答                                 元の問題へ


問1の答  1.0×10-1 [mol]


 化合物 O(エステル結合を持つ) → (加水分解)

      → 芳香族カルボン酸 P (分子式 C12H14O2) + アルコール Q (分子式 C4H8O)

 よって,

  化合物 O : R1-CO-O-R2 + H2O  →  P : C11H13COOH + Q : C4H7OH  …(1)

 したがって, R1 は C6H4(C5H9), R2 は C4H7 に相当する。そこで, 化合物 O の示性式は

  化合物 O : C6H4(C5H9)-CO-O-C4H7

 また, 化合物 P の中のC5H9, Q の C4H7 には二重結合が, 各々 1個存在する。

I. ある時点で反応を停止させたところ, 加水分解は途中までしか進行しておらず, 化合物 O, P, Q の混合物が 25.0g 得られた。
II. @の下線部において, この混合物に対し白金触媒存在下, 水素を常温常圧で反応させたところ, 標準状態で 4.48L の水素が消費されることがわかった。

 最初の実験に用いた化合物 O の物質量を XO [mol] とする。また, 述IとIIにおいて, 混合物の中に含まれる化合物 O, P, Q の物質量を NO, NP, NQ 分子量を MO, MP, MQ とすると, 次式が成立する:

 (1) において,

  NO = XO - NP  …(2)

  NP = NQ  …(3)

 分子量は,

 
化合物 O : C6H4(C5H9)-CO-O-C4H7 において,

  MO = 12×16 + 1×20 + 16×2 = 244

 化合物 P : C11H13COOH において,

  MP = 12×12 + 1×14 + 16×2 = 190

 化合物 Q : C4H7OH において,

  MQ = 12×4 + 1×8 + 16×1 = 72

 よって, I から,

  244NO + 190NP + 72NQ = 25  …(4)

 II から,

 また, 1mol の化合物 O には, 水素が 2mol 付加するので, NO [mol] の化合物 O に付加する水素の物質量を HO [mol] とすると

  1 : 2 = NO : HO  よって, HO = 2NO [mol]

1mol の化合物 P には, 水素が 1mol 付加するので, NP [mol] の化合物 P に付加する水素の物質量を HP [mol] とすると

  1 : 1 = NP : HP  よって, HP = NP [mol]

1mol の化合物 Q には, 水素が 1mol 付加するので, NQ [mol] の化合物 Q に付加する水素の物質量を HQ [mol] とすると

  1 : 1 = NQ : HQ  よって, HQ = NQ [mol]

 よって,

  HO + HP + HQ = 4.48/22.4 = 0.2 = 2NO + NP + NQ  …(5)

 (3)から(4)と(5)を書き直すと,

  244NO + 262NP = 25  …(4)'

  2NO + 2NP = 0.2  …(5)'


  9.76NO + 10.48NP = 1  …(4)''

  NO + NP = 0.1  …(5)''

 よって, (4)''と(5)''から,

  9.76NO + 10.48(0.1 - NO) = 1
  0.72NO = 0.048

  NO = 0.0667
  NP = 0.1 - 0.067 = 0.0333

 最初の実験に用いた化合物 O の物質量を XO [mol] は (2) から

  XO = NO + NP = 0.0667 + 0.0333 = 0.1000 = 1.0×10-1 [mol]


問2の答  33 %


 問1の解説を参照すると, 最初の実験に用いた化合物 O の物質量を XO [mol] は

  XO = 1.0×10-1 [mol] = 0.10

 混合物の中に含まれる化合物 O の物質量は

  NO = 0.0667

 よって, 加水分解された化合物 O の百分率(%)は

  百分率(%) = {(0.10 - 0.067)/0.10}×100 = 33 %


問3の答  (ア), (エ)


 化合物 P は芳香族カルボン酸で, 示性式は次のように書ける(問1の解説参照) :

  P: C6H4(C5H9)COOH  ただし C5H9 には二重結合が 1個存在する。

 ● ナトリウムフェノキシドは, カルボキシル基をもつ酸 P よりも弱い酸のフェノールから成る塩である。したがって化合物 P は, ナトリウムフェノキシドの水溶液と次のように反応して弱酸のフェノールを遊離させる:

  C6H4(C5H9)COOH + C6H5ONa → C6H4(C5H9)COONa + C6H5OH (フェノール)

 よって, (ア)は正しい。

 ● フェーリング液と反応し, 赤色沈殿する化合物は還元性があるが, 化合物 P はシュウ酸のように分解して二酸化炭素が発生し還元性を示すことはない。また, アルデヒド基は存在しない。よって, (イ)は不適である。

