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問1の答…トウモロコシの種子から得られた白い粉は, 下図(image105)の構造式で表されるアミロペクチン(79%)とアミロース(21%)の2種のデンプンから成り立つ。分子式は (C6H10O5)nで多糖類の天然高分子化合物のひとつである。
    
デンプンは, 上の簡略図に示したように,分子内の水素結合によってらせん状になっており, 水溶液中にヨウ素が存在すると, そのらせん構造の中へいくつかのヨウ素分子I2を取り込んで青色の包接化合物をつくる。いわゆるヨウ素デンプン反応を示す。加熱すると元の状態にかえり青色が消失する。水溶液に触媒の希硫酸を加えて加熱すると, 加水分解され単糖類のα-グルコース C6H12O6になる。
                        (C6H10O5)n + nH2O → nC6H12O6
生じたα-グルコース C6H12O6は, 水溶液中で, 下図(image106)のα-グルコース, β-グルコース, アルデヒド型グルコースの3種の異性体が平衡状態で存在する。
  
この3種の異性体の中でアルデヒド型グルコースは還元性のアルデヒド基をもつので, フェ−リング液を加えて加熱すると, 赤色の酸化銅(I) Cu2Oを生じる。


問2の正解…67.2 L


ヒント
●水溶液 1.00 kg中のデンプン (C6H10O5)nの物質量[mol] は, 分子量が 162n なので,  
                      (1000×0.243)/162n = 1.5/n [mol]
デンプンは次式のように加水分解して α-グルコース C6H12O6 を生じる。
                      (C6H10O5)n + nH2O → nC6H12O6
よって, α-グルコース C6H12O6 の物質量[mol] は, (1.5/n)×n = 1.5 mol

●グルコース水溶液に複合酵素系のチマーゼを一定条件で加えるとアルコール発酵して二酸化炭素CO2が次式のように発生する。           C6H12O6 → 2C2H5OH + 2CO2
したがって, 発生する二酸化炭素の物質量[mol] は, 1.5×2 = 3 [mol]  標準状態での体積Lは, 二酸化炭素を理想気体として
                       22.4×3 = 67.2 L(答)


問3の正解…25.7℃


ヒント

●1mol のグルコースがアルコール発酵によって発生する熱量をQ kJ とすると次式が成立する。
               C6H12O6(s) = 2C2H5OH(l) + 2CO2(g) + Q kJ …@
一方, グルコースと液状のエタノールの燃焼熱は, それぞれ, 2800 kJ/mol, 1368 kJ/mol であるから
             C6H12O6(s) + 6O2(g) = 6CO2(g) + 6H2O(l) + 2800 kJ …A
             C2H5OH(l) + 3O2(g) = 2CO2(g) + 3H2O(l) + 1368 kJ …B
よって, A-B×2
           C6H12O6(s) = 2C2H5OH(l) + 2CO2(g) + (2800 - 1368×2) kJ …C
@とCから
                  Q = (2800 - 1368×2) = 64 kJ
●気体発生終了後の水溶液の質量gは, 二酸化炭素が 3 mol (44×3 = 132g:問2参照)発生したので
                      1000 - 132 = 868 g
この水溶液の上昇温度をΔt℃とすると 
                 868×4.30×Δt = 64×1.5×1000
                         Δt = 25.7℃(答)


問4の答

 セルロースは天然高分子化合物である。セルロース分子構造は, 下図(image107)に示すように, β-グルコースの脱水によるβ-1,4-グリコシド結合で形成されている。分子間の水素結合で繊維状になっている。植物の種子や果実などに多く含まれるデンプンに対して, 植物細胞の細胞壁の主成分で特に植物の体形保持の役目を担っている。1次構造において, アミロースの分子構造と比較すると, セルロースは立体異性体に類似する。