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問1の答       セルロース


●1 植物は, 太陽光のエネルギー(hν, h:プランク定数 ν:光の振動数)を利用して, 二酸化炭素 CO2 と水 H2O から有機化合物 C6H12O6 を合成し酸素 O2 を放出している。

                   6CO2 + 6H2O → (hν) → C6H12O6 + 6O2

●2 植物は, 基本的に●1にそって, 主として上述の生成物の C6H12O6 の脱水で (C6H10O5)n を形成し成長する。

                      nC6H12O6 → (C6H10O5)n + nH2O

 この炭水化物 {C6(H2O)5}n が, 成長する植物の細胞壁を構成する主成分のセルロースである。


問2の答       セルラーゼ


●3 セルロースは, 次のように, 酵素(生物体内に存在するタンパク質性の高分子触媒)のひとつのセルラーゼによって加水分解し二糖類のセロビオ−スになる。

                     2(C6H10O5)n + nH2O → nC12H22O11

●4 セルロースは, 触媒としての強酸の希硫酸で加水分解され, 還元性の単糖類β-グルコ―スになる。

                     (C6H10O5)n + nH2O → nC6H12O6

●5 セルロースは天然高分子化合物である。セルロース分子構造は, 下図(image107)に示すように, β-グルコースの脱水によるβ-1,4-グリコシド結合で形成されている。分子間の水素結合で繊維状になっている。

 植物の種子や果実などに多く含まれるデンプンに対して, 植物細胞の細胞壁の主成分で特に植物の体形保持の役目を担っている。1次構造において, アミロースの分子構造と比較すると, セルロースは立体異性体に類似する。

   

●6 トウモロコシなどの種子から得られた白い粉は, 下図(image105)の構造式で表されるアミロペクチン(79%)とアミロース(21%)の2種のデンプンから成り立つ。分子式は (C6H10O5)nで多糖類の天然高分子化合物のひとつである。

    

●7 デンプンは, 上の簡略図に示したように,分子内の水素結合によってらせん状になっており, 水溶液中にヨウ素が存在すると, そのらせん構造の中へいくつかのヨウ素分子I2を取り込んで青色の包接化合物をつくる。

 いわゆるヨウ素デンプン反応を示す。加熱すると元の状態にかえり青色が消失する。水溶液に触媒の希硫酸を加えて加熱すると, 加水分解され単糖類のα-グルコース C6H12O6になる。
                        (C6H10O5)n + nH2O → nC6H12O6

●8 生じたα-グルコース C6H12O6は, 水溶液中で, 下図(image106)のα-グルコース, β-グルコース, アルデヒド型グルコースの3種の異性体が平衡状態で存在する。
  
この3種の異性体の中でアルデヒド型グルコースは還元性のアルデヒド基をもつので, フェ−リング液を加えて加熱すると, 赤色の酸化銅(I) Cu2Oを生じる。


問3の答      (い)  (う)


 (あ) …該当外(●7参照)

 (い) …該当(●4参照)

 (う)…該当 (え)…該当外 (アルカリ性ではとける。)

 (お)…該当外(●4と8参照)


問4の答      (b)  (e)


● 触媒…触媒(普通は正触媒を意味する)は, 化学反応を速くするが, 触媒自身は反応前後で同じ状態で変化していない。

● 具体的には, 反応に触媒を用いると, 反応経路が変化し, 活性化エネルギーが小さくなるために, 反応速度は大きくなる。反応熱は変化しない。

● 活性かエネルギー…反応物が生成物になるためには, その経路の中間において, 反応に関与する物質は不安定な活性化状態を通る必要がある。

 その活性化状態の物質が持つエネルギーと反応前の初期状態の物質がもつエネルギーとの差を活性化エネルギーという。

● 反応温度が高くなると, 活性化エネルギー以上の状態の物質が急激に増加する。

● 反応速度定数 k …反応速度 v は, 一般に次式のように表わされる。

                    v = k×(反応関与物質の濃度を含む式) …(i)

 ここで, 反応速度定数 k は,

                           k = Aexp(-E/RT) …(ii)

 この式 (ii) はアレーニウスの式と呼ばれ, A は頻度因子(反応関与物質の単位時間当りの衝突数に関連), E は活性化エネルギー, R は気体定数, T は絶対温度を表わす。

 そこで, (ii)と(i)から, 反応速度定数 k は, 活性化エネルギー E に依存し反応速度 v にも影響する。


問5の答       X : C6H12O6   Y : C2H6O(またはCO2)  Z : CO2(またはC2H6O)


● アルコール発酵は, ヘキソース(炭素原子6個をもつ単糖類 ; D-グルコース, D-フルコース, D-マンノースなど)が酵母によって, 無酸素状態で分解され, エチルアルコールと二酸化炭素になることをいう。

                        C6H12O6 → 2C2H6O + 2CO2


問6の答       2.30×102 [g]


●1 問1と 6 の解説を参照すると, セルロース → グルコース → アルコールにおいて, 次式が成立する。

                      (C6H10O5)n + nH2O → nC6H12O6

                      nC6H12O6 → 2nC2H6O + 2nCO2

 そこで, 上式から, 1 [mol] のセルロースから 2n [mol] のエタノールが生成する。

●2 405 g のセルロースの物質量 MS は, モル質量 (6×12.0 + 10×1.00 + 5×16.0)×n = 162n [g/mol] を用いると,

                         MS = 405/162n [mol]

 よって, 生成されるエタノールの物質量 ME は, ●1を考慮すると,

                  ME = 2n×MS = 2n×(405/162n) = 5.00 [mol]

●3 生成されるエタノールの質量 WE [g] は, ●2を考慮し, モル質量 2×12.0 + 6×1.00 + 1×16.0 = 46.0 [g/mol] を用いると,

                WE = 5.00 [mol]×46.0 [g/mol] = 230 [g] = 2.30×102 [g]