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問1の答 [構造式]…下の「図 構造式」の「問1答」を見て下さい。
[示性式]
(ア)C5H12 (イ)C6H6 (ウ)C6H5NH3Cl (エ)C6H5COONa (オ)C6H5OH
● 混合物中の含まれる各有機化合物の示性式とその分子量は次にようになる。ただし, 原子量は H = 1.0, C = 12.0, N = 14.0
とする。
ペンタン : 示性式 C5H12 分子量 12×5 + 1×12 = 72.0
ベンゼン : 示性式 C6H6 分子量 12×6 + 1×6 = 78.0
アニリン : 示性式 C6H5NH2 分子量 12×6 + 1×7 + 14×1 = 93.0
フェノール : 示性式 C6H5OH 分子量 12×6 + 1×6 + 16 = 94.0
安息香酸 : 示性式 C6H5COOH 分子量 12×7 + 1×6 + 16×2 = 122.0
ここで, 各物質の沸点が分かれば, 当然のことではあるが, ただちに(ア)と(イ)の答を決めることができる。 しかしはっきりしない場合には,
沸点は, 分子の間の力と分子形に関連し, 分子の間の力では, 主として分子の質量[g] すなわち分子量に対応し, 分子の極性がさらに影響を与える。
そこで, 上述を考慮すると, 各化合物の沸点は次のように考えられる。ただし, 混合物では, 各化合物間での反応は起こらないものとし, 各化合物は独立的に存在しているとする。
@沸点が最も低いものは … ペンタン:(ア) C5H12 (電荷のかたよりのない鎖状分子である。したがって, 鎖状で無極性で飽和結合の分子なので, 分子の間の結合が弱く沸点を低める。このことは 50℃で分留可能を意味する)
A沸点が@に続いて高いものは … ベンゼン:(イ) C6H6 (無極性の芳香族の環状分子で, 不飽和性の結合があり沸点を@より高める。このことは50℃では分留できず 90℃で分留可能を意味する)
B沸点がAに続いて高いものは … アニリン, フェノール(芳香族の環状分子で, 不飽和性の結合があり, アミノ基やヒドロキシル基が存在するために極性分子となり,
分子の間の結合を強め, 沸点をさらに高める。90℃では分留できない)
C沸点が最も高いものは … 安息香酸(芳香族の環状分子で, 不飽和性の結合があり, 強い極性を引き起こすカルボキシル基が存在するために, 混合物の中で最も強い極性分子となり, 分子の間の結合が強まり, 沸点をさらに高める)
なお, 混合物中の各化合物の沸点は次のようになる。
ペンタン b.p.:36.1℃ ベンゼン b.p.:80.1℃ アニリン b.p.:184.6℃ フェノール b.p.:181.8℃ 安息香酸
b.p.:250.0℃
問題本文の図1において, 50℃と90℃で分留後, 残った混合物(アニリン, フェノール, 安息香酸)にジエチルエーテルと塩酸の混合溶液を加えてよく振り混ぜて静置すると,
混合物中の塩基性のアニリンは塩酸と次のように反応して水溶性の塩の塩酸アニリン (ウ) : C6H5NH3Cl が生じ, 水層に移動する:
C6H5NH2 + HCl → C6H5NH3Cl
油性のフェノールと安息香酸は混合のままで有機溶媒のジエチルエーテル層に移動する。このエーテル溶液に炭酸水素ナトリウム水溶液を加えてよく振り混ぜて静置すると,
酸性の強いカルボキシル基をもつ安息香酸が炭酸水素ナトリウムと次のように反応して水溶性の塩の安息香酸ナトリウム (エ) : C6H5COONa を生じ, 水層に移動する:
C6H5COOH + NaHCO3 → C6H5COONa + CO2 + H2O
したがって, エーテル層には, 油性のフェノール (オ) : C6H5OH が存在することになる。
問2の答 [構造式]…下の「図 構造式」の「問2答」を見て下さい。
[示性式]
CH3-CH2-CH(CH3)-CH3 CH3-C(CH3)2-CH3
● 構造異性体の定義は次のとおりである : 「同じ組成と同じ分子量をもった複数の化合物が, 異なった構造式で表される場合に互いに構造異性体であるという」
そこで, C5H12 の分子式において, 3種類の構造異性体を官能基を含む示性式で表わすと,
CH3-CH2-CH2-CH2-CH3 … ペンタン
CH3-CH2-CH(CH3)-CH3 … 2-メチルブタン
CH3-C(CH3)2-CH3 … 2,2-ジメチルプロパン
問3の答 [構造式]…下の「図 構造式」の「問3答」を見て下さい。
[示性式]
(カ)C6H5CH(CH3)2 (キ)C6H5C(CH3)2OOH (ク)(CH3)2CO
● 問題本文の図2において, (ア)のベンゼン C6H6 は, 最初のステップで, プロペン CH2=CH-CH3 と付加反応して, 次のようにクメン (カ) : C6H5CH(CH3)2 を生じる;
C6H6 + CH2=CH-CH3 → C6H5CH(CH3)2
2ステップで, 生成されたクメンに酸素 O2 を加えて酸化すると, 次のようにクメンヒドロぺルオキシド (キ) : C6H5C(CH3)2OOH を生じる;
C6H5CH(CH3)2 + O2 → C6H5C(CH3)2OOH
最後の3ステップで, 生成されたクメンヒドロぺルオキシドを酸の希硫酸 H2SO4 を加えて分解すると, 次のようにフェノール (オ) : C6H5OH とアセトン (ク) : (CH3)2CO を生じる;
C6H5C(CH3)2OOH → C6H5OH + (CH3)2CO
問4の答 [構造式]…下の「図 構造式」の「問4答」を見て下さい。
[示性式]
(ケ)C6H5OCOCH3 (コ)C6H2(Br3)OH
● フェノール (オ) : C6H5OH は無水酢酸 (CH3CO)2O でアセチル化(化合物にアセチル基 CH3CO-を結合させること)されると, 次のようにエステルの酢酸フェニル (ケ) : C6H5OCOCH3 が生成される;
C6H5OH + (CH3CO)2O → C6H5OCOCH3 + CH3COOH
フェノール : C6H5OH は臭素 Br2 で置換されると, 次のように 2,4,6-トリブロモフェノール (コ) : C6H2(Br3)OH が生成される;
C6H5OH + 3Br2 → C6H2(Br3)OH + 3HBr
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