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問1の答
(ア)sp2混成軌道の共有 (イ)分子間力(またはファンデルワールス力)
(ウ)Li+ + nC + e- → LiCn (エ)6
問2の答
2LiCn + 2H2O → 2LiOH + 2nC + H2
●問1の解説において,一般的に物質の結合は次のように分類される。
○原子核内結合
この結合は, 原子核内を構成する粒子の間において, 「強い力」と「弱い力」を伝達する各素粒子(g, W+, W-, Z0) の授受によって生じる。結合エネルギー:約109〜1013kJ/mol
ここで, g は, グルーオンとよばれており, クオーク(反クオークも含む)間の結合の「強い力」を伝達する。即ち, クオーク間で, このg
の授受によって「強い力」が生じ, 3つのクオークが結合し, 陽子と中性子がつくられ, さらに原子核がつくられる。
一方, W+, W-, Z0 は, プラスとマイナスのウイークボソンおよびゼロのゼットボソンとよばれており, 原子核内の中性子において, W+, W-, Z0 の授受によって「弱い力」が生じ, 電子とニュートリノを放出し陽子に変化して原子核を崩壊させる。
○化学結合
この結合は, 主として, 電荷を含む原子やイオンの間の「電磁力」を伝達する光子(γ)の授受によって生じる。光子(γ)はフォトンともよばれる。分類すると次のようになる。なお, 原子核と電子の結合も光子(γ)の授受によって生じる。
[イオン結合]…陽イオンと陰イオンなどの荷電粒子が, その荷電量(クーロン)と距離に関連する静電気的引力(クーロン力)によって生じる結合。根本的には光子が作用している。 (例)
塩化ナトリウムNaCl など。結合エネルギー:約500〜4000kJ/mol
[共有結合]…不対電子を有する原子どうしが, 互いに不対電子を供与して電子対を形成し共有して生じる結合。結合に関与する炭素原子の電子軌道には, sp混成軌道(アセチレンC2H2 などに存在), sp2混成軌道(エチレンC2H4 などに存在), sp3混成軌道(エタンC2H6 などに存在)がある。根本的には光子が作用している。 (例) 水素H2, 水H2O, メタンCH4の炭化水素など。結合エネルギー:約300〜2000kJ/mol
[配位結合]…非共有電子対を有する原子などが, 他の原子, イオン, 分子などとその電子対を共有して生じる結合。金属錯体の配位結合には, d2sp3混成軌道やdsp2混成軌道などがある。根本的には光子が作用している。 (例) アンモニウムイオンNH4+ (窒素原子の非共有電子対が水素イオンと共有されている:共有結合の一つ)など。結合エネルギー:約300〜2000kJ/mol
[金属結合]…金属固体内の多数の陽イオンが, 互いに, その固体内に存在する自由電子を共有することによって生じる結合。根本的には光子が作用している。 (例)
銅Cuや鉄Feなどの金属。 結合エネルギー:約150〜1000kJ/mol
○分子間結合
分子は, 他の分子の接近で, 互いに瞬間的に誘導双極子モーメント(正負の電荷の極性)を生じる。その双極子モーメントの相互作用によって生じる結合。この結合力は分極率,
分子間距離, イオン化エネルギーが関連する。分散力ともよばれている。
分子間力は, 遠達力で, 分子内の電子が基底状態にある場合は常に引力として働き, 広い意味でファンデルワールス力に相当する。各対に働く分子間力の和として表され,
化学結合力のように飽和の性質を示さない。このことは, 分子量が大きくなればなるほど, 分子間力が強くなることを意味する。根本的には光子が作用している。なお,
近距離の分子間斥力は, 分子間力(分散力)とは異なり, 化学結合と同種の性質をもつ。いわゆる, 分子の瞬間的な誘導双極子モーメントには依らない。根本的には光子が作用している。 (例)
ドライアイス(二酸化炭素の固体)など。結合エネルギー:約0.5〜30kJ/mol
