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問1の答

 (ア):(下げる), (イ)(下げる),  (ウ):(メタン)


● 反応(2)は次の式で表される:

  CO + H2O ⇄ CO2 + H2 …(2)

 この反応において, 平衡が左辺→右辺に移動すると発熱反応になる。したがって, 「ルシャトリエの法則…平衡状態で濃度・圧力・温度などの条件を変えると, その変化を妨げる方向に平衡が移動し新平衡状態になる」から, 反応熱に注目して, 水素の濃度を増加させるためには,(ア)の語句を(下げる)とすることが適切である。

● 反応(3)は次の式で表される:

  CO + 3H2 ⇄ CH4 + H2O …(3)

 この反応において, 平衡が左辺→右辺に移動すると圧力降下反応になる。したがって, 「ルシャトリエの法則」から, 圧力に注目して, メタンの生成を制御するためには, (イ)の語句を(下げる)とすることが適切である。

反応(2), (3)は次の式で表される:

  CO + H2O ⇄ CO2 + H2 …(2)

  CO + 3H2 ⇄ CH4 + H2O …(3)

 これらの反応において, 平衡が左辺→右辺に移動すると
一酸化炭素減少反応になる。したがって, 「ルシャトリエの法則」から, 濃度に注目して, 一酸化炭素の量を減らすには, 生成した二酸化炭素やメタンを反応中に分離除去することが有効である。よって, (ウ)の語句を(メタン)とすることが適切である。


問2の答     (i) …(い)   (ii) …(お)


●(i)において, 反応(1)と(2)の反応速度定数を K1, K2 とすると, K2<K1 である。

  CH3OH → CO + 2H2 …(1)

  CO + H2O ⇄ CO2 + H2 …(2)

K2<K1 の場合, 反応(1)が(2)よりも速く進行し, 反応(2)は(1)よりも遅い。このことを考慮して, 反応時間に対して, 生成される水素ガスと一酸化炭素ガスのモル濃度 [H2] と [CO] に注目すると, 初期の反応時間では, 主に, 反応(1)から, 一酸化炭素と水素が発生する。 その場合, 水素ガスが2倍の量で生成される。
 遅い速度の反応(2)の進行で, 一酸化炭素ガスは水蒸気との反応により徐々に消費され減少する。水素ガスはさらに生成され, 全体として, 2倍より多くなる。以上の考察から, 適合するグラフは(い)である。


●(ii)において, 反応(1)と(2)の反応速度定数を K1, K2 とすると, K2≫K1 である。

  CH3OH → CO + 2H2 …(1)

  CO + H2O ⇄ CO2 + H2 …(2)

K2≫K1 の場合, 反応(2)は非常に速いので, 反応(1)が律速となり, (1)で生成される一酸化炭素ガスの一部が(2)で一瞬のうちに消費され, かなりの反応時間に対して一酸化炭素量は定常状態を保持する。水素ガス量は一酸化炭素ガスより2倍より多くなる。以上の考察から, 適合するグラフは(お)である。


問3

(1) の答    1.8倍


反応前の混合気体の体積V0中のメタノールと水蒸気の物質量は, 2 mol と 3 mol であった。したがって, その全物質量をn0とすると,

  n0 = 2 + 3 = 5 [mol] …(a)

十分の反応時間経過後, メタノールは反応(1)で完全に分解し, 反応(2)は平衡状態に達した。

  CH3OH → CO + 2H2 …(1)

  CO + H2O ⇄ CO2 + H2 …(2)

したがって, メタノール分解で生じる一酸化炭素と水素の物質量を, mCとmHとすると, 反応(1)から

  mC = 2 [mol]

  mH = 2×2 = 4 [mol]

生じた一酸化炭素の一部が反応(2)によって水蒸気と反応して平衡に達するので, (2)によって反応する一酸化炭素の物質量を mC1 とすると, 平衡状態で存在する各物質の物質量は

  一酸化炭素の物質量 … mC - mC1 = 2 - mC1 [mol]

  水蒸気の物質量 … 3 - mC1 = 3 - mC1 [mol]

  二酸化炭素の物質量 … mC1 [mol]

  水素の物質量 … mH + mC1 = 4 + mC1 [mol]

平衡状態での全物質量 n1

  n1 = (2 - mC1) + (3 - mC1) + (mC1) + (4 + mC1) = 9 [mol] …(b)

反応する一酸化炭素の物質量 mC1 は, 平衡状態の水素の物質量は5.76 [mol]であるので, 上式:水素の物質量 … mH + mC1 = 4 + mC1 [mol] より,

  4 + mC1 = 5.76

よって, 反応する一酸化炭素の物質量 mC1

  mC1 = 1.76 [mol] …(c)

V0とV1の関係は, 一定温度 T, 一定圧力 P のもとでは, 気体の状態方程式から,

  PV0 = n0RT … (d)

  PV1 = n1RT … (e)

よって, V1/V0は, (d)と(e)および(a)と(b)から,

  V1/V0 = (e)/(d) = n1/n0 = 9/5 = 1.8倍


(2) の答    0.24 [mol]


 反応(1)によるメタノールの完全分解で生じた一酸化炭素の一部が反応(2)によって水蒸気と反応して平衡に達する。そこで, (2)によって反応する一酸化炭素の一部の物質量を mC1 とすると, 平衡状態で存在する各物質の物質量は(問3(1)の解答解説を参照),

