1章B 類題1-1(110418) TOP-B
[問題] 次の文(a), (b)を読んで, 問1~問6に答えなさい。ただし, 原子量は, H=1.00, C=12.0, O=16.0, Na=23.0, Cl=35.5 とする。
(a) ある高分子化合物を濃硫酸で処理すると, ベンゼン環部分で反応し, 多数の①強酸性の官能基をもつ樹脂Aが得られる。Aは3次元の網目状に連結された構造をもつため水中でも樹脂の形は保持されるが, 下線部①の官能基中の水素イオンは, 樹脂に接する水溶液中の陽イオンで可逆的に置換される。
Aは十分な量の塩酸ですすいだ後, 純水により塩酸を完全に洗い流すことで精製される。精製後, 水分を除去した1000gのAには, 下線部①の官能基が
2.50mol 含まれている。②この樹脂Aを30.0gとりビーカーに入れた。そこへ, 濃度0.100mol/Lの食塩水500mlをよく攪拌しながら加えたところ, 樹脂と溶液との全量が520mlとなって,
樹脂はビーカーの底に沈んだ。
次に, ③樹脂をビーカーの底に残したまま, 溶液部分を全て別のビーカーに回収した。この回収した溶液を換気に注意しながら, 蒸発皿とガスバーナーを用いて水分が完全に無くなるまで加熱したところ, 1.17gの固形物が残った。
ここでは, 樹脂Aおよび溶液の体積は, 反応の前後で変化しないものとする。溶液相(樹脂外)の物質のモル濃度は, 溶液の体積 1Lあたりで表し,
樹脂相(樹脂内)の下線部①の官能基のモル濃度は, 樹脂の体積 1Lあたりで表すこととする。溶液中の強酸や強塩基からなる物質は, 完全に解離するものとする。加熱以外の操作では,
溶液中の物質は蒸発しないものとする。
問1. 下線部①の官能基の名称を記しなさい。
答
問2. 樹脂Aの示性式において, 下線部①の官能基の部分を除いた部分の構造をRと略記(例えばアミノ基をもつ樹脂の場合, R-NH2)すると, 下線部②における反応は, 次の(1)式で表すことができる。( ア )と( ウ )には適する原子団を, また, ( イ )と( エ
)には適するイオン式を答えなさい。
R-( ア ) + ( イ ) ⇄ R-( ウ ) + ( エ ) …(1)
答
問3. 上の(1)式の反応に化学平衡の法則が成立するとしたとき, 下線部②の状態における( ア )~( エ )の原子団やイオンのモル濃度[mol/L]を有効数字3桁で答えなさい。
答
問4. 上の(1)式の反応の平衡定数Kの値を有効数字3桁で答えなさい。
答
(b) 上で述べた実験により, 樹脂Aの基本的な性質がわかった。ここでは, 目的にあわせて効率良く樹脂Aを利用するための理論的計算をおこなうことにする。
いま, 1回の反応に用いる樹脂Aに含まれる下線部①の官能基の量をx[mol]とする。また, (1)式における反応前および反応後の( イ )の量をそれぞれy[mol]およびy1[mol]とする。
平衡定数Kは, x, y, y1 を用いて, 次の(2)式で表すことができる。
K = {y12 - ( オ )y1 + y2}/[y1{y1 + ( カ )}] …(2)
ここで, 問4で求めたKの値を誤差のない数値とみなして, 上の(2)式に代入すると, y1は, x, yを用いて, 次の(3)式で表すことができる。
y1 = ( キ )/( ク ) …(3)
反応前の( イ )の量yおよび平衡定数Kの値を変化させずに, (3)式の値を小さくするもっとも簡単な方法は, 1回の反応に用いる樹脂Aの量を増やすことである。たとえば,
(3)式においてxの値を2倍にすれば, このときの(3)式の値を簡単に算出することができる。
しかし, ④同じ2x[mol]の下線部①の官能基を含む樹脂Aを用いるとしても, はじめにx[mol]の下線部①の官能基を含む樹脂Aを用いた後に, 下線部③のようにして回収した溶液に対して, あらたにx[mol]の下線部①の官能基を含む樹脂Aを用いた方が効率的であることが知られている。
この2回目の反応後の( イ )の量をy2[mol]とする。y2は, x, yを用いてy1を消去した形で表すと, 次の(4)式で与えられる。
y2 = ( ケ )/( コ ) …(4)
問5. ( オ )~( コ )に適する式を答えなさい。
答
問6. 下線部④に示された方法で, 樹脂Aと濃度0.100mol/Lの食塩水500mlとの反応を行った。はじめの( イ )の量に対する2回目の反応後の(
イ )の量の割合を1.00パーセントとするためには, 1回当り何gの樹脂Aを用いればよいですか。有効数字3桁で答えなさい。
答