答                                 元の問題へ


問1の答  2つ    ( o-CH3-C6H4-CH=CH2 と m-CH3-C6H4-CH=CH2 )


(1) 芳香族炭化水素 A, B, C, D, E は, 分子式が C9H10 で環状構造を1つだけ持ち, 水素 1mol 付加で化合物 F, G, H (分子式:C9H12) が生成されるので,

 化合物 A, B, C, D, E (分子式 C9H10) は次のようにベンゼン環と二重結合が存在するように書き換えられる:

  (W-C6H4)-CX=CY-Z  ただし W, X, Y, Z は H基 または CH3基  …(I)

 また, 化合物 F, G, H (分子式 C9H12) は, (I)へ水素 1mol 付加で,

  (W-C6H4)-CH(X)-CH(Y)-Z  ただし W, X, Y, Z は H基 または CH3基 …(II)

(2) 化合物 A, B, C から同一の化合物 F が生成され, 化合物 B と C は幾何異性体の関係にあることから, B と C および F の分子式は, (I) と (II) から, W = X = Y = H, および Z = CH3 として, 次のように書き換えられる:

  C6H5-CH=CH-CH3  … B, C(幾何異性体の関係)

  C6H5-CH2-CH2-CH3  …F

 そこで, A の分子式は次のようになり, 水素付加で上の式 F になる。

  C6H5-CH2-CH=CH2  … A

(3) 化合物 G は化合物 D から生じ, フェノールの工業的生産に利用される化合物として知られている。

  化合物 D → 化合物 G :分子式 C6H10-XC3H2+X

  化合物 G(フェノールの工業的原料, クメンまたはイソプロピルベンゼン) : C6H5-CH(CH3)2

        → フェノール C6H5OH

 よって化合物 D の分子式 C9H10 は次のように書き換えられる(水素付加でGになる):

  C6H5-C(CH3)=CH2  … D

(4) 化合物 E (分子式 C9H10) は, 上述の(2)の(I)から,

  (W-C6H4)-CX=C(Y)(Z)  ただし W, X, Y, Z は H基 または CH3

 適切な条件下において酸化すると化合物 I とギ酸に分解される:

  (W-C6H4)-CX=C(Y)(Z) → (酸化) → (W-C6H4)-CX=O(化合物I) + HCOOH(ギ酸)

 よって,

  Y = Z = H

 さらに化合物 I は触媒で空気酸化すると PET樹脂の原料となるジカルボン酸 J に変換される:

  (W-C6H4)-CX=O → (空気酸化) → (p-COOH)-C6H4-(p-COOH) (化合物 PETの原料)

 よって,

  W = CH3,  X = H

 よって化合物 E の分子式は次のように書き換えられる:

  p-CH3-C6H4-CH=CH2  …E

 「化合物 J は, 分子式 C10H14O2 の化合物 K に水酸化ナトリウムとヨウ素を加えて温めた(ヨードホルム反応)のち十分量の塩酸を加えても合成することができる」ことより,

  K : p-CH3-CH(OH)-C6H4-CH(OH)-CH3 → (ヨードホルム反応)

   → (p-COONa)-C6H4-(COONa) + 2CHI3 → (塩酸) → J : (p-COOH)-C6H4-(COOH)

 以上より, 分子式 C9H10 の化合物 A,B,C,D,E は, 次のように書き換えられる。

  A : C6H5-CH2-CH=CH2  B, C(シス, トランスの幾何異性体) : C6H5-CH=CH-CH3

  D : C6H5-C(CH3)=CH2   E : p-CH3-C6H4-CH=CH2

(5) 化合物 A,B,C,D,E 以外に, 分子式が C9H10 で芳香族の環状構造を 1つだけ持つ化合物は, E を参照して, 次のようになる:

  o-CH3-C6H4-CH=CH2  m-CH3-C6H4-CH=CH2


問2の答   G : クメン (またはイソプロピルベンゼン)  M : 無水フタル酸


(1) 化合物 G は, 問1解答解説(4)を参照して,

  G の名称は…クメン

(2) 化合物 J (問1の答(5)解説参照) (HOOC)-C6H4(p-COOH) の異性体の 1つである化合物 L を次のようにすると,

  (HOOC)-C6H4(o-COOH)  …L

そこで, L を加熱したところ, 水分子がとれて分子式 C8H4O3 の化合物 M が得られた。

  L(フタル酸) : (HOOC)-C6H4(o-COOH) → (脱水) → M(無水フタル酸) : C6H4(CO)2O

 化合物 M にアニリンを作用させると, 分子式 C14H11NO3 の化合物 N が生成する:

  M : C6H4(CO)2O + C6H5NH2 (アニリン) → N : HOOC-C6H4-CO-NH-C6H5


問3の答  化合物 A, E, K, N の構造式 下図参照
(image454)


 問1と問2の答を参照すると, 化合物 A, E, K, N の構造式は次のようになる:

  
A : C6H5-CH2-CH=CH2  E : p-CH3-C6H4-CH=CH2  K : p-CH3-CH(OH)-C6H4-CH(OH)-CH3

  N :o-HOOC-C6H4-CO-NH-C6H5