答                              元の問題へ


 [問1の答]
      (image419)


 [問2の答] Eの質量 : 60.4 g


[問1の解説]

分子式がC8H10(分子量106)の芳香族化合物 A, B, C, Dにおいて, 次の4つの示性式が考えられる。

  o-C6H4(CH3)2, m-C6H4(CH3)2, p-C6H4(CH3)2, C6H5CH2CH3

そこで, 番号付炭素原子C1〜C7(1を参照)およびC8を用いて, (a)の問題本文中の[環境が異なる炭素原子]で分類すると,

o-C6H4(CH3)2 → 4種類に分類 → (a)の問題本文中の C 適合

 [環境が異なる炭素原子] C1(C8と同等), C2(C3と同等), C4(C7と同等), C5(C6と同等)

m-C6H4(CH3)2 → 5種類に分類 → (a)の問題本文中の B 適合

 [環境が異なる炭素原子] C1(C8と同等), C2(C4と同等), C3, C5(C7と同等), C4

p-C6H4(CH3)2 → 3種類に分類 → (a)の問題本文中の A 適合

 [環境が異なる炭素原子] C1(C8と同等), C2(C5と同等), C3(C4,C6,C7)

C6H5CH2CH3 → 6種類に分類 → (a)の問題本文中の D 適合

 [環境が異なる炭素原子] C1, C2, C3(C7と同等), C4(C6と同等), C5, C8

以上から, 混合物(A, B, E, F)において,

化合物 A は,

 化合物A(分子量106) → (濃硝酸と濃硫酸の混合物と反応:ニトロ化) → 化合物E(分子量151)

 化合物E(分子量151) → (スズと濃塩酸を作用させたのち強塩基で処理:還元)

     → 化合物F(分子量121)


上述を示性式で記述すると, 次のようになる。

 A:p-C6H4(CH3)2 → (NO2化) → E:NO2C6H3(CH3)2 → (還元) → F:NH2C6H3(CH3)2

化合物 B は,

 化合物 B → (硫酸酸性過マンガン酸カリウム水溶液を加える:酸化) → 化合物 G

示性式で記述すると, 次のようになる。

 B:m-C6H4(CH3)2(酸化) → G:m-C6H4(CH3)(COOH), m-C6H4(COOH)2

化合物 C は,

 化合物 C → (硫酸酸性過マンガン酸カリウム水溶液を加えて加熱:酸化・脱水反応)

      → 酸無水物 H

示性式で記述すると, 次のようになる。

 C:o-C6H4(CH3)2(酸化・脱水反応) → H:C6H4(CO)2O


[問2の解説]

化合物 A から化合物 E を得る反応では, [問1の解説]を参照して,

 A:p-C6H4(CH3)2(分子量:106) → (NO2化) → E:NO2C6H3(CH3)2(分子量:151)

そこで, 53.0gの化合物 A の物質量は, 分子量:106 を用いて,

  A の物質量 : 53/106 = 0.50 mol

80.0%の生成物 Eが生成すると, その質量gは, Eの分子量:151を用いて,

  Eの質量 = 151×0.5×(80/100) = 60.4 g


[問3の答]  下図1 …[問3答の解説]参照


[問4の答]  3 …下図2と[問4答の解説]参照


[問5の答]  下図3 …[問5答の解説]参照

     (image420)

[問3答の解説]

●化合物 I, J(分子式:C24H20O9)は油脂

 グリセリンと芳香族カルボン酸 K, L, M とがエステル結合(問題文(b)参照)

●化合物I1molのグリセリン + 1molのK + 1molのL + 1molのM

 よって, グリセリンの示性式:C3H5(OH)3, K:RKCOOH, L:RLCOOH, M:RMCOOH とすると,

  化合物 I : C3H5(OCORK)(OCORL)(OCORM) …@

●化合物J1molのグリセリン + 1molのL + 2molのM よって,

  化合物 J : C3H5(OCORL)(OCORM)2 …A

芳香族カルボン酸 K, L, M : 無不斉炭素原子

 @, AとI, J の分子式C24H20O9を考慮すると,

 K:R
KCOOH → C6H4(OH)(COOH) …B

 L:RLCOOH → C6H4(OH)(COOH) …C

 M:RMCOOH → C6H4(OH)(COOH) …D

●化合物 L : カルボキシル基のp-(パラ)の位置に置換基存在


 Cを参照すると

 L:p-C6H4(OH)(COOH) …E

●化合物 K, L, M → (脱CO2) → 化合物 N

 B, D, Eを参照すると,

 化合物 K, L, M → (脱CO2) → 化合物 NC6H5OH …F

●化合物 N →(等モル量のNaOH水溶液 + 高温・高圧下CO2 + 希H2SO4)

