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問1の答 0.60 (mol/L)
[実験1](1)において, 理想気体と見なした物質Aに関するデータを気体の状態方程式 PV = nRT にあてはめると, 容器内の物質Aの物質量
n は
n = PV/(RT) = 10×1/{0.082×(273 + 27)} = 0.4065 mol
一方, [実験1](2)において, 300 ml の溶媒Bを容器へ入れると, 容器内の圧力が 8.0 atm になったことから, 物質Aの気体の物質量
n' は
n' = P'V'/(RT) = 8×(1.0 - 0.3)/(0.082×300) = 0.2276 mol
したがって, 溶媒B中の物質Aのモル濃度(mol/L) M は
M = (0.4065 - 0.2276)/0.3 ≒ 0.60 (mol/L)
問2の答 4.3 (g)
反応開始から 1.0 時間後の容器内の圧力は 6.0 atm であるので, 気体状プロピレンの物質量 nG は, 気体の状態方程式から,
nG6 = PV/(RT) = 6×0.7/(0.082×300) = 0.1707 mol
nT ([実験2](1)において, 容器内の総物質量Aの物質量:0.4065 mol, 問1答解説参照) と nG から, 溶媒Bに溶解した物質Aの物質量 nS(1.0 時間後の300 ml 溶媒Bに溶解した無変化のプロピレンとポリプロピレン変換のプロピレンを合せたもの)は,
nS = nT - nG6 = 0.4065 - 0.1707 = 0.2358 mol
nSの中で, 付加反応しないでそのままの状態で溶解している無変化のプロピレンの物質量 n は, 問1答解説を参照し, nT, nG8(8atmの気体物質Aの物質量:0.2276 mol)およびヘンリーの法則を用いて,
n = (nT - nG8)×[6(atm)/8(atm)] = (0.4065 - 0.2276)×(6/8) = 0.1789×(6/8) = 0.1342 mol
よって, ポリプロピレンになったプロピレンの物質量 nP は,
nP = nS - n = 0.2358 - 0.1342 = 0.1016 mol
その質量 W (g) は, 分子量 C3H6 = 12×3 + 6 = 42(1mol:42 g)を使用して,
W = 42nP = 42×0.1016 = 4.2672 ≒ 4.3 g
反応は, 次の反応式のように, プロピレンの付加反応によってポリプロピレンが生成される。
nCH2=CH(CH3) → [-CH2-CH(CH3)-]n
[実験2](1)から, 容器内の総プロピレンの物質量は0.4065 mol である(問1答解説参照)。
[実験2](2)において, 上述の付加反応が, 溶媒Bに含まれる触媒の物質Cによって開始される。
[実験2](3)の浸透圧において, 生成されるポリプロピレンの濃度はほとんど浸透圧の変化に影響しない。 したがって, ほぼ浸透圧は一定値を示す。このことは,
ポリプロピレンの分子数はほとんど変化しないがその分子量は変化していることを意味する。
問3の答 0.17 (h-1)
反応容器 1L 中の気体および溶液中に含まれる物質A(プロピレン)の物質量は時間とともに減少する。その圧力減少変化は, ポリプロピレンの高分子生成変化即ち生成速度
v に対応している。そこで, 問2答解説を参照して, 反応時間 t(1h)での高分子(ポリプロピレン)変換への物質Aの物質量を Npo とすると,
v = Npo/t = 0.1016/1 = 0.102 mol/(L・h)
ここで, v = k[A]において, [A] として反応開始時の溶媒B中のAのモル濃度値を用いると,
0.102 = k×0.60
よって,
k = 0.102/0.60 = 0.17 (h-1)
[詳解]
(1) 気体 10atm の物質A(プロピレン)の総物質量
N10atm = 0.4065 mol
(2) 気体 8atm(0.2276mol)での溶媒B溶解の物質Aの物質量 Ns8
Ns8 = N10atm - N8atm = 0.4065 - 0.2276 = 0.1789 mol
(3) 気体 6atmでの溶媒B溶解の物質Aの物質量 Ns6
Ns6 = 0.1789[6(atm)/8(atm)] = 0.1342 mol
(4) 反応開始 1時間後の容器内気体圧力 6.0atm(0.1707mol)での溶媒B溶解の物質Aの物質量 Ns1h
Ns1h = N10atm - N6atm = 0.4065 - 0.1707 = 0.2358 mol
(5) 反応開始 1時間後の高分子(ポリプロピレン)へ変換した物質Aの物質量
Npo = Ns1h - Ns6 = 0.2358 - 0.1342 = 0.1016 mol
図3を参照して, 0〜1時間で, 反応容器 1L 中の気体および溶液中に含まれる物質A(プロピレン)の物質量は時間とともに減少する。その圧力減少変化は,
ポリプロピレンの高分子生成変化即ち生成速度 v に対応している。
そこで, 容器 1.0 L あたりの物質Aの総物質量の減少速度 v [mol/(h・L)] は, 0〜1時間では直線的として, 上述の(5)のNpoを使用すると,
v = Npo/t = 0.1016/1 = 0.102 mol/(L・h)
ここで, v = k[A]において, [A] として反応開始時の溶媒B中のAのモル濃度値を用いると,
0.102 = k×0.60
よって,
k = 0.102/0.60 = 0.17 (h-1)
問4
(1)の答 5.3×102 (g)
(1) 問3[詳解]を参照して, 容器 1Lにおいて, 10atm の物質Aの気体が, 溶媒Bを 0.3L入れると, 物質Aの気体の圧力は 8atmになった。そのときの溶媒B溶解の物質Aの物質量は, 問3[詳解](2)から, 0.1789 mol である。
したがって,
いま, 容器を 10L にして, 10atm の物質Aの気体が, 溶媒B を 3L入れると, その圧力は 8atmになったとすると, そのときの溶媒B溶解の物質Aの物質量は,
0.1789×[3(L)/(0.3L)] = 1.789 mol となる。
(2) 容器を 10L にして, (?)atm の物質Aの気体が, 溶媒B を 3L入れると, その圧力は 10atmになったとすると, そのときの溶媒B溶解の物質Aの物質量 NS は, (1)の 0.1789 mol 及びヘンリーの法則を用いて,
NS = 1.789×[10(atm)/8(atm)] = 2.236 mol
よって, 反応時間 0〜10 (h) でのモル濃度 [A] は,
[A] = NS/3 = 2.236/3 = 0.7453 mol/L
(3) v = k[A] において,
v = k[A] = 0.17×0.7453 = 0.1267 mol/(L・h)
(4) v 値を用いて, 容器 10L, 10時間での気体物質Aの減少物質量即ち高分子生成への気体物質Aの物質量 NP は,
NP = 0.1267×10×10 = 0.1267×102 mol
その質量 W g は, A(プロピレン)の分子量 42 を用いて,
W = 42×0.1267×102 = 5.32×102 g
(2)の答 5.3×104
ポリプロピレンの分子量を M とすると, 問4(i)解を参照して, そのモル濃度 m は,
m = (W/3)/M = (5.32×102/3)/M = 1.773×102/M
一方, 問題の本文中で, 浸透圧Πは溶液中の半透膜を透過しない溶質成分のモル濃度 m を用いて次式で表される。
Π= mRT
よって,
0.082 = (1.773×102/M)×0.082×300
M = (1.773×102×0.082×300)/0.082 = 531.9×102 = 5.3×104