●元の問題


問1の解答・・・151 m3


ヒント

@炭化カルシウムCaC2は, 次式から CaCO3:1 mol と C:3 mol とが反応して 1 mol できる。
                     CaCO3 → CaO + CO2  
                    CaO + 3C → CaC2 + CO
AアセチレンC2H2は次式のようにカーバイトに水を反応させると生じる(下線部A)。
                  CaC2 + 2H2O → C2H2 + Ca(OH)2
@とAを考慮して, 生成される アセチレンC2H2の物質量を求め, その物質量と問題で与えられている各値を次のファン・デル・ワールス式に入れてアセチレンの体積Vを求める。
                    (P + n2a/V2)(V - nb) = nRT


[ステップ問題]を試してみませんか?

●[ステップ問題1]1


問2の解答・・・アセトアルデヒド CH3CHO

反応では水銀触媒が使用される場合があるので廃液などの処理には最善の注意が重要となる。


問3の解答・・・ポリ塩化ビニル


ヒント

● 
レッペ反応には, 例として次のような反応がある。
@ビニル化…(例) C2H2 + HCl → CH2CHCl(塩化ビニル) 
           C2H2 + CH3COOH → CH2CHOOCH3(酢酸ビニル)
Aエチニル化…(例) C2H2 + HCHO → HOCH2C≡CH(エチニルカルビノール)
           HOCH2C≡CH + HCHO → HOCH2C≡CCH2OH(2-ブチン−1,4−ジオール)
        CH2≡C- の不飽和炭化水素置換基を「エチニル基」という。
B環化…(例) 3C2H2 → C6H6(ベンゼン)  4C2H2 → C8H8(シクロオクタテトラエン)
Bカルボニル化…(例) 4C2H2 + Ni(CO)4 + 2HCl + 4H2O → 4CH2=CHCOOH(アクリル酸)+ NiCl2 + H2
           
生成物中にカルボニル基 C=O が入る。

CH2=CH- の不飽和炭化水素置換基を「ビニル基」という。

工業的には, 気相反応において, 加圧, 水銀触媒下でアセチレンに塩化水素を付加させると, 次の化学反応式のように塩化ビニル CH2=CHCl が生成される(元の問題中のレッペ反応@に相当)。
                      CH≡CH + HCl → CH2=CHCl
さらに塩化ビニル CH2=CHCl を付加重合させると次の反応式のように高分子のポリ塩化ビニル [-CH2-CHCl-]nができる。
                      n CH2=CHCl → [-CH2-CHCl-]n


問4の解答・・・221 kg


ヒント

● 次の反応式に示すように, 3 molのアセチレンの環化反応で1 molのベンゼンが生成される。
                 3C2H2 → C6H6
問1からアセチレンは10 kmol 生成された。したがって, 上式よりベンゼンは 10×(1/3) kmol できることになる。正味 85%から 10×(1/3)×0.85 = 2.833 kmol
ベンゼンの質量は, 分子量が78 から, 78×2.833 = 221 kg


問5の解答・・・d


ヒント

● ベンゼンは, 一般的にはb またはc (ケクレ式)で表わすが, ベンゼン環の6個の炭素原子間距離は, アルカンの単結合とアルケンの二重結合のほぼ中間の1.40Åで全て同じなのでベンゼンの性質を表わすには解答のd の方 が適する。また, e も適合するが, 他の非ベンゼン系芳香族性化合物にも使用されるので混乱を避けるために d がよい。

●最低エネルギー状態のベンゼン(ベンゼン環:正六角形)の6個の炭素間結合は全て同等の性質をもつ…ベンゼンの6個の炭素原子間距離:1.40Å。
その他の有機化合物の炭素原子間距離は
         アルカンの単結合:1.54Å, アルケンの二重結合:1.34Å, アルキンの三重結合:1.20Å
原子間距離の比較から, ベンゼン環の6個の炭素間結合は, 全て単結合と二重結合の中間的性質をもつことになる。このことは, ベンゼン環中において, 単結合をはさんだ飛び飛びの二重結合(共役二重結合)中には, 動きやすいπ電子が存在し, その電子が正六角形のベンゼン分子骨格にそって全体に広がってベンゼンを最低エネルギー化し, 炭素間距離を単結合と二重結合の中間の等間隔にすることを意味する。下図はベンゼン分子 C6H6の構造(原子は全て同一平面上に存在)…炭素原子間距離:1.40Å, 炭素水素原子間距離:1.08Å

                      (image5)

●ベンゼンは, 一般的にはb またはc (ケクレ式)で表わすが, ベンゼン環の6個の炭素原子間距離は, アルカンの単結合とアルケンの二重結合のほぼ中間の1.40Åで全て同じなのでベンゼンの性質を表わすには解答のd の方 が適する。また, e も適合するが, 他の非ベンゼン系芳香族性化合物にも使用されるので混乱を避けるために d がよい。


問6の解答…bとc


ヒント

●最低エネルギー状態のベンゼンの6個の炭素間結合は全て同等の性質をもち, その距離は, 1.40Åで, アルカンの単結合とアルケンの二重結合のほぼ中間値である。

●上述により, ベンゼンは炭素原子間の3つの結合(単結合, 二重結合, 三重結合)を用いて表わすことは不可能である。そこで, 共鳴構造…重ね合せをするための二つ以上の極限構造…を用いて表わす。ただし, 原子配置は一致していなければならない。したがって, この問6においては, ベンゼンは, ケクレ式 b と c の2つの共鳴構造を用いて, その重ね合せの中間状態で表わすことになる…共鳴構造で表わしたベンゼンの最低エネルギー状態は共鳴エネルギーの値だけ低くなっている。
                          (image7)