○水素結合
酸素O, 窒素N, ハロゲンのフッ素F, 塩素Cl, 臭素Brなどの陰性原子が, それに結合している水素原子の介在によって, 同一分子内または他の分子の陰性原子に接近するときに生じる結合。例として,
水分子について考えると, 水素結合 O-H…O が分子間の陰性の酸素原子の間に水素原子を介在して生じる。即ち, 左側の酸素原子Oは, 電気陰性度が大きいために, 水素原子Hの電子雲を引き寄せ,
ほぼ陽子と同状態いわゆる陽子供与体として作用する。一方右側の陰性の酸素原子Oは陽子受容体として作用し接近して水素結合する。根本的には光子が作用している。結合エネルギー:約8.0〜50kJ/mol
○重力による結合(引力)
上述の物質の結合起因の力;「強い力」, 「弱い力」及び「電磁力」以外に, 全く性質の異なる「重力」が存在する。その重力は, 物質を集合させて,
種々の星や銀河の天体をつくる。物体(巨大質量の物質塊)の質量と物体相互間の距離だけで決まり, その他の物体の性質, 状態ならびに媒質に無関係である。重力を伝達する素粒子は重力子(グラビトン)と云われているが,
今なお発見されていない。
●(エ)において, 図2の○(白丸)のリチウムイオンに注目すると, リチウムイオン1個の周囲に最近接の6個の黒点の炭素原子が結合している。 その結合状態を「ひとかたまり」とすると,
それを単位として平面状網目構造は繰り返されている。したがって, 黒鉛の層間にリチウムを取り込んだ化合物は, LiC6で表すことができる。
問3の答
(オ) PbSO4 + 2H2O → PbO2 + H2SO4 + 2H+ + 2e-
(カ) PbSO4 + 2H+ + 2e- → Pb + H2SO4
問4の答
(キ) 0.331
(ク) 10.6
問5の答
92.5 %
● 問3の(オ)と(カ)において, 図3を参照すると, リチウム二次電池の正極(+)は鉛畜電池の電極Iに接続されている。よって, 鉛畜電池の電極Iは正極(+)に相当する。その電極(+)の充電反応は次式になる。
PbSO4 + 2H2O → PbO2 + H2SO4 + 2H+ + 2e-
鉛畜電池の電極IIは, 上述から, 当然に負極(-)となる。その電極(-)の充電反応は次式になる。
PbSO4 + 2H+ + 2e- → Pb + H2SO4
● 問4の(キ)と(ク)において, 「リチウム二次電池の負極の質量は 2.30[g]減少した」ことから, その物質量 mLi は, 原子量 Li = 6.94 を使用して,
mLi = 2.30/6.94 = 0.331 [mol]
リチウム二次電池の負極(-)から鉛蓄電池の電極IIに流れた電子の反応式は, 次のようになる。
LiCn → Li+ + nC + e- …(i)
上の式より, 1[mol]のLi(=1[mol]のLiCn)から1[mol]の電子が流れることになるから, その電子の物質量は, mLiの 0.331 [mol]と一致する。
一方, 鉛畜電池の電極Iの正極(+)は, 問3の答(オ)を参照すると, 上述の0.331 [mol]の電子e-の流れから, 次のように変化する。
0.331×(1/2) = 0.1655[mol]のPbSO4 → 0.331×(1/2) = 0.1655[mol]のPbO2 …(ii)
(ii)から, 鉛畜電池の電極Iの減少物質量は, 次式のSO2の0.1655[mol]に等しいことになる。
{0.1655[mol]のPbSO4} - {0.1655[mol]のPbO2} = 0.1655[mol]のSO2
よって, 鉛畜電池の電極Iの減少質量は, SO2の式量 32 + 16×2 = 64 を使用して,
64×0.1655 = 10.6 [g]
● 問5において, 「実際には電極Iの質量減少は 9.80 [g]であった」ことから, リチウム二次電池の放電のエネルギーが鉛蓄電池の充電に利用された割合(%)は
(9.80/10.6)×100 = 92.5 %