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問1の答
タンパク質の変性は, タンパク質分子内外に存在する水素結合が, 熱や重金属イオンなどによって切断され, タンパク質分子の高次構造が崩れ, タンパク質の機能性は消滅することに相当する。その結果として,
たんぱく質分子が凝集して沈澱する。
それに対して, 塩析では, タンパク質分子表面の電荷が塩によって中和され, タンパク質分子間の電気的反発が弱まり, タンパク質分子が凝集して沈澱することで,
タンパク質分子内の高次構造は崩れていないので, タンパク質の機能性は保持される。
ヒント
タンパク質分子の構造図(image102)
a…分子内の2次構造, b…分子内の3次構造, c…分子の1次構造, d…分子間2次構造
(1章 A国立大(医・工)入試 ○類題4-2参照)
問2の答
半透膜のセロハンは微小な穴が存在する。その穴は, 一般に, イオンや分子などの小さい粒子を通すが, たんぱく質分子などの大きな粒子(高分子など)は通さない。
このような半透膜のセロハンの袋に, 硫酸アンモニウムが残存しているたんぱく質水溶液を入れ, pH7.0の緩衝液に浸すと, 硫酸アンモニウムが電離してできる硫酸イオンとアンモニウムイオンは袋内溶液から外部溶液へ拡散され,
外部のpH7.0の緩衝液に含まれる水素イオンと水酸化物イオンは袋内溶液に入り込む。
この透析を数回一定時間繰り返すと, 袋内溶液のpH値はほぼ7.0になる。
問3の答 (エ)
[説明]
(1) 等電点5.0のAは, 水溶液中で双生イオンとして存在しており, 分子の側鎖の負電荷の官能基-COO-と正電荷の官能基-NH3+は同数存在している。
pH3.0の緩衝液で透析したタンパク質水溶液では, Aの分子の側鎖の負電荷の官能基-COO-に正電荷の水素イオンH+が結合してカルボキシル基COOHを形成して, A分子の正味の電荷は正になる。
また, 等電点7.0のB(問2の答参照)は, 同様に, その分子の側鎖の負電荷の官能基に正電荷の水素イオンが結合し, B分子の正味の電荷は正になる。
(2) 注射器の筒中の樹脂は, 正味の電荷が負のタンパク質と結合するが, 正味の電荷が正のタンパク質とは結合しない。
したがって, 樹脂をつめた注射器の筒へpH3.0の緩衝液で透析したタンパク質水溶液を流し込むと, タンパク質分子A, Bは, (1)より正味で正電荷に帯電しており,
(2)より樹脂とは結合しないことから, (エ)のA, Bとも樹脂を通り抜けることになる。