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問1の答  下の図I


 グルコースやフルクトースなどの単糖でα型かβ型を決めるポイントは, その6員環がつくる面において, ヒドロキシ基-OHが表側にあるか裏側にあるかを注目する必要がある(図および図I〜III参照)。


問2の答  Cu2O

  [理由]  フェーリング溶液中には, テトラアクア銅(II)イオン [Cu(H2O)4]2+ が含まれており, それが還元性のアルデヒド型グルコースやケトン型フルクトースにあうと, 次のような酸化還元反応で酸化銅(I) Cu2O の赤色沈殿が生じる。

  R-CHO + 2[Cu(H2O)4]2+ → R-COOH + Cu2O + 4H+ + 6H2O

 または,

  R-CO-CH2OH + 4[Cu(H2O)4]2+ → R-COOH + HCOOH + 2Cu2O + 8H+ + 12H2O


 グルコースとフルクトースの水溶液には, 鎖状分子が環状分子と共に平衡状態で存在している(下の図参照)。その鎖状分子において, グルコースでは, 次のように還元性の鎖状アルデヒド型分子が存在する:

  R-CHO

 フルクトースでは, 次のように還元性の鎖状ケトン型分子が存在する:

  R-CO-CH2OH

 フェーリング溶液は, A液(結晶硫酸銅(II) CuSO4の水溶液)およびB液(酒石酸カリウムナトリウム KNaC4H4O6 と水酸化ナトリウム NaOH の緩衝水溶液)の2つの水溶液から成り立っている。
 A液とB液を混合させると, 一定量の青色の錯イオンのテトラアクア銅(II)イオン [Cu(H2O)4]2+ が生じる。直ちに, この混合水溶液に, アルデヒド型やケト型の還元性物質を加えると, 酸化還元反応が起きて, 次のように酸化銅(I) Cu2O の赤色沈殿が生じる。したがって, フェーリング溶液は還元性物質の確認に使われる。

  R-CHO + 2[Cu(H2O)4]2+ → R-COOH + Cu2O + 4H+ + 6H2O

 または,

  R-CO-CH2OH + 4[Cu(H2O)4]2+ → R-COOH + HCOOH + 2Cu2O + 8H+ + 12H2O

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問3の答  

 ● スクロース分子はα-グルコース分子中の還元性アルデヒド型鎖状分子を生じる炭素原子とβ-フルクトース中の還元性ケトン型鎖状分子を生じる炭素原子の脱水の縮合結合であるために還元性の分子が形成されなくなる。
 スクロースは希硫酸の中で穏やかに加熱処理すると, 加水分解され, 還元性鎖状分子を生じるα-グルコースとβ-フルクトースが形成される。


 ● myo-イノシトールは, その分子構造中の6員環には酸素原子がなく, 希硫酸中の加熱によって, 加水分解からの還元性のアルデヒド型やケトン型の分子を形成しない。


 スクロース分子の構造は下の図 III (f) に相当する。図IIIに示すように, スクロース分子は, α-グルコース(6員環)とβ-フルクトース(5員環)が脱水縮合した二糖であるが, その結合は, α-グルコース(e)中の還元性アルデヒド型鎖状分子を生じる炭素原子(番号1)とβ-フルクトース(d)中の還元性ケと型鎖状分子を生じる炭素原子(番号2)の結合である(上の図も参照)。
 この結合のために, スクロースでは, 還元性のアルデヒド型やケトン型の分子が形成されなくなる。したがって, スクロースは還元性がなくフェーリング液とは反応しない。
 しかしながら, スクロースを希硫酸の中で穏やかに加熱処理すると, 加水分解して, 還元性アルデヒド型鎖状分子を生じるα-グルコースと還元性ケトン型鎖状分子を生じるβ-フルクトースが形成される。そのために, フェーリング液と反応するようになる。
 一方, myo-イノシトールの分子構造中の6員環には酸素原子がなく, したがって, myo-イノシトールを希硫酸の中で穏やかに加熱しても, グルコースやフルクトースのように還元性アルデヒド型や還元性ケトン型の分子を形成することは不可能である。このことは, myo-イノシトールは希硫酸の中で穏やかに加熱しても還元性がなくフェーリング液とは反応しない。

 図IIは, 6員環のフルクトースから5員環のフルクトースが生じるプロセスを示している。i のプロセスは, 6員(a)において, 炭素原子5が6員環の酸素原子と結合して5員環(b)を形成し, 同時に炭素原子6と6員環の酸素原子との結合が切断され, 炭素原子5と結合しているヒドロキシ基-OHが炭素原子6に結合する。結果として, 5員環のフルクトースが生じることになる。

 ここで, ii のプロセスと iii のプロセスは, 5員環のフルクトースに対称操作を施したものである。ii は(b)の炭素原子2-5に並行な回転軸で180度回転, iii は(c)の炭素原子2-3-5に垂直な回転軸で180度回転したものである。結果として, (d)の5員環のフルクトースが生じるが, この操作を施した理由は, 図IIIのグルコースとフルクトースの脱水の縮合反応を考えやすくすることにある。
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問4の答  下の図V


 図IVは, イノシトールの六員環を六角形, その環面の表側にあるヒドロキシ基-OH を●, および水素原子基-Hを○で表わしている。環面の裏側のヒドロキシ基と水素原子基は, 表側の基が決まれば, 決まるので表記されていない。また六員環は, 椅子型と船型があるが, エネルギー的にあまり差がないとして同一とする。
 ここで, 六角形の「かど」で, まず○を六角形の「かど」に全部配置し, 次に幾つかの●を一部○と入れ替えて右まわりに順列する。結果として, その順列は, 図IVが示しているように, 14種類である。

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 その中で, 同じものをまとめると, @〜Hの9種類に分けられる。

  @ 1 と 14 …図2の b に相当

  A 2 と 13 …図2の c に相当

  B 3 と 10 …図2の d に相当

  C 4 と 11 …図1の a に相当

  D 5 と 12 …図2の e に相当

 その他に, 次の4種類がある。

  E 6,  F7,  G 8,  H 9

 ここで, E〜H の構造を, 図1や図2の表記方法を参考にして書くと次の図Vなる。なお, FとGは不斉炭素原子の存在で鏡像(光学異性体)の関係にある。

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