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問1の答1 分子量:122
ヒント
分子量Mの非電解質物質を溶媒W [kg]に少量w [g]を溶かしてその凝固点降下度Δt [K]を測定すると, 次式が成立する。ただし, Kfはモル凝固点降下[K・kg/mol]を表す。
Δt = Kf×(w/M)×(1/W)
したがって, [物理的性質]の(1)と(3)から, Aでは
1.38 = 6.90×(0.244/M)×(1/0.01) よって, M = 122
Bでは,
2.07 = 6.90×(0.366/M)×(1/0.01) よって, M =
122
A, Bとも分子量は同値となる。
問2の答2 分子式 C8H10O
ヒント
●[化学的性質]の(2)から, 305mgのAでは, 完全燃焼で, 二酸化炭素が880mg, 水が225mg生じたので,
A中の
炭素の質量は…880×(C/CO2) = 880×(12/44) = 240 [mg]
水素の質量は…225×(2H/H2O) = 225×(2/18) = 25 [mg]
[化学的性質]の(1)から, Aの中には酸素が存在していることを意味するので,
酸素の質量は…305-(240 + 25) = 40 [mg]
以上の結果から, 炭素, 水素, 酸素のモル比は
(240/12):(25/1):(40/16) = 20:25:2.5 = 8:10:1
したがって, 組成式は…C8H10O 式量は…12×8 + 1×10 + 16 = 122
一方, 問1の答から, 分子量は122なので
(分子量)/(式量) = 122/122 = 1
よって, 式量の1倍が分子量になっている。これより分子式は組成式 C8H10O と同じになる。
●同様にして, B中の
炭素の質量は…528×(C/CO2) = 528×(12/44) = 144 [mg]
水素の質量は…135×(2H/H2O) = 135×(2/18) = 15 [mg]
酸素の質量は…183-(144 + 15) = 24 [mg]
以上の結果から, 炭素, 水素, 酸素のモル比は
(144/12):(15/1):(24/16) = 12:15:1.5 = 8:10:1
Bの分子式はAと同じでC8H10Oとなる。
問3の答3 AとBは構造異性体の関係にある。
Aは次のようにさらにD型とL型の光学異性体(立体異性体のひとつ)が存在する。
ヒント
●原子価(化合物中の原子の結合うで数に相当)は, 一般に, C:4価, H:1価, O:2価である。
●酸素を含む有機化合物には, R, R'を炭化水素などの官能基として一般式で表すと次のようなものがある…ROH:アルコール,
RCHO:アルデヒト, RCOR':ケトン, RCOOH:カルボン酸, RCOOR':エステル, (RCO)2O:酸無水物, ROR':エーテルなど
(a) A, Bはともに電離しないで中性である…[物理的性質]の(3)と[化学的性質]の(3)による。
よって, 酸素を含む有機化合物の中で, ROH:アルコール, RCHO:アルデヒト, RCOR':ケトン,
RCOOR':エステル, ROR':エーテルが該当する。
(b) A, Bはともに[化学的性質]の(4)で金属ナトリウムと反応させると水素が発生した。よって,
次の反応式によりA, Bはアルコールと考えられる。
2ROH + 2Na → 2RONa + H2
○アルコールでは, 次のように一般的に脱水素される場合は, 1級アルコールと2級アルコールで,
3級アルコールは脱水素されない(下の式中のRは炭化水素などの官能基を意味する)。
1級アルコール…RCH2OH → RCHO (アルデヒドが生じる)
2級アルコール…R2CHOH → RCOR (ケトンが生じる)
3級アルコール…R3COH → 脱水素されない
(c) [化学的性質]の(5)でAとBにそれぞれ濃硫酸を加えて加熱するといずれも分子内脱水が生じてスチレン
C6H5CH=CH2 が生成した。これよりAとBの分子中ににフェニル基 C6H5-を含むことが分かる。
●(a)〜(c)よりAとBはアルコールに相当し示性式(官能基を含む)で表すと
C6H5CH(OH)CH3 C6H5CH2CH2OH
●[物理的性質]の(2)から, Aには不斉炭素原子(Cに結合している4個の官能基が全て異なる)がありBにはない。したがって,
