答 元の問題へ
問1の答
A : アセトアルデヒド B : アセチレン C : 酢酸 D : エタノール E : 酢酸カルシウム
F : アセトン
●1 化合物Aは, 塩化パラジウム(II)と塩化銅(II)を触媒としてエチレン C2H4 を酸化すると生成するので, その反応式は
CH2=CH2 + (O) → CH3CHO
●2 化合物Aは, 水銀(II)塩を触媒として化合物B に水 H2O を付加すると生成するので, その反応式は, B をアセチレン C2H2 とするならば
CH≡CH + H2O → CH3CHO
上の●1と●2から, 化合物A と B は
A : アセトアルデヒド
B : アセチレン
●3 化合物A のアセトアルデヒドをさらに酸化すると, 脂肪酸の一つである化合物Cが生成するので, その反応式は
CH3CHO + (O) → CH3COOH
よって, 化合物C は
C : 酢酸
●4 化合物A を還元すると, 同じ炭素数を有する化合物D が生成する。化合物D にナトリウム Na を加えると, 水素 H2 を発生する。そこで, その反応式は
CH3CHO + 2(H) → CH3CH2OH
CH3CH2OH + Na → CH3CH2ONa + H2
よって, 化合物D は
D : エタノール
●5 化合物C の酢酸を水酸化カルシウム Ca(OH)2 と反応させると中和反応で化合物E が生成するので, その反応式は
2CH3COOH + Ca(OH)2 → Ca(CH3COO)2 + 2H2O
よって, 化合物E は
E : 酢酸カルシウム
●6 化合物E の酢酸カルシウムを熱分解すると, 化合物F が生成する。化合物F の水溶液は, 中性である。そこで, その反応式は
Ca(CH3COO)2 → CH3COCH3 + CaO2
●7 化合物F は, 工業的では, クメンの酸素 O2 による酸化, つづく希硫酸による分解でも得ることができるので, その反応式は
C6H5-CH(CH3)2 + O2 → C6H5-C(OOH)(CH3)2 → C6H5OH + CO(CH3)2
上の●6と●7から, 化合物F は
F : アセトン
問2の答 CHI3
● ヨードホルム反応…アセチル基 CH3CO- や酸化などでアセチル基を生じる基 CH3CH(OH)- を持つ化合物は, ヨウ素 I2 と塩基の水酸化ナトリウム NaOH などの水溶液を加えて加熱すると, 次の反応式のように, 黄色沈殿のヨードホルム CHI3 を生成する。
CH3CO-R + 3I2 + NaOH → RCOONa + 3HI + CHI3
CH3CH(OH)-R + 4I2 + NaOH → RCOONa + 5HI + CHI3
ただし, 実際にはヨウ素 I2 にさらにヨウ化カリウム KI を加えて行う。その理由は, 次の平衡反応のように, KI・I2生成で難溶性のヨウ素をより多く水に溶解させるためにある。
I2 + KI ⇄ KI・I2
● アセトン CH3COCH3 のヨードホルム反応においては,
CH3COCH3 + 3I2 + NaOH → CH3COONa + 3HI + CHI3
(水溶液に含まれる KI や O2 が関与するヨードホルム反応では, 違った反応式が成立する。)
(B) (a) 化合物Gと化合物Hはベンゼン環を含有する化合物であり, それらの分子式はいずれも C11H14O2 である。
(b) 化合物Gと化合物Hはいずれも, エステル結合を有する。
(c) 化合物Gと化合物Hをそれぞれ水酸化ナトリウム水溶液に加え, 加熱することで, 完全にケン化した。その後, その溶液を室温まで冷却し,
エーテルを加えてよく抽出し, エーテル層と水層を分離した。エーテル層を濃縮すると, 化合物Gから化合物Iのみが得られ, 化合物Hからは何も得られなかった。
次に, それぞれの水層を希塩酸で酸性にしたのち, エーテルを加えて抽出し, エーテル層と水層を分離した。ここで得られたエーテル層を濃縮すると,
化合物Gから化合物Jが, 化合物Hからは化合物Kと化合物Lが得られた。
(d) 化合物Iと化合物Lはそれぞれ不斉炭素原子を一つずつ持つ。
(e) 化合物Kはベンゼン環を含有する。
(f) 化合物Iは化合物Jよりも分子量が小さい。
(g) 化合物G~Lは全て, お互いに構造の異なる化合物である。
問3の答
(image542)
(a)と(b)から,
●1 G と H は, 分子式は
C11H14O2
●2 G と H は, ベンゼン環 を含有する。
C6H6-x-
●3 G と H は, エステル結合を有する。
-CO-O-
(c)から,
●4 G と H をそれぞれ水酸化ナトリウム水溶液に加え, 加熱することで, 完全にケン化した。
(G, H) + NaOH → (カルボン酸のNa塩) + アルコール
●5 ●4のケン化後, (エーテル層-水層)で抽出
エーテル層… G からは, I が抽出された。
H からは抽出されなかった。
●6 ●5の抽出後の水層を酸性にして,
(エーテル層-水層)
で抽出。
●7 ●5の抽出において,
エーテル層… G からは, J が抽出された。
H からは, K と L が抽出された。
●8 (d)から, I と L は
不斉炭素原子 1個
●9 (e)から, K は
ベンゼン環…C6H6-y
●11 (f)から, 分子量において,
J > I
●12 (g)から, G~L は全て
構造の異なる化合物
以上の●1~12を考慮すると,
● G において
分子式 C11H14O2, -O-CO-結合含有, ケン化で RCOONa と R-OH 生成, 生成物 I は油性(エーテル層)で不斉炭素含有。水層を酸性にすると,
油性(エーテル層)の J が生成された。分子量において, J > I.
G の示性式(C*は不斉炭素)を, 次のようにすると,
G : C6H5-CO-O-C*H(CH3)-CH2-CH3
ケン化において, 次のようにすると
C6H5-CO-O-C*H(CH3)-CH2-CH3 + NaOH → C6H5-COONa + HO-C*H(CH3)-CH2-CH3
よって,
油性(エーテル層) I : HO-C*H(CH3)-CH2-CH3
水溶性(水層) : C6H5-COONa
水層を酸性にすると,
C6H5-COONa + HCl → C6H5-COOH + NaCl
生成物 J 油性(エーテル層) : C6H5-COOH
分子量において,
J : C6H5-COOH > I : HO-C*H(CH3)-CH2-CH3
● H において,
分子式 C11H14O2, -O-CO-結合含有, ケン化(過剰のNaOH水溶液)で RCOONa と R-ONa 生成, 生成物は K(ベンゼン含有) と L(不斉炭素含有)で水溶性(水層),
酸性水溶液で K と L は油性(エーテル層)。
H の示性式を, G~L は全て構造の異なる化合物であることを考慮して, 次のようにすると,
H : C6H5-O-CO-C*H(CH3)-CH2-CH3
ケン化において,
C6H5-O-CO-C*H(CH3)-CH2-CH3 + 2NaOH → C6H5-ONa + NaO-CO-C*H(CH3)-CH2-CH3 + 2H2O
生成物の C6H5-ONa と NaO-CO-C*H(CH3)-CH2-CH3 のNa塩は水溶性である。酸性にすると, 油性となる。
C6H5-ONa + HCl → C6H5-OH + NaCl
NaO-CO-C*H(CH3)-CH2-CH3 + HCl → HO-CO-C*H(CH3)-CH2-CH3 + NaCl
よって,
K(水溶性) : C6H5-ONa
L(水溶性) : NaO-CO-C*H(CH3)-CH2-CH3