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問1の答 (ア):+3, (イ):+2
陽性元素の鉄の酸化数は, 鉄の電子配置を考慮すると, +3 と +2 が存在する。原子番号 26 の鉄において, その基底状態の電子配置は次のようになる:
Fe : 1s22s22p63s23p63d64s2
ここで, 3d と 4s の電子軌道エネルギーレベルはほぼ等しいので, 外部の作用によって, Fe2+ と Fe3+ が生成される。その電子配置は,
Fe2+ : 1s22s22p63s23p63d6 → 1s22s22p63s23p63d54s1
Fe3+ : 1s22s22p63s23p63d5
ここで, Fe2+ は, Fe3+ が還元されたものである。
一方, 赤鉄鉱の主成分である酸化物は酸化鉄(III) Fe2O3 である。陰性元素の酸素の酸化数は一般に -2 であるので, Fe2O3 において, 鉄の酸化数を x とすると,
2x + (-2)×3 = 0
よって,
x = +3
問2の答 Fe3O4
鉄の酸化物は, Fe2O3 の他に Fe2O3 の還元された Fe3O4 および Fe1-XO(ただし, X≧0) がある。四酸化三鉄 Fe3O4 においては, その式量は,
Fe3O4 の式量 = 56×3 + 16×4 = 232
この値は, 問題文中のモル質量 : 232g/mol と一致する。
問3の答 ( ウ ):+2, ( エ ):+1
四酸化三鉄 Fe3O4 においては, その中の鉄には, 酸化数で +2 と +3 の両方が存在している。いま, 1mol のFe3O4 で酸化数 +2 の鉄の含まれる割合を f2, 酸化数 +3 の鉄の含まれる割合を f3 とすると, 酸化数を考慮して, 次式が成立する:
(2f2 + 3f3)×3 + (-2)×4 = 0 …(i)
f2 + f3 = 1 …(ii)
よって,
{2f2 + 3(1- f2)}×3 + (-2)×4 = 0
(3 - f2)×3 + (-2)×4 = 0
1 - 3f2 = 0
よって,
f2 = 1/3
したがって,
f3 = 1 - f2 = 1 - 1/3 = 2/3
f2 と f3 の比は
f2 : f3 = 1 : 2
問4の答 定比例
プルーストの定比例の法則 : 化合物を構成する成分元素の質量比は常に一定である。
問5の答 0.043
酸化物C中の鉄Feの質量パーセントは
鉄Feの質量パーセント = 100 - 23 = 77.0%
そこで, 酸化物C中の鉄と酸素のモル比は
Fe : O = 77/56 : 23/16 = {(77/56)×(16/23)} : 1
よって, (Fe1-XO)において次式が成立する:
1 - x = {(77/56)×(16/23)}
x = 1 - {(77/56)×(16/23)} = 0.043
問6の答 6.0 [g・cm-3]
a は X に対して直線的に変化すると仮定しているので, (a, X) において, 次式が成立する:
a = mX + b …(i)
(i)式に, 2点:(0.060, 4.30×10-8) と (0.080, 4.29×10-8) を代入すると,
4.30×10-8 = 0.06m + b …(ii)
4.29×10-8 = 0.08m + b …(iii)
(iii) - (ii) を計算すると,
-0.01×10-8 = 0.02m
よって,
m = -0.5×10-8
b = 4.30×10-8 - 0.06×(-0.5×10-8) = 4.33×10-8 cm
よって, (i)式は
a = (-0.5×10-8)X + 4.33×10-8 …(iv)
X = 0 のとき,
a = 4.33×10-8
単位格子の体積 V は,
V = a3 = (4.33×10-8)3 = 81.2×10-24 cm3
図1を参照すると, 単位格子内に, Fe原子数と O原子数は
Fe原子数 = (1/8)×8 + (1/2)×6 = 4 個
O原子数 = (1/4)×12 + 1 = 3 + 1 = 4 個
以上から, 酸化物 C の密度 d は
d = 4(Fe + O)/V = 4×{56/(6×1023) + 16/(6×1023)}/(81.2×10-24)
= 4×(56 + 16)/{(6×1023)(81.2×10-24)} = 288/48.7 = 6.0 g・cm-3
問7の答
イオン結合の酸化鉄中にはプラスの2価と3価の鉄イオンが混在することがあり, イオン間距離やクーロン力の変化などで電気的ひずみが生じてその体積すなわち単位格子の辺
a に影響を与える。
問8の答 Fe2O3 + 3CO → 2Fe + 3CO2