 ●化合物 P と ナトリウムとの反応式は

  2C6H4(C5H9)COOH + 2Na → 2C6H4(C5H9)COONa + H2

 上式より, 完全反応で 1mol の P から 1/2mol の水素が発生するので, (ウ)は不適である。

 ●化合物 P と化合物 R の分子中の炭素原子数は同じであるから, (エ)において, 発生する二酸化炭素の物質量は同じになる。よって, (エ)は正しい。

 ●化合物 P は, 塩酸などの強い無機酸と比べると, 弱い有機酸である。したがって P のナトリウム塩は, 弱い有機酸 P と強い無機塩基の NaOH と の中和塩である。その塩は加水分解して無機塩基の NaOH が生じ, 塩基性(アルカリ性)となる。よって, (オ)は不適である。


問4の答  [構造式]
 
          (image456)

 [示性式]

   P : CH2=CH-C(p-C6H4COOH)H-CH2-CH3

   Q : CH2(OH)-C(CH3)=CH2


 P は芳香族カルボン酸で炭素鎖に 1つの二重結合をもつので, その示性式を次のようにすることができる。

  C6H4(C5H9)COOH

 C6H4(C5H9)COOH の中のC5H9 には, 二重結合が 1つ存在する。そこで, まず C5H10 の異性体を考える:

  CH2=CH-CH2-CH2-CH3 …(i)
  CH2=C(CH3)-CH2-CH3 …(ii)
  CH2=CH-C(CH3)H-CH3 …(iii)
  CH3-CH=CH-CH2-CH3 …(iV)
  CH3-C(CH3)=CH-CH3 …(v)

 次に, (i)〜(v) の水素原子 1個を除いて, そこにカルボキシル基の付いたベンゼン環(カルボキシル基の位置はオルトは不安定なのでメタ, パラの2種類の中のパラ) R' を付けて行き, 不斉炭素原子(*の付いたもの)を 1個持つようにすると,

 (i)において,
  CH2=CH-C*R'H-CH2-CH3, CH2=CH-CH2-C*R'H-CH3

 (ii)において,
  CH2=C(CH3)-C*R'H-CH3

 (iii)はなし,

 (iv)において,
  CH3-CH=CH-C*R'H-CH3

 (v)はなし。

 水素の反応により生成するカルボン酸 R は不斉炭素原子を持たないことから, (i)において次の示性式が適合する :

  CH2=CH-C*R'H-CH2-CH3

  水素の反応 : CH2=CH-C*R'H-CH2-CH3 + H2 → CH3-CH2-CR'H-CH2-CH3(不斉炭素なし)

 ただし, 水素付加で生じたカルボン酸 R は不斉炭素原子を持たないことからR'中のカルボキシル基は安定なパラの位置となる。よって, Pの示性式は次のようになる :

  P : CH2=CH-C(p-C6H4COOH)H-CH2-CH3


 Q は二重結合を 1つ含んだ炭素鎖を持ち, 幾何異性体は存在しない。水素の反応により生成するアルコール S は分岐型のアルキル基を有する構造であり, 化合物 S をおだやかに酸化して生じる化合物 T の水溶液にアンモニア性硝酸銀水溶液を加えると銀が析出する。

 そこで, Qは炭化水素基 R2 の C4H7 に 1つの二重結合を持つので, まず C4H8 の異性体を考える:

  CH2=CH-CH2-CH3 …(i)

  CH3-CH=CH-CH3 …(ii)

  CH3-C(CH3)=CH2 …(iii)

 次に C4H8 の中の 1個の水素原子を除いてヒドロキシル OH を付けると,

 (i)において,
  CH(OH)=CH-CH2-CH3, CH2=C(OH)-CH2-CH3, CH2=CH-CH(OH)-CH3, CH2=CH-CH2-CH2OH

 (ii)において,
  CH2(OH)-CH=CH-CH3, CH3-C(OH)=CH-CH3

 (iii)において,
  CH2(OH)-C(CH3)=CH2, CH3-C(CH3)=CH(OH)

 幾何異性体は存在しないので,

 (i)において,
  CH2=C(OH)-CH2-CH3

 (ii)はなし

 (iii)において,
  CH2(OH)-C(CH3)=CH2

 水素付加で生成するアルコール S は分岐型のアルキル基を有する構造であるので, それに適合するものは,

 (i)はなし

 (ii)はなし

 (iii)において,
  CH2(OH)-C(CH3)=CH2

 水素付加  Q: CH2(OH)-C(CH3)=CH2 → S: CH2(OH)-CH(CH3)2

 化合物 S をおだやかに酸化すると,

  S: CH2(OH)-CH(CH3)2  → T: CHO-CH(CH3)2

 生じた化合物 T はアルデヒド基が存在するので, 還元性があり, アンモニア性硝酸銀水溶液を加えると銀が析出する。

 以上から, Q の示性式は

  Q: CH2(OH)-C(CH3)=CH2