C6H5CH(OH)CH3…A C6H5CH2CH2OH…B
●構造式は次のようになる。これより, AとBは, 分子式は同じであるがOH基の位置が異なるので構造異性体の関係にある(001
1章●A国立大入試○類題3-3問4[ステップ問題1]4参照)。
(image138)
また, Aは不斉炭素原子を含み光学活性であるので, 下図に示すように2種のD型とL型の光学異性体(立体異性体のひとつ)が存在する(001
1章●A国立大入試○類題3-3問4[ステップ問題1]参照)。
(image139)
問4の答4 A:α-フェニルエチルアルコール, B:β-フェニルエチルアルコール
ヒント
一般に, 有機化合物命名法として
○飽和鎖式炭化水素CnH2n+2は, 慣用語, ギリシャ語(一部ラテン語)の数詞に接尾語"〜ane"(アン)をつける。
アルキル基CnH2n+1は, 飽和鎖式炭化水素のアルファベット名の語尾"〜ane"を"〜yl"に変える。
(例) 飽和鎖式炭化水素…C2H6:ethaneエタン, C3H8:propaneプロパン, C6H14:hexaneヘキサン
基…C2H5 ethyl エチル, C3H7 propyl プロピル, C6H13 hexyl ヘキシル
○アルコール:炭化水素の水素原子Hの代わりにOHを付けてアルファベット名の語尾に"〜ol"(オール)をつける。
(例) C2H5OH:エタノール(基官能命名法ではエチルアルコール),
CH3CH2CH2OH:1-プロパノール(式の炭素原子において, 端から順に 1, 2, …またはα, β,…と記す,
基官能命名法ではプロピルアルコールまたはn-プロピルアルコール),
CH3CH(OH)CH3:2-プロパノール(基官能命名法ではイソプロピルアルコール)
○ Aの C6H5CH(OH)CH3 は, エタノール:CH3CH2OHのヒドロキシル基-OH側から炭素原子Cの1番目の水素原子Hの代わりにフェニル基C6H5-が結合していることより, その名称は
1-フェニルエタノール
Bの C6H5CH2CH2OH では,
2-フェニルエタノール
上の名称以外に, 種々の名称が存在している(構造式のどの部分を注目するかによって名称が違ってくる)。
○ エタノールのかわりにエチルアルコールの名称で考えると, 炭素原子Cをヒドロキシル基-OH側から順にα,
β, …と記してよいから
Aは, α-フェニルエチルアルコール(第2級アルコール…ヒドロキシル基-OH側から1番目の炭素原子Cに水素原子以外のフェニル基-C6H5とメチル基-CH3基の2つの基が結合している),
Bは, β-フェニルエチルアルコール(第1級アルコール)
問5の答5
(1)A (2)ヨードホルム (3)黄 (4)C6H5CH(OH)CH3 (5)CHI3 (6)B (7)ケトン (8)K2Cr2O7 + 4H2SO4
(9)C6H5COCH3 (10)Cr2(SO4)3 + K2SO4 + 7H2O (11)カルボン (12)C6H5CH2CH2OH
(13)2K2Cr2O7 + 8H2SO4 (14)C6H5CH2COOH (15)2Cr2(SO4)3 + 2K2SO4 + 11H2O
ヒント
●塩基性NaOH水溶液にヨウ素I2を反応させると, A:C6H5CH(OH)CH3はヨードホルムCHI3の黄色沈殿を生じる。その反応式は次のようになる。
C6H5CH(OH)CH3 + 3I2 + 4NaOH → CHI3 + C6H5COONa + 3NaI + 3H2O
B:C6H5CH2CH2OHは反応しない。
ニクロム酸カリウムK2Cr2O7の希硫酸H2SO4溶液加えて加熱すると, 酸化されてAはケトンC6H5COCH3を生じる。反応式で書くと,
3C6H5CH(OH)CH3 + K2Cr2O7 + 4H2SO4
→ 3C6H5COCH3 + Cr2(SO4)3 + K2SO4 + 7H2O
Bはカルボン酸C6H5CH2COOHを生じ, 反応式で書くと,
3C6H5CH2CH2OH + 2K2Cr2O7 + 8H2SO4
→ 3C6H5CH2COOH + 2Cr2(SO4)3 + 2K2SO4 + 11H2O
●ヨードホルム反応…有機化合物 CH3CH(R)OH (アルコール)またはCH3COR (ケトン)の塩基性NaOH水溶液にヨウ素I2を加え加熱するとヨードホルムCHI3の黄色沈殿を生じる。