4章B 類題4-2(100121)                 TOP-B


[問題] 次の文を読んで下の各問いに答えなさい。ただし, 原子量はH:1.00, C:12.0, O:16.0, 気体の1 [mol]の体積は標準状態で22.4 Lとする。問題文中の%は質量パーセント濃度を表す。

 グリセリンに脂肪酸と糖が脱水縮合反応して結合した化合物をグリセロ糖脂質とよぶ。例えば図1に示す化合物は, ある微生物に含まれるグリセロ糖脂質のひとつである。
 別の微生物から単離された化合物Bは, グリセリンの隣り合う炭素原子に結合した2つのヒドロキシル基がそれぞれ脂肪酸とエステル結合を形成し, 残る1つのヒドロキシル基が二糖類と脱水縮合したグリセロ糖脂質である。
 この化合物Bについて, 以下の示す実験1〜実験4を行った。なお単糖を構成する炭素原子の位置番号は図2のとおりとする。また, 糖の炭素1上のヒドロキシル基が他の分子と脱水縮合した結合をグリコシド結合という。以下の実験における反応は全て完全に進行し, 操作での損失はないものとする。

        (image279)

[実験1] ある化合物Bを0.200 mol/L水酸化カリウム溶液でけん化したところ10.0 mLを要した。けん化後の反応液を酸性にしたところ1種類の脂肪酸C 0.508gと化合物Dが生成した。ただし, このけん化処理では化合物Bのエステル結合以外は切断されなかった。

[実験2] 実験1に用いたのと同じ量の化合物Bに金属触媒の存在下で水素H2を付加させたところ, 標準状態で44.8 mLの水素H2が消費された。

[実験3] 実験1で得られた化合物Dは, グリセリンと二糖類がグリコシド結合でつながったものである。この化合物Dに, β-グルコースの炭素1と他の化合物の間のグリコシド結合を加水分解する酵素β-グルコシダーゼを作用させると, グリセリンとグルコースを生成する。一方, α-グルコースの炭素1と他の化合物の間のグリコシド結合を加水分解する酵素α-グルコシダーゼを作用させても, 化合物Dは分解されない。

[実験4] 糖をヨウ化メチルCH3Iと反応させると, そのヒドロキシル基は全てメチル化されメトキシ基(CH3O-)となる。化合物Dをヨウ化メチルと反応させ, ヒドロキシル基が全てメトキシ基に置換された化合物Eを得た。化合物Eのグリコシド結合を希硫酸によって加水分解した反応生成物には, グルコースの炭素2, 3, 4, 6上のヒドロキシル基がメトキシ基に置換されたものと, グルコースの炭素2, 3, 4上のヒドロキシル基がメトキシ基に置換されたものが, 物質量比 1:1で含まれていた。

問1. 脂肪酸Cの示性式を記しなさい。

                    

問2. 化合物Dの構造を図1にならって記しなさい。ただし, 化合物Dの光学異性体については考慮しなくてよい。また, 二糖類を構成する単糖単位はいずれも六員環構造をとっているものとする。炭素原子の位置番号は記入しなくてよい。