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問1の答 A : H3N+-CH(R)-COOH B : H2N-CH(R)-COO-
●α-アミノ酸の分子は, 次式のように, 分子中に塩基性のアミノ基-NH2 と酸性のカルボキシル基 COOH が存在する。このような化合物を両性物質という。 また, 窒素原子の最外殻電子軌道に 1つの非共有電子対を持つ。
:NH2-CH(R)-COOH
ここで, 上の化学式中の黒点は電子を表わす。
上の化学式のカルボキシル基 -COOH は酸性を示すので, -C(O)-O-H+ (O-とH+はイオン性結合)のように書き直すことができ, 一般にその水素イオンが, 分子内で移動して, 窒素原子の非共有電子対と配位結合し, 次式のような安定な双生イオンをつくる。特に結晶内に見られる。
:NH2-CH(R)-COOH → H3N+-CH(R)-COO- (双生イオン)
そこで,
●もし酸性水溶液にアミノ酸を溶かすと, 水溶液中では水素イオン H+ が多く存在するので, 次のように水素イオン H+ がアミノ酸の双生イオン中の-COO- と結合して陽イオンを生じる :
H+ + H3N+-CH(R)-COO- → H3N+-CH(R)-COOH (A)
●もし塩基性水溶液にアミノ酸を溶かすと, 水溶液中では水酸化物イオン OH- が多く存在するので, 次のように水酸化物イオン OH- がアミノ酸の双生イオン中の H+ と結合し水 H2O を形成し陰イオンを生じる :
OH- + H3N+-CH(R)-COO- → H2N-CH(R)-COO- (B) + H2O
問2の答 ア : 6 イ : 8
ある鎖状のペプチドが分子中に m個のアラニン分子と n個のアスパラギンが脱水結合しているとすると, そのペプチド分子の化学式は 1つの例として次のように書いてもよい
:
H-{NH-CH(CH3)-CO}m-{NH-CH(CH2CONH2)-CO}n-OH
このペプチドが完全に加水分解すると, その化学反応式は
H-{-NH-CH(CH3)-CO-}m-{-NH-CH(CH2CONH2)-CO-}n-OH + (m + 2n -1)H2O →
mH2N-CH(CH3)-COOH + nH2N-CH(CH2COOH)-COOH + nNH3 …(1)
この反応式において, 各原子の数は
水素原子H数…左辺側 : 7m + 10n, 右辺側 : 7m + 10n
炭素原子C数…左辺側 : 3m + 4n, 右辺側 : 3m + 4n
酸素原子O数…左辺側 : 2m + 4n, 右辺側 : 2m + 4n
窒素原子N数…左辺側 : m + 2n, 右辺側 : m + 2n
水 18.9g が消費され, アラニン 26.7g(分子量:89.0)とアスパラギン酸 53.2g(分子量:133) が生成されたので, 使用した水の物質量を
mW [mol], 生成されたアラニンの物質量を mAL [mol], 生成されたアスパラギン酸の物質量を mAP [mol] とすると, 次式が成立する :
水において, 分子量が 18.0 から
mW = 18.9/18.0 = 1.05 mol
アラニンにおいて, 分子量が 89.0 から
mAL = 26.7/89.0 = 0.300 mol
アスパラギン酸において, 分子量が 133 から
mAP = 53.2/133 = 0.400 mol
上の反応式(1)を考慮すると, 次式が成立する :
水の物質量 mW とアラニンの物質量 mAL の比において,
(m + 2n -1) : m = 1.05 : 0.300
0.3(m + 2n -1) = 1.05m
(m + 2n -1) = 3.5m
よって
2.5m - 2n = -1 …(2)
水の物質量 mW とアスパラギン酸の物質量 mAP の比において,
(m + 2n -1) : n = 1.05 : 0.400
0.4(m + 2n -1) = 1.05n
4(m + 2n -1) = 10.5n
よって
4m - 2.5n = 4 …(3)
(3)×2.5 - (2)×4 において
(10m - 6.25n) - (10m - 8n) = 10 + 4
1.75n = 14
よって
n = 8 … ペプチド分子中のアスパラギンの数(イ)に相当
n = 8 を (3)式に代入すると
4m - 2.5×8 = 4
4m - 20 = 4
4m = 24
よって
m = 6 … ペプチド分子中のアラニンの数(ア)に相当