2章B 類題3-1(110310)               TOP-B


[問題] 次の文(a), (b), (c)を読んで, 問1〜問6に答えなさい。ただし, 原子量は, H=1.00, C=12.0, N=14.0, O=16.0 とする。なお, 構造式を解答するときは, 下図の[構造式の記入例]にならって記しなさい。


(a) ベンゼン環の炭素原子間の結合は全て同等であるので, 単結合と二重結合の位置を交換してもよい。例えばトルエンの場合, 下図1に示すように単結合と二重結合の位置を交換した(ア)と(イ)は全く同等であり, (ウ)のように表すことができる。
 (ウ)の対称性を考慮すると, C3とC7およびC4とC6はそれぞれ[環境が同じ炭素原子]どうしであり, C1,C2, C5はいずれも「環境が同じ炭素原子」をもっていない, といえる。したがって, トルエンの「環境が異なる炭素原子」はC1,C2, C3(C7と同等), C4(C6と同等), C5の5種類である。

 芳香族化合物 A, B, C, D(分子式はいずれもC8H10)について「環境が異なる炭素原子」は, それぞれ 3, 5, 4, 6 種類であった。化合物 A に濃硝酸と濃硫酸の混合物を反応させると, 化合物 E が生成した。
 さらに, 化合物 E にスズと濃塩酸を作用させたのち強塩基で処理すると, 分子量 121 の化合物 F が得られた。一方, 化合物 C に硫酸酸性の過マンガン酸カリウム水溶液を反応させて生成した化合物を加熱すると, 酸無水物 H が得られた。

問1. 化合物 B, D, F, H の構造式をそれぞれ記しなさい。

                             

問2.
化合物 A から化合物 E を得る反応において, 53.0gの化合物 A を反応させたところ, その80.0%が化合物 E となった。化合物 E は何g得られましたか。有効数字3桁で答えなさい。

                             


(b) グリセリンの 3個のヒドロキシ基が全てエステル結合になっている化合物 I と J (分子式はいずれも C24H20O9)がある。
 化合物 I の分子中には 1個の不斉炭素原子がある。1mol の化合物 I を硫酸水溶液中で完全に加水分解すると, 芳香族カルボン酸 K, L, M およびグリセリンが, それぞれ 1molずつ得られた。化合物 K, L, M のいずれにも不斉炭素原子はなかった。また, 化合物 L は, カルボキシル基のp-(パラ)の位置に置換基をもっていた。
 一方, 1molの化合物 J を加水分解したところ, 1molのグリセリンとともに, 1molの化合物 L と 2molの化合物 M が得られた。
 化合物 K, L, M のそれぞれに銅触媒を加えて加熱したところ, いずれも脱二酸化炭素反応(注)を起こし, 同一生成物 N が得られた。
 一方, 化合物 N を等モル量の水酸化ナトリウム水溶液と反応させてから, 高温・高圧下で二酸化炭素と反応させ, 希硫酸を加えたところ, 化合物 K が生成した。化合物 K の水溶液に塩化鉄(III)水溶液を加えると紫色を呈した。
 (注) 脱二酸化炭素反応 : たとえば, 安息香酸の場合は次の(1)式のように反応して, 二酸化炭素を発生する。

    C6H5COOH → C6H6 + CO2 …(1)

問3. 芳香族カルボン酸 K, L, M の構造式を記しなさい。

                             

問4. 化合物 I として考えられる構造異性体の数を記しなさい。ただし, 光学異性体は区別しないとする。

                             

問5. 化合物 J として考えられる構造異性体中で不斉炭素原子をもたない異性体の構造式を記しなさい。

                             


(c) 化合物 D, E, F, G, N が溶けているエーテル溶液に下図2に示す操作をして, 化合物の分離を行った。なお, これらは(a)および(b)で扱った化合物である。

問6. 化合物 D, E, F, G, N の中から, エーテル層Aに含まれるものを全て選び, その記号を記しなさい。


                             
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