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問1の答 非共有電子対
たとえば, アンモニア分子 NH3 において, 原子番号7の窒素原子 N の基底の電子配置は,
7N : (1s)2(2s)2(2p)3
もう少し具体的に記述すると,
7N : (1s)2(2s)2(2px)1(2py)1(2pz)1
窒素原子 は周囲の影響により, 最外殻の (2s)2 と (2p)3 が混成して, sp3混成軌道をつくり, 次のような電子配置をつくる。
7N* : (1s)2(2sp3)6
ただし, 7N*は周囲の影響を受けた窒素原子を表わす。ここで, もう少し具体的に記述すると,
7N* : (1s)2(2sp3)12(2sp3)21(2sp3)31(2sp3)41
上の7N*の電子配置において, (2sp3)1〜(2sp3)4の電子軌道の各々は, 窒素原子核を中心として, その正四面体の4つの頂点に伸びている。
不対電子の存在する 3つの (2sp3)21, (2sp3)31, および (2sp3)41 は 3つの H の 1s1 とσ結合し, 残りの非共有電子対をもつ (2sp3)12 が, その電子対を金属イオンに提供して配位結合する。
問2の答
Ag2O(s) + 4NH3(aq) + H2O(l) → 2[Ag(NH3)2]+(aq) + 2OH-(aq)
問3の答 下図の(I)と(II)
金属イオン M と 2種類の配位子 A, B により形成される八面体型構造において, A-M-A, B-M-B, および A-M-B の 3種類の結合が存在し,
それらが 共通のM を中心に八面体構造の錯体 [MA3B3] を形成する。
図示すると下図のようになる。(I)では, A-M-A, B-M-B, および A-M-B の 異なった 3本の結合を使用している。(II)では,
同じA-M-B の 3本の結合を使用している。(I)と(II)はどんな回転軸や面などの対称操作を施しても重ねることはできない。(III)と(IV)は,
(I)と(II)において, 8つの正三角形の面をもつ正八面体型構造で表した図である。
(image532)
問4の答
1つのCo3+が形成す八面体型の混成軌道に, 分子鎖長がちょうどマッチする二座配位子の3つのエチレンジアミン分子が, その中のNH2基の非共有電子対を使って無理なく配位結合し, それぞれ安定な5員環でキレート錯イオンを形成する。
原子番号27のCoの基底状態の電子配置は
Co : (1s)2(2s)2(2P)6(3s)2(3p)6(3d)7(4s)2
イオン化したCo3+の電子配置は
Co3+ : (1s)2(2s)2(2P)6(3s)2(3p)6(3d)6
周囲の条件によって, Co3+イオンの電子軌道において, その軌道中の2つの3dと1つの4sと3つの4pがd2sp3混成軌道を形成し, 次のような電子配置をとる。
Co*3+ : (1s)2(2s)2(2P)6(3s)2(3p)6(3d)6(d2sp3)0(d2sp3)0(d2sp3)0(d2sp3)0(d2sp3)0(d2sp3)0
ただし, Co*3+はCo3+の電子配置が周囲の条件によって変化したものを表わし, そして, 6つの(d2sp3)0は, それぞれCo*3+の中心からその正八面体の頂点へ伸びた軌道を表わし, それらには電子が入っていない。
周囲の条件をエチレンジアミンの水溶液とすると, 次のような反応が生じ, トリエチレンジアミンコバルト(III)錯イオンを形成する。
Co3+(aq) + 3H2NCH2CH2NH2(aq) → [Co(H2NCH2CH2NH2)3]3+(aq)
ここで, エチレンジアミンは二座配位子である。この錯イオンを図示すると, 下図のようになり, 光学異性体が(1)と(2)として存在する。(3)と(4)は(1)と(2)を立体的に書き直したものである。
記入例を参照すると, Co3+がMに相当し, 二座配位子のH2N(CH2)2NH2において, その分子中の2つのNH2基に存在する非共有電子対がA-M-A, A-M-BのAとBの配位子部分に入り, 3つの分子が結合しそれぞれ安定な5員環を形成する。
一方, H2N(CH2)6NH2にも2つのNH2基が存在するが, CH2基が6つで分子鎖が長いためにCo3+の配位子部分にマッチせず分子内錯体を形成しない。
(image533)