1章A 類題1-1(071909) TOP-A
[問題].次の文章を読んで, 問1~5に答えなさい。答の数値は有効数字2桁とする。計算のために必要があれば, 次の値を用いる。
原子量:H1.00, C12.0, O16.0, Ca=40.1, log3.04=0.483, log4.47=0.650 , log4.38
= 0.641, 10-4.5 = 3.16×10-5
最近, 酸性雨による湖や貯め池の生態系への影響, 森林などの枯れ葉現象, 農作物の減収, (A)セメントなどの建造物の浸食などが考えられている。
雨をpHの観点から考えると, 雨が純粋の水であればpHは7であるが, 大気中の種々の気体が雨に溶け込むために7にはならない。いま大気が窒素,
酸素, 二酸化炭素だけによって成り立っているとすると, その雨水のpHは理論的に 次のようにして求められる。
雨水の中の水分子H2OはH+とOH-に電離しているので電離平衡定数K (mol/l)は
K = [H+][OH-]/[H2O]…(1)
よって
K[H2O] = [H+][OH-] = Kw…(2)
ここで, [H2O]は[H+]と[OH-]に比べて非常に大きな値から, 一定温度ではKwは一定値をしめす。(B)雨水に溶解する二酸化炭素の物質量は, 二酸化炭素の大気中の分圧に比例するからその分圧をPCO2 (Pa)とすると, 単位(1リットル)の雨水において
[CO2] = k1PCO2 …(3) k1 {mol/(l・Pa)}は定数
溶解した二酸化炭素は水と反応して炭酸を生じて次のような平衡状態になる。
CO2 + H2O ⇄ H2CO3
この平衡定数をKCO2とすると
KCO2[H2O] = [H2CO3]/[CO2] = k2 …(4) k2は定数.
(3)と(4)式から次式が成立する。
[H2CO3] = kPCO2 …(5) ただし k = k1k2.
二酸化炭素の溶解でできる炭酸は雨水中で次のように2段階で電離してH+を生じる。
第1段階 : H2CO3 ⇄ H++ HCO3-…(6)
第2段階 : HCO3- ⇄ H++ CO32-(この電離は小さいため無視).
(6)式の平衡定数Kaは次の式で表わされる。
Ka = [H+][HCO3-]/[H2CO3] …(7)
ここで, 雨水中のイオンの正電荷と負電荷の和は等しいと考えられるので,
[H+] = [HCO3-] + [OH-] …(8)
したがって, 雨水中のH+のモル濃度は次の式で表される。
[H+] = (ア)…(9)
Kwの値は小さいので, (9)式の[H+]は次の式で書かれる。
[H+] = (Ka・kPCO2)1/2…(10)
この式から
pH = (イ)…(11)
この(11)式を用いると, 窒素, 酸素, 二酸化炭素だけからできている大気中の雨水でも酸性であることがわかる。
大気中で多量の石油や石炭などが燃焼すると, 硫黄酸化物や窒素酸化物が生成され水との反応で強酸の(ウ)や硝酸などになることがある。これらの酸は雨水に溶け込みpHを(イ)よりもさらに低くして酸性雨となる。
問1 (2)式のKwの値は, 25℃でいくらですか。
答は
10-12 10-13 10-14 10-15
問2 (ア)と(ウ)に最も適切な式と語句を入れなさい。
答は
(ア)(KakPCO2+Kw)1/2(ウ)炭酸 (ア)(KakPCO2-Kw)1/2(ウ)硫酸
(ア)(KakPCO2+Kw)1/2(ウ)硫酸 (ア)(KakPCO2-Kw)1/2(ウ)炭酸
問3 (イ)のpHの値を求めなさい。ただし PCO2 = 30.4(Pa), 雨水の温度25℃でKa = 4.47×10-7mol/l, k = 4.38×10-7{mol/(l・Pa)}とする。
答は
2.6 3.6 4.6 5.6 6.6
問4 下線部(A)の変化を硝酸を含む酸性雨と生石灰の単味セメントとの化学反応式で書きなさい。また (B)に相当する法則名は何ですか。
答は
1. (A)Ca(OH)2 + 2HNO3 → Ca(NO3)2 + 2H2O(B)ヘスの法則
2. (A)CaO + 2HNO3 → Ca(NO3)2 + H2O(B)ヘンリーの法則
3. (A)CaCO3 + 2HNO3 → Ca(NO3)2 + H2O + CO2(B)ヘンリーの法則
問5 主に硝酸を含むpH 4.50の酸性雨5.13 × 103 m3が, 貯め池に降り注いだとする。この酸性雨から 貯め池に入り込んだ硝酸をすべて中和するためには, 消石灰は何kg必要ですか。ただし, 酸性雨中の硝酸以外の酸性物質は無視する。
答は
2.0kg 3.0kg 5.0kg 6.0kg 7.0kg