      → 化合物 K → (塩化鉄(III)水溶液) → 紫色

 F及び(等モル量のNaOH水溶液 + 高温・高圧下CO2 + 希H2SO4)の反応によってベンゼン環のオルト位置にカルボキシル基-COOH を導入できることを参照して

 化合物 NC6H5OH → (o位置COOH基導入) → 化合物 Ko-C6H5(OH)(COOH) …G

          → (塩化鉄(III)水溶液) → 紫色


 Dにおいて, EとGを参照して,

 化合物 M:m-C6H4(OH)(COOH) …H


よって, K, L, M を示性式で示すと

 K:RKCOOHo-C6H4(OH)(COOH) …B'

 
L:RLCOOHp-C6H4(OH)(COOH) …C'

 
M:RMCOOHm-C6H4(OH)(COOH) …D'


化合物 I と J の示性式を, @とAを参照して示すと,

 IC3H5(OCORK)(OCORL)(OCORM)

  
C3H5(OCOC6H4(OH)-o)(OCOC6H4(OH)-p)(OCOC6H4(OH)-m) …@'


 J C3H5(OCOC6H4(OH)-p)(OCOC6H4(OH)-m)2 …A'


[問4答の解説]

化合物 I 構造異性体を示性式で示すと次のようになる([問3答の解説]の示性式参照)。

 C3H5(OCOC6H4(OH)-p)(OCOC6H4(OH)-m)(OCOC6H4(OH)-o) …(10)

 C3H5(OCOC6H4(OH)-p)(OCOC6H4(OH)-o)(OCOC6H4(OH)-m) …(11)

 C3H5(OCOC6H4(OH)-m)(OCOC6H4(OH)-p)(OCOC6H4(OH)-o) …(12)

よって, 問3の答は3種類となる。ただし, グリセリンの示性式の炭素原子に次のように番号を付けると

   C1H2(OH)-C2H(OH)-C3H2(OH)

この場合, 炭素原子 C2 は, グリセリンと芳香族カルボン酸がエステル結合すると, 不斉酸素原子となり, 光学異性体が存在することになる。したがって, (10), (11), (12)の油脂にはそれぞれ光学異性体が1つずつ存在する。光学異性体も含めると6種類。


[問5答の解説]

化合物 J 不斉炭素原子をもたない構造異性体を示性式で示すと次のようになる([問3答の解説]の示性式参照)。

 C3H5(OCOC6H4(OH)-m)(OCOC6H4(OH)-p)(OCOC6H4(OH)-m)

 ただし, もう1つの構造異性体 C3H5(OCOC6H4(OH)-p)(OCOC6H4(OH)-m)(OCOC6H4(OH)-m)では, 炭素原子 C2不斉酸素原子となり, 光学異性体となる(上の[問4答の解説]を参照)


問6の答     D, E, N


●化合物 D, E, F, G, N の示性式は次のようになる( [問1と3の答]とその解説を参照)。

 D:C6H5CH2CH3

 E:NO2C6H3(CH3)2

 F:NH2C6H3(CH3)2

 
G:m-C6H4(CH3)(COOH) or m-C6H4(COOH)2

 
N:C6H5OH


●混合物(D, E, F, G, D)のエ−テル溶液に塩酸(HCl水溶液)を加えると, 塩基性のFと塩酸が次のように反応して水層@に分離される。

 水層@ : NH2C6H3(CH3)2 + HCl → Cl-+ N+H2C6H3(CH3)2

よって, エ−テル層@には,

 エ−テル層@ : D, E, G, N

●次にエ−テル層@に炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)水溶液を加えると, Gと炭酸水素ナトリウム水溶液が次のように反応して水層Aに分離される。

 水層A : C6H4(CH3)(COOH) + NaHCO3C6H4(CH3)(COO-) + Na+ + CO2 + H2O

       m-C6H4(COOH)2 + 2NaHCO3C6H4(COO-)2 + 2Na+ + 2CO2 + 2H2O

よって, エ−テル層Aには,

 エ−テル層A : D, E, N