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問1の答 ( ア ) : b ( イ ) : (f)
分子の運動を基準にした完全気体(分子運動論によるもの)は, 気体が占めている全体積に比べて気体分子自身の体積は完全に無視でき, 分子は剛体のように行動し、気体分子間では反発力や引力はないとして取り扱う。
温度, 体積および圧力を基準にしたボイル-シャルルの法則での理想気体(熱力学によるもの)は, 上述の分子運動論での完全気体と同性質である。その理想気体の状態方程式は,
その圧力と体積を P と V とすると,
PV = nRT
いま, 実在気体を考慮するし, 気体分子の体積を無視しないとすると, 完全気体が自由に動きうる有効空間は減少する。そこで, 完全気体(理想気体)の方程式中の体積は,
分子特有の排除体積 b [L/mol] を使用して,
Vr - nb
と書く必要がある。ただし, Vr は実在気体の体積, n は体積 Vr 中に存在する気体の物質量を表わす。
気体が占める体積の内部にいる分子は均一な力場にあるといえる。しかし容器の器壁に衝突している分子と隣接する内部の分子間では, 前者の分子が後者の分子によって内側に引き寄せられ,
器壁を押す力を弱める。
この内側に引き寄せる力の強さ Pr' は, 器壁に衝突する分子数(平均的にνとする)と隣接の分子数(平均的にνとする)の積 ν×ν= ν2 に比例する(この積は統計的に前者の分子と後者の分子が出会う最大の数に相当する)。
Pr' ∝ν2
一定温度では, νは気体 1 mol の体積 Vr/n に逆比例するから
ν2 ∝(n/Vr)2 = n2/Vr2
したがって, 分子特有の比例定数 a [Pa・L2/mol2] を考慮すると, 内側に引き寄せる力の強さ Pr' は次のようになる。
Pr' = n2a/Vr2
そこで, 理想気体の方程式中の圧力に合せるためには, 実験圧(実在圧) Pr に Pr' を加えねばならない。
Pr + n2a/Vr2
かくして, ファンデルワールスの状態方程式は次のように記述される。
(Pr + n2a/Vr2)(Vr - nb) = nRT
この式は, 通常の密度の実在気体においてよく適合するが, 高い密度(低温, 高圧)ではずれてくる。
問2の答
( A ) : PV ( B ) : 大きく ( C ) : 小さく ( D ) : (Pr + a/Vr2)(Vr - b)
問3の答 (a) T1<T2<T3
問4の答
分子の熱運動が高温により激しくなると, 分子間力が小さくなり, 理想気体に近ずく。
問1の解説を参考にすると, 理想気体の状態方程式を基礎にして組み立てられたファンデルワールスの状態方程式はかなり高い密度(高圧, 低温)ではずれてくる。
言い換えるならば, 高い密度によって気体の分子間距離が通常よりかなり近距離になると, 分子間力が大きく, 同時に, 分子の体積が自由に動きうる分子の有効空間を減少させる。このことは,
理想気体を基礎にしたファンデルワールスの状態方程式はずれが大きくなることを意味する。
問5の答 2.45×106 [Pa]
ファンデルワールスの状態方程式は, 1 mol の気体においては,
(Pr + a/Vr2)(Vr - b) = RT
変形すると,
Pr + a/Vr2 = RT/(Vr - b)
よって,
Pr = RT/(Vr - b) - a/Vr2 …(i)
式(i)に次の値を代入して計算すると,
R = 8.31×103 [Pa/(K・mol)]
T = 27 + 273 [K]
Vr = 1 [L]
a = 1.41×105 [(Pa・L2)/mol2]
b = 3.91×10-2 [L/mol]
Pr = (8.31×103)(27 + 273)/{1 - (3.91×10-2)} - (1.41×105)/12
= (2.493×106)/0.9609 - (1.41×105)
= 2.594×106 - 1.41×105
= 2.594×106 - 0.141×106
= 2.453×106 [Pa]