5章B 類題3-2(101222) TOP-B
[問題] 次の文章を読んで, 問1〜3に答えなさい。
一置換ベンゼンの置換反応は, ベンゼン環上の置換基によって影響を受ける。置換基の種類によって, 反応がオルト位およびパラ位で起こりやすい場合と,
メタ位で起こりやい場合がある。また, 置換基の種類によって, 反応が無置換基ベンゼンに比べて促進される場合と抑制される場合とがある。ベンゼン環上の置換基が反応に与える影響は,
置換基効果と呼ばれる。
ある反応条件下, ベンゼンとトルエンに塩素分子を作用させたところ, トルエンはベンゼンよりも 335倍速く反応した。トルエンからは3つの構造異性体の混合物が得られる(図I参照)。
その組成はo-クロロトルエン 59.7%, m-クロロトルエン 0.5%, p-クロロトルエン 39.8% であった。
この実験結果を反応速度の観点から考えてみよう。ベンゼンには 6つの等価な反応点があり, 1ヶ所あたりの反応速度定数を k とすると, 分子全体としての反応速度定数は
6k と表すことができる。一方, トルエンの反応速度定数は, 計 5つの反応点の反応速度定数の総和として表される。すなわち, メチル基から見てオルト位,
メタ位およびパラ位について, それぞれ 1ヶ所あたりの反応速度定数を kO, kM, kP とすると, トルエン分子全体としての反応速度定数は,
( ア ) + ( イ ) + kP
と表すことができる。よって, トルエンに 1個の塩素原子が導入される反応(一塩素化反応)における構造異性体の組成は, トルエンのオルト位, メタ位およびパラ位の反応速度定数である(
ア ), ( イ ), kP をそれぞれ分子全体の反応速度定数で割ることによって, 次のように表される。
オルト体の組成:0.597 = ( ア )/{( ア ) + ( イ ) + kP}
メタ体の組成:0.005 = ( イ )/{( ア ) + ( イ ) + kP}
パラ体の組成:0.398 = kP/{( ア ) + ( イ ) + kP}
トルエンがベンゼンよりも 335倍速く反応したことを考慮すると, トルエン分子全体の反応速度定数は, k を用いても表すことができ, 2010k
に等しい。したがって, kO/k, kM/k, kP/k の値は, それぞれ 600, 5, ( ウ )と計算される。これらの値は, メチル基の置換基効果によって, トルエンの反応性がベンゼンよりも高く, 特にオルト位とパラ位で反応が起こりやすいことを示している。
問1. ( ア )と( イ )には式, ( ウ )には整数値を記入しなさい。
答
問2. 2つの置換基から影響を考えることにより, 二置換ベンゼンの反応を予測することができる。たとえば, m-キシレンの 4位は, 3位のメチル基から見るとオルト位であり,
また 1位のメチル基からはパラ位である。
よって, m-キシレンの 4位の反応速度定数を k4 とすると, k4/k の値は, kO/k と kP/k の積として近似できることがわかっている。
m-キシレンの一塩素化反応では, 3つの構造異性体 J, K, L の混合物が得られると予想される(図II参照)。置換基効果から予想される生成量が多い順に化合物 J, K, L を並べなさい。なお, 化合物の記号 J, K, L と不等号(>)を用いて順序を記しなさい。
答
問3. m-キシレンの一塩素化反応は, ベンゼンの場合に比べて何倍速く進行すると予想されますか。有効数字2桁で答えなさい。計算過程も記述しなさい。
答
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