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問1の答 スルホ基
問2の答
( ア )…SO3-H+ ( イ )…Na+ ( ウ )…SO3-Na+ ( エ )…H+
樹脂Aの示性式を次のようにする。ただし, Rは, ベンゼン環 C6H4-n と結合している強酸性の官能基 G-H+ を除去した部分の構造を表す。
R-G-H+
いま, 水溶液中の陽イオンを M+ とすると, 次のように可逆的な置換反応が生じる。
R-G-H+ + M+ ⇄ R-G-M+ + H+
樹脂Aは, ある高分子を濃硫酸で処理すると, ベンゼン環部分で反応して強酸性の官能基 G-H+ をもつことになるので, 次の構造になる。
R-SO3-H+
上のAの示性式から, 強酸性の官能基は, SO3-H+で示され, スルホ基とよばれている。
食塩水とは, 次のように可逆的な置換反応が生じる。
R-SO3-H+ + Na+ ⇄ R-SO3-Na+ + H+
よって, 上の可逆的な置換反応を, 次の(1)式と比較すると,
R-( ア ) + ( イ ) ⇄ R-( ウ ) + ( エ ) …(1)
( ア ) …SO3-H+
( イ ) …Na+
( ウ ) …SO3-Na+
( エ ) …H+
問3の答
(ア)のモル濃度 = 2.25 [mol/L], (イ)のモル濃度 = 0.0400 [mol/L]
(ウ)のモル濃度 = 1.50 [mol/L], (エ)のモル濃度 = 0.0600 [mol/L]
問4の答 1.00
●樹脂Aと食塩水とは, 次のように可逆的な置換反応が生じる。
R-( ア ) + ( イ ) ⇄ R-( ウ ) + ( エ ) …(1)
R-SO3-H+ + Na+ ⇄ R-SO3-Na+ + H+ …(i)
問題(a)において, 「樹脂A 30gに 0.1mol/Lの食塩水 500mlを加えると, 全量が 520mlとなった。回収した溶液を加熱して溶媒を除去すると固形物が
1.17g得られた」ことから,
最初に加えた食塩NaCl の物質量 mNa0は,
mNa0 = 0.1×(500/1000) = 0.05 [mol] …(a)
未置換反応で溶液中に残ったNaClの物質量 mNa1 は, 固形物 1.17g と NaCl の式量58.5を使用して,
mNa1 = 1.17/58.5 = 0.02 [mol] …(b)
よって, 溶液中に残ったNaClのモル濃度 MNa は,
MNa = 0.02/0.5 = 0.04 [mol/L]
0.04 [mol/L] は, 問題(a)の(1)式中の(イ)のイオンNa+のモル濃度に相当する。
(イ)のモル濃度 = 0.04 [mol/L]
樹脂A 30gと反応したNaClの物質量 mNa1 は,
mNa1 = (a) - (b) = 0.05 - 0.02 = 0.03 [mol] …(c)
(c)の物質量は, 生成したR-SO3-Na+(SO3の原子団)と H+ の物質量の値に等しいので,
(ウ)のモル濃度 = (c)/(0.52 - 0.5) = 0.03/0.02 = 1.5 [mol/L]
(エ)のモル濃度 = (c)/0.5 = 0.03/0.5 = 0.06 [mol/L]
一方, 樹脂A 30g に含まれる官能基の物質量 mPu0 は, 問題(a)の「1000gのAには2.5mol 含まれる」ことから,
mPu0 = 2.5×(30/1000) = 0.075 [mol]
未反応の樹脂Aの物質量 mPu1は, 反応した樹脂Aの物質量は(c)の 0.03 [mol] と等しいから,
mPu1 = 0.075 - 0.03 = 0.045 [mol]
(ア)のモル濃度 = 0.045/(0.52 - 0.5) = 2.25 [mol/L]
●(i)式の平衡定数を K とすると,
K = [R-SO3-Na+][H+]/[R-SO3-H+][Na+]
上式の右辺に, 問3の答を代入すると,
K = (1.5)(0.06)/(2.25)(0.04) = 1.00
問5の答
(オ) = 2y, (カ) = x - y, (キ) = y2, (ク) = (x + y), (ケ) = y3,
(コ) = (x + y)2
問6の答 1.98 [kg] …使用樹脂Aの重量
問5において,
