することになる。
実験2の操作5の外液を 操作6で20.0 ml 取り, 十分な量のフェーリング液と混ぜた後に加熱したところ, 酸化銅(I)の赤色沈殿が 1.60×10-4 mol 生じたので, 操作1~操作5でのマルトースを含む全溶液は,
100ml(操作1) + 50ml(操作2) + 750ml(操作5) = 900ml
よって, 全溶液に含まれる酸化銅(I)の物質量は,
(1.60×10-4)×(900/20) = 72×10-4 mol
よって, 反応した水の物質量 = 脱離で生成したマルトースの物質量は, 同量で,
反応した水の物質量 = 脱離で生成したマルトースの物質量 = 72×10-4 mol
ここで, 最初のアミロースは 8.10 g 使用しているので, その物質量は
最初のアミロースの物質量 = 8.10/[-(C6H10O5)2-]39.5 = 8.10/12798 = 6.33×10-4 mol
よって, 1mol のアミロースに対して脱離で生成したマルトースの物質量を x mol とすると, 次式が成立する。
(6.33×10-4) : (72×10-4) = 1 : x
よって,
x = 72/6.33 = 11.4
この x をグルコースに換算すると,
2x = 22.8
そこで, 1分子のアミロースに重合しているグルコースの分子数は何%減少していたかを求めると,
百分率% = (22.8/79.0)×100 = 28.9 %