元の問題へ


問1の答       下図の(2)


 α型の単糖X(α−グルコース)の構造は問題文中図1に示されている。この図1で[*]をつけた炭素原子を1位として, その隣の炭素原子から順に 2位, 3位, 4位, 5位, 6位と呼ぶ。

 単糖X(α−グルコース)4位の炭素原子に結合したヒドロキシ基の方向が逆になった異性体はα−ガラクトース(下図(1)に相当)とよばれ, さらに1位の炭素原子に結合したヒドロキシ基が逆になった異性体はβ−ガラクトース(下図(2)に相当)とよばれる。


      (image422)


問2

 (1)の答A, B, D

 (2)の答分子構造中にα型またはβ型−グルコースの1位の炭素原子に結合しているヒドロキシ基が, 脱水縮合に関与しないで残っていると, 水溶液で分子の鎖状構造にアルデヒド基-CHOが存在する。そこで, 還元性が出てくる。


●フェーリング液を還元する二糖の分子は, 水溶液中でその鎖構造にアルデヒド基-CHOが存在する。

●二糖のA, B, C(分子式:C12H22O11)は二つの同じα型単糖 X (α-グルコース:図1参照)が脱水縮合したものである。このA, B, Cの分子構造の中で, Xの1位の炭素原子に結合しているヒドロキシ基が脱水縮合に関与しないで残っていると, 水溶液においてその鎖状構造にアルデヒド基-CHOが存在する。そこで, 還元性が出てくる。

  糖 A は, 枝分かれのない直鎖状のデンプンに相当するアミロース(数百〜千のXが炭素原子1位−4位が関与して脱水縮合した直鎖状高分子)が, 触媒としての酵素のアミラーゼによって加水分解され生成されたもので, いわゆる, マルトース(麦芽糖)を意味する。

  アミロース(α単糖 X :α-グルコースの直鎖状高分子) → (酵素触媒:アミラーゼ)

  → デキストリン → マルトース(二糖:A) → α-グルコース(α型単糖X:ブドウ糖)

 以上より, 二糖のAのマルトースには, 分子構造の中で, Xの1位の炭素原子のヒドロキシ基が脱水縮合に関与しないで残っており, 水溶液においてその鎖状構造にアルデヒド基-CHOが存在する。よって,

 
A …還元性が出てくる。

 なお, Xの炭素原子1-4位関与の結合以外に, 1-6位関与の結合による枝分かれのデンプンは, アミロペクチンとよばれている。

●二糖 B は, 枝分かれのない直鎖状のセルロース(多数のβ-グルコースが炭素原子1位−4位関与で脱水縮合した直鎖状高分子)が, 触媒としての酵素のセルラーゼによって加水分解され生成されたものである。

  セルロース(β-グルコースの直鎖状高分子) → (酵素触媒:セルラーゼ) → セロビオース

   → 二糖B → β-グルコース

 以上より, 二糖のBは, 分子構造の中で, β−グルコースの1位の炭素原子のヒドロキシ基が脱水縮合に関与しないで残っており, 水溶液においてその鎖状構造にアルデヒド基-CHOが存在する。よって,

 B …還元性が出てくる。

●二糖 Cは, 環状構造となった二つのα型の単糖 X の1位の炭素原子に結合したヒドロキシ基どうしが脱水縮合したものであり, トレハロースと呼ばれる。このトレハロースの分子構造の中で, Xの1位の炭素原子のヒドロキシ基が脱水縮合に関与しているので, アルデヒド基-CHOが生じない。よって,

 C …還元性なし。

●二糖 Dは, β型のガラクトース(問1答参照)の1位の炭素原子に結合したヒドロキシ基と, 単糖 X(α−グルコース) の4位の炭素原子に結合したヒドロキシ基が脱水縮合したものであり, ラクト―ス(乳糖)と呼ばれ乳中に含まれている。
 このラクト―スの分子構造の中で, 単糖 X(α−グルコース) の1位の炭素原子のヒドロキシ基が脱水縮合に関与しないで残っており, 水溶液において鎖状構造にアルデヒド基-CHOが存在する。よって,

 D …還元性が出てくる。

●二糖 Eは, 砂糖の主成分であり, α型の単糖 X と果糖(β−フルクトースのフラノース型)が図2のように脱水縮合したものである。この分子構造の中で, Xの1位の炭素原子のヒドロキシ基が脱水縮合に関与しているので, アルデヒド基-CHOが生じない。よって,

 E …還元性なし。


問3の答       75%


●アミロースの分子式を (C6H10O5)n とすると, 酵素反応により単糖Xのα-グルコース(分子式:C6H12O6)まで完全に加水分解する反応式は次のようになる。

   (C6H10O5)n + nH2O → nC6H12O6   …(0)

 また, 単糖 X を酵母によりアルコール発酵させると, 次式になる。

  C6H12O6 → 2C2H5OH + 2CO2  …(1)

●問題文の下線部@において, 得られた単糖 X の発酵による反応液全体の重量の 66gの減少は, 発生した二酸化炭素ガスの重量と一致する。よって, その二酸化炭素の物質量 MC は, 二酸化炭素の分子量 44 を使用して,

  MC = 66/44 = 1.5 [mol]

 よって, (1)式から, 発酵によって使用された単糖Xのα-グルコースの重量 WG1 は, α-グルコースの分子量 180 を使用して,

  WG1 = 180×(1.5/2) = 135 [g]

 一方, アミロース 162g に反応する水の重量 WW は, (0)式を参照して,

  WW = 18n = 18×(162/162) = 18 [g]

 よって, 生成された単糖Xのα-グルコースの重量 WG0 は,

  WG0 = 162 + 18 = 180 [g]

 したがって, 発酵で消費された単糖 X の重量パーセントは,

  (WG1/WG0)×100 = (135/180)×100 = 75 %