● R-SO3-H+ + Na+ ⇄ R-SO3-Na+ + H+ …(i)
上式(i)の平衡定数Kは,
K = [R-SO3-Na+][H+]/[R-SO3-H+][Na+] …(ii)
いま, 1回の反応に用いる樹脂Aに含まれるスルホ基の量をx[mol]とする。また, (i)式における反応前および反応後の Na+ の量をそれぞれy[mol]およびy1[mol]とする。以上において, 平衡状態で, 各物質のモル濃度は次のようになる。
[R-SO3-H+] = {x - (y - y1)}/0.2
[Na+] = y1/0.5
[R-SO3-Na+] = (y - y1)/0.2
[H+] = (y - y1)/0.5
上式の4つを(ii)式に代入すると,
K = (y - y1)2/{x - (y - y1)}y1 = (y12 - 2yy1 + y2)/y1{y1 + (x - y)} …(iii)
(iii)式と(2)式を比較すると,
(オ) = 2y, (カ) = x - y
(iii)式に, K = 1を代入して変形すると,
1 = (y12 - 2yy1 + y2)/y1{y1 + (x - y)}
y12 - 2yy1 + y2 = y1{y1 + (x - y)} = y12 + y1(x - y)
- 2yy1 + y2 = y1(x - y)
y1(x - y) + 2yy1 = y2
y1(x + y) = y2
よって,
y1 = y2/(x + y) …(iv)
(iv)式と(3)式を比較すると,
(キ) = y2, (ク) = (x + y)
●はじめにx[mol]のスルホ基を含む樹脂Aを用いた後に, 回収した溶液に対して, あらたにx[mol]のスルホ基を含む樹脂Aを用いた方が効率的であることが知られている。
いま, この2回目の反応後のNa+の量をy2[mol]とすると, (i)式と(ii)式において,
[R-SO3-H+] = {x - (y1 - y2)}/0.2
[Na+] = y2/0.5
[R-SO3-Na+] = (y1 - y2)/0.2
[H+] = {(y - y1) + (y1 - y2)}/0.5 = (y - y2)/0.5
上式4つを(ii)式に代入すると,
K = (y1 - y2)(y - y2)/{x - (y1 - y2)}y2 = 1
変形すると,
(y1 - y2)(y - y2) = {x - (y1 - y2)}y2
y1y - y2y - y1y2 + y22 = xy2 - y1y2 + y22
y1y - y2y = xy2
y2 = y1y/(x + y)
(iv)式を使用してy1を消去すると,
y2 = y3/(x + y)2 …(v)
(v)式と(4)式を比較すると,
(ケ) = y3, (コ) = (x + y)2
問6において,
● いま, 1回の反応に用いる樹脂Aに含まれるスルホ基の量をx[mol]とする。また, (1)式における反応前および反応後のNa+の量をそれぞれy[mol]およびy1[mol]とする。
R-SO3-H+ + Na+ ⇄ R-SO3-Na+ + H+ …(1)
K = [R-SO3-Na+][H+]/[R-SO3-H+][Na+]
ここで, 問5の答を参照して, 平衡定数K = 1.00 を用いると, 次式(2)が成立する。
y1 = y2/(x + y) …(2)
● 問5の答を参照して, 2回目の反応後のNa+の量をy2[mol]とすると, 次式(3)式が成立する。
y2 = y3/(x + y)2 …(3)
問6では,
y2/y1 = 0.01 …(4)
(4)に(2)と(3)を代入すると,
0.01 = {y3/(x + y)2}{(x + y)/y2} = y/(x + y) …(5)
ここで, 500 [ml]のモル濃度0.100 [mol/L]のNaCl水溶液500 [ml]を使用したので,
y = 0.1×(500/1000) = 0.05 [mol]
(5)に代入すると,
0.01 = 0.05/(x + 0.05)
0.01(x + 0.05) = 0.05
0.01x = 0.0495
x = 4.95 [mol]
1000gの樹脂Aには, スルホ基が 2.50 [mol] 含まれているので, 使用樹脂Aの重量をw[g]とすると,
w = 1000×(4.95/2.5) = 1980 [g] = 1.98 [kg]