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問1の答    (ア. クメン法)  (イ.  HNO3)


●クメン法…クメン:C6H5CH(CH3)2の酸化

C6H5CH(CH3)2 + O2 → C6H5C(CH3)2OOH → C6H5OH + CH3COCH3

●ニトロ化…濃硝酸と濃硫酸の混酸使用

 (例) ベンゼンのニトロ化

C6H6 + HNO3 → C6H5NO2 + H2O  なお, 濃硫酸は脱水作用として働く。


問2の答
 image273
 B:C6H5OH(フェノールまたは石炭酸)

 C:C6H3(COOH)3(ベンゼン-1,3,5-トリカルボン酸)

 D:C6H2(CH3)3NH2(2,4,6-トリメチルアニリン)

 E:C6H5CH(CH3)2(クメンまたは 2-フェニールプロパン)


A → (加水分解) → 2B + C + D  …(a)

 有機化合物の結合中で, 加水分解されるものは, エステル結合:-COO- やアミド結合:-CONH-などがある。そこで, Aの分子式 C30H25NO5に窒素原子と酸素原子が存在するので, 分子にエステル結合:-COO- と酸アミド結合:-CONH-の存在が想定される。

[クメン法]
C6H5CH(CH3)2 + O2 → C6H5C(CH3)2OOH → C6H5OH + CH3COCH3

 E:C6H5CH(CH3)2(クメンまたは 2-フェニールプロパン)

 B:C6H5OH(フェノールまたは石炭酸)

 CH3COCH3(アセトン)

Bにヒドロオキシル基-OHが存在することにより, 他のCとDには, カルボキシル基-COOH とアミノ基-NH2 が存在することを意味する。

芳香族炭化水素Fは,
○化学式がEと同じ分子式で表される。
○酸化されると C になること, これは, C分子には-COOHの存在を意味する。 よって, D分子は-NH2を含む。
○上の(a)式から, 1つのC分子は, OH基を含む2つのB分子とエステル結合し, NH2基を含む1つの D分子と酸アミド結合をすることになる。
○よって, Cは3価のカルボン酸を意味する。

F → (過マンガン酸カリウムで酸化) → Cの反応において, 次式が想定される:

F:C6H3(CH3)3として,  C6H3(CH3)3 + 6(O) → C6H3(COOH)3 + 6(H)

 よって, C:C6H3(COOH)3(ベンゼン-1,3,5-トリカルボン酸)

本文中の「化合物Gに鉄Feと塩酸を作用させて反応させた後に水酸化ナトリウムを加えると化合物Dが得られた。」と「他の構造異性体は全く生成しなかった。」から,
 ●化合物Gはニトロ化合物であることが想定される。そして, Gは構造異性体が存在しない。
 ●ニトロ化では, 濃硝酸と濃硫酸の混酸で行われることから, (イ)は硝酸になる。

F → G
 C6H3(CH3)3 → (濃HNO3と濃H2SO4の混酸) → C6H2(CH3)3NO2

 よって, G:C6H2(CH3)3NO2を生じる…構造式を書くときは, 構造異性体が存在しないことを考慮して, 3つのメチル基-CH3の位置に注意。

Gの還元と中和
G → (HCl, Fe, NaOH水溶液) → D

 C6H2(CH3)3NO2 → (HCl, Fe, NaOH水溶液) → C6H2(CH3)3NH2

 よって, D:C6H2(CH3)3NH2(2,4,6-トリメチルアニリン)

Aの加水分解反応の逆であるB, C, Dでの脱水反応を考えると,

B + C + D → A + 3H2O

 2C6H5OH + C6H3(COOH)3 + C6H2(CH3)3NH2 → C6H3(COOC6H5)2CONHC6H2(CH3)3 + 3H2O

生成されるC6H3(COOC6H5)2CONHC6H2(CH3)3の分子式は:C30H25NO5…この式は与えられたAの分子式と一致する。


問3の答    B:(う), (え)  C:(い), (う)  D:(あ)


B:C6H5OH

 (う) C6H5OH + NaOH → C6H5ONa + H2O → C6H5O- + Na+ + H2O

 (え) 6C6H5OH + FeCl3 → H3[Fe(C6H5O)6] + 3HCl → [Fe(C6H5O)6]3- + 6H+ + 3Cl-

C:C6H3(COOH)3

 (い) C6H3(COOH)3 + 3NaHCO3 → C6H3(COONa)3 + 3H2O + 3CO2
                     → C6H3(COO-)3 + 3Na+ + 3H2O + 3CO2

 (う) C6H3(COOH)3 + 3NaOH → C6H3(COONa)3 + 3H2O → C6H3(COO-)3 + 3Na+ + 3H2O

D:C6H2(CH3)3NH2

 (あ) C6H2(CH3)3NH2 + HCl → C6H2(CH3)3NH3Cl → C6H2(CH3)3NH3+ + Cl-


(お) において, Cの酸無水物は, C6H3(COOH)3の3つのカルボキシル基の内, 2つがオルト位置にあると脱水してできるがパラ位置にあるのでできない。