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問1の答
構造式は, 下図Iのようになる。
実験@から
化合物 A C9H11NO(1mol) → (加水分解) → 化合物 B(1mol) + 化合物 C(1mol)
実験Aから
ニトロベンゼン C6H5NO2 → (還元) → アニリン C6H5NH2 (さらし粉溶液で赤紫色を呈する):化合物 B に相当する。したがって, @から, 次式が考えられる :
C9H11NO (A) + H2O → C6H5NH2 (B) + C3H6O2 (C)
そこで, 化合物Aの中に, 酸アミド結合-NH-CO-を考えると, A の示性式は
A : C6H5-NH-CO-CH2-CH3 (分子式:C9H11NO)
実験Bから
アルコール D → (酸化) → C3H6O2 (C)
そこで, アルコール D は次の化学式が考えられる :
C3H7OH (D, 分子式:C3H8O)
よって
CH3-CH2-CH2-OH (アルコール D, 分子式:C3H8O) → (酸化) → CH3-CH2-CO-OH (カルボン酸 C, 分子式:C3H6O2)
実験Cから
アルコール CH3-CH2-CH2-OH (アルコール D, 分子式:C3H8O) : 構造異性体 E および F が存在 :
CH3-CH2-O-CH3 (分子式:C3H8O), CH3-CH(OH)-CH3 (分子式:C3H8O)…化合物 E または F
2CH3-CH(OH)-CH3 (E, 2級アルコール) → (Na) → 2CH3-CO-CH3 + H2
CH3-CH2-O-CH3 (F, エーテル) → (Na) → 水素発生なし(無反応)
化合物 E を酸化すると
CH3-CH(OH)-CH3 (E, 2級アルコール) → (酸化) → CH3-CO-CH3 (G, ケトン)
以上から, A〜D の各示性式は
化合物 A の示性式…C6H5-NH-CO-CH2CH3 (分子式::C9H11NO)
化合物 B の示性式…C6H5NH2
化合物 C の示性式…CH3-CH2-CO-OH(分子式::C3H6O2)
化合物 D の示性式…CH3-CH2-CH2-OH (分子式:C3H8O)
構造式は, 「構造式の例」を参照して, 下図Iのようになる。
問2の答
[化学反応式] C6H5NH3+Cl- + NaOH → C6H5NH2 + NaCl + H2O
[化合物Bの質量] 31 mg
油性のニトロベンゼン C6H5NO2 は, スズと濃塩酸を加えて加熱すると, 還元されるとともに水性の塩酸アニリン C6H5NH3+Cl- の塩が生成され :
2C6H5NO2 + 3Sn + 14HCl → 2C6H5NH3+Cl- + 3SnCl4 + 4H2O
NaOH水溶液を加えると, 中和反応して油性のアニリン C6H5NH2 が生成される :
C6H5NH3+Cl- + NaOH → C6H5NH2 + NaCl + H2O
以上より, 1mol のニトロベンゼンから 1mol の B のアニリンが生成されることがわかる :
C6H5NO2 → C6H5NH2 (B) …(1)
ニトロベンゼン 50mg の 82% は
50×0.82 = 41mg = 0.041g
0.041g のニトロベンゼンの物質量 mN は, 分子量 C6H5NO2 = 12×6 + 1×5 + 14×1 + 16×2 = 123 を用いると
mN = 0.041/123 = 3.333×10-4 mol
この値は, 生成されるアニリンの物質量 mA とすると, (1)式から
mA = mN = 3.333×10-4 mol …(2)
そこで, 生成されるアニリンの質量 W g は, 分子量 C6H5NH2 = 12×6 + 1×7 + 14×1 = 93 および (2)式の値を用いると
W = 93×3.333×10-4 ≒ 3.1×10-2 g = 31 mg
問3の答
構造式と名称は, 下図IIのようになる。
問1の答実験Cの解説から, 化合物 F および G の示性式, 構造式および名称は次のようになる。
化合物 F の示性式…CH3-CH2-O-CH3 (F, エチルメチルエーテル)
化合物 G の示性式…CH3-CO-CH3 (G, アセトン)
構造式と名称は, 「構造式の例」を参照して, 下図IIのようになる。
問4の答 F E D
化合物 D の示性式…CH3-CH2-CH2-OH (分子式:C3H8O)
化合物 E の示性式…CH3-CH(OH)-CH3 (分子式:C3H8O)
化合物 F の示性式…CH3-CH2-O-CH3 (分子式:C3H8O)
分子から成る物質の沸点は, 主として分子の間の結合の強さに依存する。
そこで分子の間の作用すなわち力について考えると, まず分子量に依存するファンデルワールス力は, 化合物 D, E, F において, 分子式が同じ
C3H8O であるので, それらの分子の間のファンデルワールス力による結合はほぼ等しいとみてよい。
ただし, 詳細に言うならば, 分子の体積も分子の間のファンデルワールス力に影響を与える。
化合物 D と E の分子中においては, ヒドロキシル基-OH が分子中に存在するので, ファンデルワールス力による結合以外に水素結合が両方とも存在し分子の間の結合を強める。
また, D 分子の炭化水素基が直鎖状であり, 一方 E 分子の炭化水素基は枝分かれしていることにより, D 分子の方が水素結合を強める効果を持つと同時にその体積を大きくしてファンデルワールス力による結合を強めることになる。
化合物 F は水素結合が存在せず, 分子の間の結合はファンデルワールス力のみによるものであると想定される。以上を考慮すると, 化合物 D, E, F の分子の間の結合の強さは次のようになる :
D > E > F …(1)
そこで, 記述のように, 分子から成る物質の沸点は, 主として分子の間の結合の強さに依存するので, (1)を考慮して, 化合物 D, E,
F の沸点を低い順番に並べると次のようになる :
F E D
辞書などで調べると, F, E, D の各沸点は
F(エチルメチルエーテル):10.8℃, E(2-プロパノール):82.4℃, D(1-プロパノール):97.4℃
問5の答
構造式は, 下図III のようになる。
有機化合物は, 熱濃硫酸と, 一般に, 脱水反応をする。2-プロパノール(E, 2級アルコール CH3-CH(OH)-CH3) においては, 次のように分子間と分子内の 2種の脱水反応が考えられる :
CH3-CH(OH)-CH3 + CH3-CH(OH)-CH3 → CH3-CH(CH3)-O-CH(CH3)-CH3 + H2O …(1)
CH3-CH(OH)-CH3 → CH3-CH=CH2 + H2O …(2)
(1)の反応の生成物 (エーテルの1つ)は, 普通, 酸化剤にも還元剤にも反応しない。したがって, このエーテルが化合物 H に相当する。また,
この分子間の反応は比較的低い温度で生じる。
(2)の反応の生成物 CH3-CH=CH2 ( プロペンあるいはプロピレン, アルケンの1つ)は, 適当な反応条件で, 次のように, 二重結合の1つが切断され付加重合して高分子 (-CH(CH3)-CH2-)n (ポリプロピレン)を生成する。
…… + -CH(CH3)-CH2- + -CH(CH3)-CH2- …… → …… + -CH(CH3)-CH2-CH(CH3)-CH2- ……
→ (-CH(CH3)-CH2-)n
したがって, このプロペン(あるいはプロピレン)が化合物 I に相当する。また, この分子内の反応は比較的高い温度で生じる。
H : CH3-CH(CH3)-O-CH(CH3)-CH3
I : CH3-CH=CH2
構造式は, 「構造式の例」を参照して, 下図III のようになる。
(image481)