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問1の答 C15H29COOH
本文中において, Bはグリセリンの隣り合う炭素原子に結合した2つのヒドロキシル基がそれぞれ同種の脂肪酸とエステル結合を形成し, 残る1つのヒドロキシル基が二糖類と脱水縮合したグリセロ糖脂質である。そこで,
いまBの示性式を次のようにする。
C3H5(OCOR)2-O-C12H21O10 …@
[実験1]において, 0.200 mol/L水酸化カリウム溶液でけん化すると, 化合物Bのエステル結合以外は切断されなかったことから, 次式が成立する。
C3H5(OCOR)2-O-C12H21O10 + 2KOH → C3H5(OH)2-O-C12H21O10 + 2RCOOK …A
上の反応Aで要した水酸化カリウムの物質量は
0.2×(10/1000) = 0.002 [mol]
この値 0.002 [mol] は, A式から, 生成される脂肪酸Cのカリウム塩の物質量と同値となる。また, けん化後の反応液を酸性にして中和反応でできる脂肪酸C
0.508gの物質量も同値となる。よって, 脂肪酸Cの分子量MCは
MC = 0.508/0.002 = 254
[実験2]において, 実験1に用いたのと同じ量の化合物Bに水素H2を付加させたところ, 標準状態で44.8 mLの水素H2が消費されたことから, その水素の物質量は
0.0448/22.4 = 0.002 [mol]
そこで, 脂肪酸C 0.508gに水素が0.002 [mol]付加することになる。脂肪酸C 254g(1[mol]に相当)では
0.508 : 0.002 = 254 : x
x = 0.002×254/0.508 = 1 [mol]
よって, 脂肪酸Cの分子式中のR基に二重結合が1つ存在していることになるので, R基中の炭素原子数をnとすれば, Cの分子式は次式のようになる。
CnH2n-1COOH
Cの分子量は254であるので,
12(n + 1) + 16×2 + 2n = 254
n = 15
よって, Cの示性式は
C15H29COOH
問2の答
(image280)
●問1の解答から, Dの組成式は次のように書ける。
C3H5(OH)2-O-C6H10O4-O-C6H11O5 …B
●[実験3]において, Dは酵素β-グルコシダーゼ(β-グルコースの炭素1と他の化合物のグリコシド結合を加水分解)を作用させると, グリセリンとグルコースを生成する。したがって,
B式中の2つのグリコシド結合-O-では, そのグルコースはβ形を意味する。
●[実験4]において, D中の糖のOH基を全てメトキシ基に置換した化合物Eは, そのグリコシド結合の加水分解で, グルコースの炭素2, 3, 4, 6上のヒドロキシル基がメトキシ基に置換されたものと, グルコースの炭素2, 3, 4上のヒドロキシル基がメトキシ基に置換されたものが, 物質量比 1:1で含まれていた。
このことから, グリセリンと結合している単糖部分の炭素位置番号6に存在するOH基がもう1つの単糖部分とグリコシド結合をしていることになる。以上より化合物Dの分子の構造は上の答のようになる。