答                          ●元の問題へ


問1の答     化学式… AgCl   色…白色

[説明]
 沈殿物AgCl に日光を当てると, 次のように光化学反応が起り, 生成物として灰色の銀と塩素が生じる。

                         2AgCl → 2Ag + Cl2


問2の答     化学式… CuS  色…黒色

 ヒント… ろ液Aに硫化水素ガスをかなり長く通すと, ろ液Aは酸性になり, 硫化銅が沈殿する。
                     Cu2+ + H2S → CuS + 2H+
      もし, ろ液がアルカリ性であると, Fe3+から硫化水素の還元で生じるFe2+も硫化物FeS
      になって沈殿する。

[説明]
硫化銅は硝酸を加えると溶ける。
                  CuS + 2HNO3 → Cu2+ + 2NO3- + H2S 
その溶液に過剰のアンモニア水を加えると, 錯イオンのテトラアンミン銅(II)イオンを生じて青色になる。
                     Cu2+ + 4NH3 → [Cu(NH3)4]2+


問3の答     化学式…Fe(OH)3   色…赤褐色

[説明]
沈殿CのFe(OH)3 に希硝酸を加えると中和反応によって溶ける。
              Fe(OH)3 + 3HNO3 → Fe3+ + 3NO3- + 3H2O
その水溶液にヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム水溶液を加えると, 濃青色の錯塩ヘキサシアノ鉄(II)酸鉄(III)の沈殿を生じる。
             4Fe3+ + 3K4[Fe(CN)6] → Fe4[Fe(CN)6]3 + 12K+

[理由]
ろ液Bには気体の硫化水素が溶けているので, それを取り除くためにろ液を煮沸させる。その後, 希硝酸を加えると, 硫化水素の還元で生じたFe2+を希硝酸の酸化によってFe3+にもどすことになる。
               Fe2+ + 2HNO3 → Fe3+ + NO3- + 2NO + H2O


問4の答     化学式…CaCO3   色…白色

      ヒント…溶液Dには最初の混合水溶液に存在していたNa+が含まれている。

[説明]
沈殿DのCaCO3 に塩酸を加えると気体の二酸化炭素CO2が発生する。
              CaCO3 + 2HCl → Ca2+ + 2Cl- + CO2 + H2O


問5の答

[説明]
(1)
○混合水溶液に最初に操作2の硫化水素を通すと, 混合水溶液は酸性になりその中の陽イオンのCu2+とAg+が硫化物になって沈殿する。
                         Cu2+ + H2S → CuS + 2H+
                         2Ag+ + H2S → Ag2S + 2H+
○Fe3+は沈殿しない。硫化水素の還元作用でFe2+になっても, 18〜25℃で溶解度積は
                       [Fe2+][S2-] = 6×10-18 [(mol/l)2]
この値はCu2+とAg+に比べて大きい値のため, 酸性水溶液では沈殿せず塩基性水溶液(硫化物イオンS2-が多く存在)でのみ沈殿する。Cu2+とAg+の溶解度積は
             [Cu2+][S2-] = 6×10-36 [(mol/l)2], [Ag+]2[S2-] = 6×10-50 [(mol/l)3]
○Na+とCa2+は沈殿しない。

(2)
次に(1)の沈殿をろ過して除去した後のろ液に操作1の塩酸を加えても, 残っている陽イオン Na+, Ca2+, Fe2+は沈殿しない(これらの塩化物の溶解度は大)。

(3)
次に操作3を行なうと, 水溶液は塩基性になっているので, Fe3+が次のようにアンモニア水と反応して
Fe(OH)3の赤褐色沈殿を生じる。
                     Fe3+ + 3NH3 + 3H2O → Fe(OH)3 + 3NH4+

(4)
最後に, (3)の沈殿をろ過した後のろ液に操作4を行うと, Ca2+が沈殿する。
                     Ca2+ + (NH4)2CO3 → CaCO3 + 2NH4+

○以上で, (1)において, Cu2+とAg+はともに硫化物として混合した状態で沈殿されるので, 混合水溶液の陽イオンをそれぞれに分離できないことになる。

●[水溶液の溶解度積]
水に難溶性の電解質XmYnが一定温度の飽和水溶液において, 次のようにわずかに平衡状態で電離して溶けている。
                          XmYn ⇔ mXn+ + nYm-
このとき, 次の式が成立する。
                          [Xn+]m[Ym-]n = K (一定)
上の式のKを電解質XmYnの溶解度積という。[  ] はmol/l の濃度を表す。