  一酸化炭素の物質量 … mC - mC1 = 2 - mC1 [mol]

  水蒸気の物質量 … 3 - mC1 = 3 - mC1 [mol]

  二酸化炭素の物質量 … mC1 [mol]

  水素の物質量 … mH + mC1 = 4 + mC1 [mol]

反応する一酸化炭素の物質量 mC1 は, 平衡状態の水素の物質量は5.76 [mol]であるので, 水素の物質量の上式 : mH + mC1 = 4 + mC1 より,

  4 + mC1 = 5.76

よって, 反応する一酸化炭素の物質量 mC1

  mC1 = 1.76 [mol] …(c)

よって, 反応後の一酸化炭素の物質量[mol]は, 一酸化炭素の物質量の上式: mC - mC1 = 2 - mC1 より,

  2 - mC1 = 2 - 1.76 = 0.24 [mol]


(3) の答    34


 反応(1)によるメタノールの完全分解で生じた一酸化炭素の一部が反応(2)によって水蒸気と反応して平衡に達する。

  CO + H2O ⇄ CO2 + H2 …(2)

 可逆反応(2)の平衡定数は, 気体のモル濃度を用いて以下のように表現できる(本問題文参照)。

  K2 = [CO2][H2]/[CO][H2O] …(4)

 そこで, (2)によって反応(左辺→右辺)する一酸化炭素の物質量を mC1 とすると, 平衡状態で存在する各物質の物質量は(問3(1)と(2)の解答解説を参照),

  一酸化炭素の物質量 … mC - mC1 = 2 - mC1 [mol] …(a)

  水蒸気の物質量 … 3 - mC1 = 3 - mC1 [mol] …(b)

  二酸化炭素の物質量 … mC1 [mol] …(d)

  水素の物質量 … mH + mC1 = 4 + mC1 [mol] …(e)

反応する一酸化炭素の物質量 mC1 は, 平衡状態の水素の物質量は5.76 [mol]であるので, 水素の物質量の上式 : mH + mC1 = 4 + mC1 より,

  4 + mC1 = 5.76

よって, 反応する一酸化炭素の物質量 mC1

  mC1 = 1.76 [mol] …(c)

よって, 平衡状態で存在する各物質のモル濃度[mol/L]は, (a)~(e)から,

  [CO] = (2 - 1.76)/V1 = 0.24/V1 [mol/L]

  [H2O] = (3 - 1.76)/V1 = 1.24/V1 [mol/L]

  [CO2] = 1.76/V1 [mol/L]

  [H2] = (4 + 1.76)/V1 = 5.76/V1 [mol/L]

よって, 可逆反応(2)の平衡定数K2は, 上の式(4)より,

  K2 = [CO2][H2]/[CO][H2O] = {(1.76/V1)(5.76/V1)}/{(0.24/V1)(1.24/V1)}

   = 34.06 = 34


(4)の答   (I) 2[H2] + 2[H2O]   (II) [CO]+ 2[CO2] + [H2O]


(5)の答   (う)


メタノールと水蒸気は, 一定温度, 一定圧力で, 適切な触媒を加えると以下のように反応する。

  CH3OH → CO + 2H2 …(1)

  CO + H2O ⇄ CO2 + H2 …(2)

  CO + 3H2 ⇄ CH4 + H2O …(3)

 反応(1)は高圧条件下でなければ不可逆反応と見なすことができる。反応(2), (3)は可逆反応である。ここで, 当問題では, 反応(1)のメタノールは完全に分解し, 反応(3)は全く進行しないとする。一方, 密閉した容器内において, 通常の反応前後では, 分子を構成する各原子の総数は変化しない。この無変化は, 反応前後で温度と圧力がともに変化する場合も成立する。

 このことから, 反応前の混合気体の体積V0において, 各原子(C, H 及び O)の物質量に注目すると以下のようになる。ただし,
混合気体中のメタノールの濃度を[CH3OH]0, 水蒸気の濃度を[H2O]0で表す。

炭素原子Cの物質量…V0×[CH3OH]0

水素原子Hの物質量…4V0×[CH3OH]0 + 2V0×[H2O]0 = V0×(4[CH3OH]0 + 2V0[H2O]0)

酸素原子Oの物質量…V0×[CH3OH]0

また, 反応後の平衡状態の混合気体の体積V1において,各原子(C, H 及び O)の物質量に注目すると以下のようになる。ただし, 水素, 一酸化炭素, 二酸化炭素, 水蒸気の濃度を, それぞれ[H2], [CO], [CO2], [H2O]で表す。

炭素原子Cの物質量…V1×[CO] + V1×[CO2] = V1×([CO] + [CO2])

水素原子Hの物質量…2V1×[H2] + 2V1×[H2O] = V1×(2[H2] + 2[H2O])

酸素原子Oの物質量…V1×[CO]+ 2V1×[CO2] + V1×[H2O] = V1×([CO]+ 2[CO2] + [H2O])

よって, 反応前後において,

炭素原子Cの物質量…V0×[CH3OH]0 = V1×([CO] + [CO2])

水素原子Hの物質量…V0×(4[CH3OH]0 + 2V0[H2O]0) = V1×(2[H2] + 2[H2O])

酸素原子Oの物質量…V0×[CH3OH]0 = V1×([CO]+ 2[CO2] + [H2O])