5章B 類題2-1(101201)               TOP-B



[問題] 次の文章を読んで, 問1〜4に答えなさい。問題文中のLはリットルを表す。気体は理想気体として振る舞うとし, 溶媒中の物質Aは常に飽和状態にあるとする。物質Aの溶解度はヘンリーの法則に従いその他の溶解物質に影響されない。また, 溶媒体積は圧力によって変化しないものとする。原子量は H=1.00, C=12.0 とし, 絶対温度は-273℃, 気体定数Rは 0.082 atm・L/(mol・K)である。ここで, atm は圧力の単位を表す。数値で答える必要がある箇所では有効数字2桁で答えること。

 図1の化学構造をもつ気体物質(プロピレン)に関する実験1〜3を行い, 気体の圧力と溶液の浸透圧に関する測定を行った。浸透圧Πは溶液中の半透膜を透過しない溶質成分のモル濃度 m を用いて次式で表される。

   Π= mRT

Tは絶対温度を示す。全ての実験と測定は 27℃で行なわれた。
             (image336)
[実験1]
 (1) 体積 1.0 L の空の容器に物質Aを圧力が10 atm に達するまで加えた。
 (2) 次に, 図2に示すように, この容器に 300 ml の溶媒B(蒸気圧は無視できるものとする)を入れたところ, 溶媒の体積は変化せず, 容器内の圧力は 8.0 atm になった。

問1. 実験1における溶媒B中の物質Aのモル濃度(mol/L)を求めなさい。

                            

[実験2]
 (1) 実験1と同様に, 体積 1.0 L の空の容器に物質Aを圧力が 10 atm に達するまで加えた。
 (2) この容器に, 溶媒B中に物質Cを少量含む溶液を 300 ml 注入し, よく攪拌したところ化学反応が起こり, ポリプロピレンのみが生じた。溶媒中にポリプロピレンは完全に溶解した。
 (3) 反応開始より一定時間おきに一定量の溶液を抜き出し, ポリプロピレンのみを透過しない半透膜を用いて浸透圧を測定したところ, 一定であった。
 (4) 反応開始より6時間後までの, 容器内の圧力の時間変化は図3のようになった。

問2. 実験2において反応開始より 1.0 時間後に生成しているポリプロピレンは何g ですか。計算過程も含めて記しなさい。ただし, 物質Cの質量および体積, ポリプロピレンの体積, 抜き出した溶液の量は無視できるものとする。なお, 図3に示すように, 反応開始から 1.0 時間後の容器内の圧力は 6.0 atm である。

                            

問3. 実験2において, 反応容器中の気体および溶液中に含まれる物質Aの総物質量は時間とともに減少する。容器 1.0 L あたりの物質Aの総物質量の減少速度を v [mol/(h・L)] で表すと, 反応は溶液中で起こるため, v は溶媒B中の物質Aのモル濃度 [A] に比例する。つまり, 次式で表される。

   v = k[A]

k (h-1) は定数である。反応開始直後の v を反応開始から 1.0 時間後までの物質Aの減少量より計算し, その値を用いて k (h-1) を求めなさい。その際, [A] として反応開始時の値を用いなさい。

                            

[実験3]
 (1) 体積 10 L の空の容器に, 溶媒B中に物質Cを含む溶液を 3.0 L 注入した。物質Cの濃度は実験2と同じとした。容器内をよく攪拌しながら物質Aを圧力が常に 10 atm を保つよう, 10時間注入し続けた。
 (2) 反応開始より一定時間おきに一定量の溶液を抜き出し, ポリプロピレンのみを透過しない半透膜を用いて浸透圧を測定したところ 0.082 atm で一定であった。

問4. 実験3において, 反応開始から 10 時間後に生成したポリプロピレンについて次の (i), (ii) の問いに答えなさい。ただし, 物質Cの質量および体積, ポリプロピレンの体積, 抜き出した溶液の量は無視できるものとする。

 (i) 生成したポリプロピレンは何g ですか。問3で求めた k の値を用いて答えなさい。

                            

 (ii) 生成したポリプロピレンの分子量を求めなさい。ただし, 生成した分子は全て等しい分子量をもつとする。